27.証明できる?その1
今日は、久しぶりに凪とゆっくりと時間を過ごしていた。
ここ、2~3か月は灯が個人的にも忙しくなりお互いにゆっくりする時間が無くなっていた。
そして、今日こそは『どちらも約束は何もいれないから』という約束をし、ようやくゆっくりとした時間を過ごすことが出来たのだった。
ここは、久しぶりに来た灯のアパートである。
時間も気にせず、気兼ねなくゆっくりできるのは此処しかないと灯が場所を提供したのである。
今、2人の目の前には甘さ控えめのクッキーと紅茶が出されていた。
灯の馴染みのなかった紅茶も、美華と知り合うようになったことにより、たまに口にするようになった飲み物である。
そして、クッキーはことあるごとに美華が手土産とばかりに灯に持たせる食べ物であるのだ。
「これ、美華さんから?」
「うん。そう。
ほら、この前月命日でさ、蒼人さんと一緒に行ってきたんだ。その時に、近々凪とゆっくり会う話をしたら“これどうぞ”ってくれたの。」
「美華さんとは、上手く付き合ってるね。」
「うん・・・。なんか、美華さんて母親みたいな・・・
なんていうのかな?なんか、私をすべて認めてくれて、包み込んでくれて。
だから、ついついあそこに行ってしまうんだ。」
「・・・なんか、妬けるな」
といって、凪はふざけた声をだし笑いだす。
「最近、お互い忙しかったよね?」
と灯が凪に言えば、凪はうんざりした顔をする。
どうしたのかと、首を傾げていると凪から
「灯のせい!」
と怒った声と顔で言われる。
「どうして?」
「最近、灯が綺麗になったから灯を紹介してほしいとか、合コンさせてほしいとか・・。
こっちは、断るだけで精一杯。
なんで、私が、こんなことしなきゃならないのよ?
しかも、それが原因で拓斗さんには疑われるし・・。
・・・灯が悪いのよ?
なんで、そんなに綺麗に変身しちゃったのよ?」
最後は、うんざりした声で力なく答えた凪だった。
「そんなことがあったんだ・・・。
全然、気がつかなかった。」
「断っているのに、あいつらどれだけ暇なのよ?
なら、いっそ合コンでも設定してやるかと思って。
・・・どう?灯、行ってみない?
いままで、蒼人さんに悪いかなと思って断っていたんだけど、こっちも影響来るし。
なら、いっそ灯との出会いの場をあいつらに提供すれば、大人しくなるはずだと思う。」
「凪・・・ひとつ聞きたいんだけど、合コンって何する場所なの?」
「へっ?・・・灯・・・合コンって知らないんだ。」
その言葉に固まってしまった凪だったが、しばらくして意識が戻ると合コンということについて長々と話し始めた。
「・・・合コンってそういう事なんだ?
でも、それって、綺麗な女性のところに男の人って付いていくんじゃ?
わたしは、綺麗とは言えないしさ。なんか、間違っていない?」
「間違ってない!
分かった、灯。その灯の無自覚の綺麗さを自覚するためにも、合コン行こう!」
その凪の言葉には、断れない何かがあった。
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それから、数日後灯の元へ合コン開催のメールが入った。
発信者は凪。
灯のバイトがしばらく入っていない日に合わせての合コンである。
最後に、普段着では来ないようにと注意書きがしてあった。
『じゃぁ、何着ていけばいいんだろ?』
頭を悩ませた、灯だったがそこにはやはり、あの人の顔が思い浮かぶ。
美華である。
電話を掛けると、まず美華の子供たち3人の喜ぶ会話から始まる。それが終わって、ようやく美華に受話器が渡る。
「久しぶりね?灯ちゃん。どうしたの?心配事?」
やんわり聞いてくれた美華に合コンの話をすると、絶句していたが・・。
「任せなさい。何とかしてあげられるから。
でも、蒼人くんが知ったらどうなるか・・・」
そういって、小さく笑った声が電話越しに聞こえたのだった。




