26.事件のはずだけど
サブタイトルが消えてしまったので、入力し直しました。
また、保存したはずの文章が消えてしまったために、再度話を作り直しました。
あれから、1か月が過ぎた。
灯にも、変化が訪れてきた。
『よく笑うようになった』と灯が自覚するくらいである。
アルバイトの帰りに待ち合わせしては、食事を一緒に食べにいったり、休みが合えば好きな映画を見に行ったり。
そんな灯を見て凪も拓斗も苦笑するばかりだった。
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蒼人の周りにも変化が訪れる。
蒼人の行動の変化に不信を持った人物が、動き始めた。
蒼人に思いを寄せる人物だ。
自分が入社したときに、親切・丁寧に教えてくれる蒼人に恋心を持ち、蒼人の行動には目を光らせていた。
今までは、女性の影が見えなかったのが、最近怪しい。
これは、彼女でも出来たのではないかと思いその人物・・・名前は相田というが・・・は思った。
帰りにたまたま、蒼人の後姿を発見し、相田は後をつけることに成功する。
そして、たどり着いたところには一人の女性の姿が。
自分より年下らしき女性。
綺麗・可愛いとは程遠いが、何故か目が離せない。
相田は、その女性の顔を目に焼きつつ帰宅する。
それから、蒼人と会っていた女性の情報収集に余念がない。
大学生であること、名前を灯と言うことまでが分かった。
「いつまでも、島さんの近くにいると困るのよ。
島さんの隣を歩くのは、私。
絶対振り向かせて見せるんだから!」
決意すると、相田は行動を始める。
蒼人が残業している日に灯を見つけ後をつけた。
灯は、駅前のコーヒーショップで本を読み、時間を潰していた。
そんな、灯に影がうつる。顔を上げるとそこには綺麗な顔に怒りをにじませた顔があった。
「あなたが、灯ちゃんというの?」
「はい。そうですが・・。」
「島さんの事で、用事があるのよ。
私たち、もうすぐ結婚するのよ。
言ってること、分かるわよね?そんな私たちの邪魔はしないでもらいたいの。
あの人もあなたと離れたがっているわ。
迷惑なのよ!」
怒りを体と顔に貼り付け、言いたいことだけ言っては、その場を後にしていく。
その後姿を灯は、消えるまで見守っていた。
それから数日経ち、相田は、灯のアパートを突き止めた。
灯のアパートが分かると、今度は2~3日に1度は手紙をポストに投げ入れる。
その内容は、自分の都合がいいように灯を蒼人から遠ざける物だった。
会社では、蒼人に近づき情報を引き出そうとしたり、蒼人自身から彼女の存在を聞き出そうとしたりするのだが、蒼人はそれには何も答えることがなかった。
『仕事にプライベートなことを持ち込みたくない』というのが、蒼人の考えだったのだ。
そんな蒼人なので、女性の影を仕事中に見せることはなかったのである。
そんな日々を送っていた相田は、イライラするばかり。
イライラの矛先を向けて行けるのは、灯ただ1人。
手紙に、そのイライラをぶつけてみたり、灯に出くわすといつものように、怒りを隠しもしないで全身でぶつけてくる。
その相田に、灯は何の感情も持っていなかった。
『興味がない』ことが、原因。相田が、どんなに起こっていようと、冷めた目で見てしまう灯なのであった。
そんな灯の元にポストに入った手紙を見つける事が多くなると、灯の心にも変化が訪れる。
手紙に『ご苦労様』とねぎらいの言葉を掛けるまでになっていた。
そんな日々を送っていた最中、たまたま遊びに来ていた凪にその封筒を見られてしまった。
灯はその手紙は気にしてないことなどを伝えたのだが、凪は事を大きくしてしまい、ついには蒼人の耳に入るまでになってしまっていた。
蒼人は、ほんとに申し訳ないと、謝ってくれたのだが・・・。
「蒼人さんの責任ではないし、これが本当の事でないのくらいすぐに分かりましたよ。
蒼人さんには理解しがたいでしょうが、人って仲良くなればなるほどその人と同じ空気を纏っているんですよ。
それが、あの女性にはなかった。
蒼人さんと、深い関係はないということを物語っていました。しかもです。私には蒼人さんが知っているように精霊たちがいるんです。
あの子たちが、きちんと教えてくれますよ。今回はあの子たちの出番が必要なかったけれど、私の危機などがあるときはあの子たちが手助けしてくれるんです。」
「・・・じゃぁ、俺の出番はなしか・・。」
寂しそうにつぶやく蒼人を見て灯はくすっと笑いを漏らした。
「・・・なんか、寂しそうですね。」
「灯ちゃんの事、俺が守りたい。」
ぼそっと、蒼人は呟いた。でも、その瞳は真剣で。
その瞳を見て、灯は背筋を伸ばす。
「その時が来たら、お願いするかも知れませんね。」
「お願いするかもじゃなくて、そういう時には絶対に頼って欲しい。」
そういうと、蒼人はそっと灯の手を握り締める。
「いまは、ここまでしか言えないけど、灯ちゃんの事をきちんと守っていきたいんだ。
だから、いつまでも俺の側に居てほしい。」
その言葉に、灯は俯いて赤くなるばかりだった。
ただ、出来たことと言えば、その手を握り返す事だけだった。




