25.輝く景色
お待たせしてました。
しばらく、進んでなかったのですが、完結に向けて頑張って書いていきます。
美術館から出ると、緑が多い公園に立ち寄る。
蒼人と二人で、何気なくベンチに座る。
会話らしい会話もないが、それが今は心地いい。
こんな心地よさは、久しぶりだなと蒼人は思う。
灯も、同じ気持ちでいた。
『何だろう?この心地よさは・・・。
美華さんと、一緒に居るような温かさのような・・・。』
そんなことを、灯が1人思っていると突然蒼人が立ち上がり、どこかに歩いていく。
しばらくして、帰ってくると手には缶コーヒーが握られていた。
「灯ちゃんどうぞ。」
言われて、初めて蒼人がジュースを買いに行ったこと、また自分ものどが渇いていたことを思い出す。
一気にゴクゴクとジュースを飲む姿を見ると、蒼人は笑いだす。
「蒼人さん、どうしたんですか?なにか、おかしなことでも??」
「はは・・・。
ごめんね?その調子だと、灯ちゃん自分がのど渇いているとか、おなかが空いているとか気がついてないよね?」
言われて、初めておなかに手を当てる灯・・。
『そう言われてみれば、おなかが空いたかも!』
「ねっ?3時間も居たんだよ?だから、おなかが空く時間なんだよ。」
その言葉で新ためて時間の過ぎるのは早いと実感した灯だった。
「随分と、付き合わせてしまったみたいで・・。」
赤くなり俯いて返答する灯に、優しい声が届く。
「気にしないで?俺も楽しかったから。」
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そのあと、公園周りを散策し手頃なお店を見つけ、お腹をいっぱいにした2人。
お店から出ると、当たり前のように蒼人は手を繋いできた。
灯が赤くなり、固まっているとふんわりした笑顔を灯に向ける。
「逃げられたくないんでね?」
その言葉を理解しようと立ち尽くしていると、
「ほら?灯ちゃん行くよ?」
と繋いだ手を引っ張られてしまった。
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蒼人に手を繋がれ、連れて来られた所は蒼人が最も大切にしている場所だった。
坂道の上に公園があり、そこから住宅街が見下ろせる。
片隅には大きな木があり、暑い時には日よけになる。
その木の根元に二人は腰を下ろした。
「どうしてもね、ここに連れてきたかったんだ。」
そういって、蒼人は自分の思い出を話し出す。
「俺は、前に話した通り姉が二人いてね、そこの中での待望の男の子だったみたいだよ。
俺が、幼稚園にあがると両親は共働きしなければ生活することができなかったらしくていつも両親は居なかった。でもね、子供たちの誕生日やクリスマス、お正月は必ずきちんと祝ってくれたんだ。
これが、普通の家庭だと思っていたんだけど、おれはトーヤに出会ってから普通の家庭ってなんだか分からなくなったんだ。」
そういって、灯に視線を移す蒼人。
「美華さんにちょっと聞いたんだけど、灯ちゃんも似たようなものだよって。」
「うん。トーヤに似てるかな?
あんまり人に話したことはないんだけど。私は、蒼人さんが知っている通り変な力があるでしょ?
だから、周りの人たちも両親が気持ち悪がってね。
とうとう、両親はどうしたらいいか分からなくなって私が中学生に入るときに手放したの。
でもね、まったく一人じゃなかったから。そこは、トーヤと違うところ。
私にはお婆ちゃんがいて。いつも力になってくれた。
この力を、気持ち悪がらずに、受け止めてくれた。」
「灯ちゃんは、お婆ちゃんが好きなんだね?」
「そうだね。安心できる。」
「俺も、灯ちゃんの安心できる人になりたいんだ。」
蒼人は、灯を見つめると灯は、コクンと頷く。
自分の家庭の事を人に話すことがなかった灯が当たり前のように蒼人には話す事ができた。
自分の周りには穏やかな空気がまとわりついているかのよう。
「だからね、俺の家庭環境も知ってほしいんだ。」
そういうと、また蒼人は話し始める。
「俺はね、いつも両親は居なかったけど仕事から帰ってきた両親からはいつも愛情を受け取っていたんだよ。
小さいことを話せば、ただいまの言葉と共に抱きしめてくれたり、休みが取れたときは兄弟全員の意見を聞いてくれて思う存分遊びに連れて行ったくれたり。
いつも、家族は笑顔でいられた。それが俺の家族なんだ。
そして、笑顔こそが家族を幸せにしてくれる物なんだよ。
大きくなってからは、姉貴たちのわがままに付き合ったり大変だったけど。
でもね、喧嘩しても必ずそこには愛情があったんだ。
そこで、なんで俺がこんなことを灯ちゃんに話したかという疑問がわいてくると思うけど・・・」
蒼人はそこで言葉を区切る。
「俺の事知ってほしい。
そしてもう一度、聞いてほしいんだ。」
蒼人の周りの空気が変わる。
「付き合って欲しい。恋人として。
灯ちゃんは、俺のこと嫌い?」
「嫌いなんて・・・。
あの・・・・。この前は断ってしまってごめんなさい。
実はあの前から、私も蒼人さんの事が好きでした。
でも、好きって感覚に自信が持てなくて。どうしたらいいか分からなくて。」
「ありがとう。灯ちゃん。
返事は、OKでいいのかな?」
「・・・はい。」
こうしてようやく、蒼人に自分の恋心を打ち明けることができたこの日。
景色は、いつもより輝いて灯に移った。
ことあることに、ここで話した会話がのちの灯の人生に光をもたらしてくれたのは言うまでもない。




