24.灯の好きなもの
灯の住んでいる駅で、待ち合わせた2人。
デートといっても、可愛い服など持っているわけでもない灯・・。
昨夜は、自分の服を眺めながらため息ばかり付いていた灯。
灯の周りにいる精霊たちにさんざんからかわれる始末となってしまった。
結局『中身で勝負』ということに落ち着き、なんのおしゃれもできないまま蒼人とのデート当日を迎えたのだった。
灯はいつものように、薄手のセーターにパンツスタイル。それに、ベージュのマフラーに、薄いグレーのシンプルなコートを羽織っていた。
時間より少し早めに駅に着くと、すでに蒼人は待っていた。
蒼人の服装も、ラフなスタイルだった。
蒼人は、チェックのシャッツに薄手の薄いブルーのセーターに、ジーンズ姿。黒のマフラーに紺のコート姿だった。
蒼人も、服装で悩み美華に相談したが『灯に合わせるなら、普段通りの服装がいい』と言われ、ラフなスタイルとなったのである。
そのせいか、お互いを見つけるのは苦労せずに済んだのである。
「灯ちゃん、おはよう!
来てくれて、嬉しいよ♪」
と、蒼人が言えば
「誘って貰えて、嬉しかったです。
今日は、凄い楽しみで。」
と灯が答える。
しかも、灯は頬をぽっと赤らめている。
そんな灯を見つめて、蒼人は自然と灯の手を繋ぐ。
灯は驚くものの、その手をなんの違和感もなく繋ぐ。
「早速、向かおうか?」
「はい。」
駅の改札を潜ると、目的地まで電車に揺られることになる。
電車の中では、特に話すこともなかったが、かといって嫌な空気が流れることはない。
会話がなくても、二人でいるのが当たり前のように穏やかな空気が流れていく。
電車に、揺られて1時間。ようやく、目的地に到着した。
電車から、降りるとまた当たり前のように二人は手を繋ぐ。
しかも、今度は親密さが窺えるような恋人繋ぎになっている。
美術館にいくまでの道は、季節的に寂しいものがあったが、春は緑で生い茂りとても落ち着く散歩道になるだろうと予測できた。
美術館に着くと、人もまばらでゆったりと見学することができた。
ひとつひとつ充分に時間をかけ、見ていく。
書く人によって、こんなにも表現の仕方が違うものかと驚くばかりである。
蒼人は、灯のちょっとした表情の変化を見ては楽しんでいた。
そんな、蒼人の視線に気付いた灯。
蒼人に視線を移し
「つまらないですか?」
と訪ねれば
「鑑賞するのもたのしいけど、灯ちゃんの顔を見ているのも楽しくて」
と、いい灯の瞳を見つめる。
灯が恥ずかしくて、視線を下に向けてしまうと
「ゆっくり楽しんで。
灯ちゃんが納得するまで、時間は気にしないで。」
と、いわれる。
その一言に、嬉しくなり素直に蒼人に甘えることにした。




