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20.素直じゃないな・・・

蒼人に連れられて、行った店は隠れ家というべき店だった。

住宅地の一角に作られた、普通の家。

門をくぐり、1つ目の扉を開けると店の看板がある。

ここで、ようやくここがお店なんだとわかる。

2つ目の扉を開け、蒼人が声を掛けると50代くらいの優しい物腰の女性が現れる。


「お待ちしておりました。」


佇まいは日本家屋という感じだが中に入るとテーブル席になっており洋風・和風がうまく調和したつくりになっている。

その女性に連れられ、奥まったテーブル席に案内される。

そこは、ドアがついていて個室になっていた。


「ごゆっくりどうぞ。」


ドアが閉まり、その女性が立ち去ると灯は口を開く。


「蒼人さん、予約していてくれたんですか?」


「もし、混んでたら入れないからね?

知る人ぞ知る名店でさ、予約しなきゃゆっくりもできないからね。」


そういうと、笑う。


「ここは、メニューがない店なんだ。予算に合わせてシェフ自慢の料理が運ばれてくるから。」


しばらく、世間話をしていると前菜が運ばれてくる。

それが、食べ終わる頃にご飯ものといった具合にいいタイミングで食事が運ばれる。

灯は、それを美味しそうに食べていく。

その美味しそうに食べる灯を見て、蒼人が嬉しそうな顔をする。


「灯ちゃんって、しっかり食べる子なんだね?」


「はい。しっかり食べないとダメなんです。」


頬を染めながら答える灯に蒼人は、顔に笑みを湛える。


「それを聞いて安心したよ?

ここのお店の料理、男の俺でもお腹がいっぱいになるくらい出るんだよ?

小食だったら、どうしようかと思っていたんだ・・・。」


「それなら、心配いりませんよ。

祖母から、料理を教わるときにしっかりご飯は食べないとダメとか、残さないようにとかしっかり躾られましたから・・・。」


その一言を聞いて、蒼人は安堵のため息を溢した。


「・・・・ところで、蒼人さん。

ここのお店、よく知っていましたね?」


「う~ん。

実は、俺もつい最近まで知らなかったんだよ?

前に城山さん家族と一緒に連れて来られたんだ。

その時、すごく落ち着けるしいい店だなって思って。

また来たいなぁと思ったけど、なかなか来るチャンスがなくてさ・・・

灯ちゃんと、食事しようと約束したときにやっぱりここに連れてきたくて予約したんだ。」


「やっぱり美華さんたちは、いいお店知っていますよね?」


灯はそういうと嬉しそうに声を立てて笑う。それを見て蒼人も笑う。

ここに、美華一家と来たときに『蒼人くん、このお店デートに使うといいわよ』と言われた台詞を思い出す。

そして、その台詞通り灯との初デートはここになったんだということに苦笑した。


「灯ちゃんは、ここのお店気に入った?

料理好きの灯ちゃんが、真似できそうなのはあったかな?」


「こんなに、優しい味付けは難しいですよね?」


「そうだね?俺もここの味は再現できそうもないよ。」


そういうと、お互いの得意料理などについてとめどなく会話が弾み、楽しいひと時を過ごす。

最後のデザートまで口をつけ、すべての料理を食べ終える。

すると、蒼人が急に真面目な顔つきになる。


「・・・・ところでさ、灯ちゃん

もし、灯ちゃんさえよければの話なんだけどさ、どこかに遊びに行ったりしてくれないかな?

つまり・・・デートなんだけど。」


「ごめんなさい。蒼人さん・・。

私、デートとかよくわからなくて。」


「あのね!灯ちゃん。

俺、灯ちゃんの事が好きなんだよ。」


灯は、驚きで口を開く。


「えっ?えっ?

すいません、驚いてしまって・・・。

でも、蒼人さん私じゃ役不足かもしれません。

いままで、好きになった人もいなくて。

・・・・少し時間をもらえますか?」


灯は、蒼人に思いを寄せても自分がどうしたらいいのか分からない。

好きと言う感情はあっても、素直に受け止められずにいた。

蒼人にかなり失礼なことをしている自覚はあるのだが・・・。


「いいよ。返事はゆっくりで。

でもね、これからもデートしてくれるかどうかの返事だけは欲しいな。」



「は・・・はい。

それは、嬉しいお誘いなのでまた誘ってくれると嬉しいです・・・。」


それでも、蒼人は優しい。

返事を急ぐことはしない。

もう少しだけ、もう少しだけ自分を見つめなおす時間が欲しい。

それが、いつまでなのかは分からないが・・・。

最後は消えるような灯の声だったが、蒼人には灯が『YES』の返事をしたことが聞き取れた。


「ありがとう。灯ちゃん。」


「いえ。こちらこそいい返事が出来なくてごめんなさい。

気持ちが落ち着いたら、きちんと返事をしますので

それまで待っていて貰えますか?」


「気にしないで。

俺は、待っているから。」


ふと、灯は友人の姿を思い出す。

こんなことを言ったと知ったら、凪は怒るんだろうな?

蒼人が好きな気持ちに嘘はないのに、素直に受け入れることができない自分をどうしたらいいか分からずにいた灯だった。









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