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17.樹生視点

いつもより、500文字ほど多く長いのです。

灯から『片思いの相手がいる』発言をされ、ショックを受けた樹生だった。

相手が蒼人だということも分かり、少なからず勝負に負けた気持ちがした。

樹生は、今までの灯との思い出に思いを馳せる。





樹生は小学3年の時に一緒のクラスになった灯が気になっていた。

誰とも打ち解けない、いつも1人でいる女の子。

椅子に座る姿勢は、背筋がまっすぐ伸びて瞳には強い力を込めた女の子。

髪はいつもショートヘアーで、いつもズボンを履いていた。ともすれば男の子に間違われやすい外見。

声を掛ければ、返事はするけど会話が続くことはなかった。

気になりつつも、樹生は上手く会話をすることもできずに、ただ見ているだけが続いた年月。

4年生になり、クラスの係りが一緒になったことにより少しずつ話す機会が増えた。

話してみると、冷たい雰囲気はなくどちらかというと話しやすいタイプ。

だけど、ある日を境に樹生とも樹生以外のクラスの子とも距離を取り始めた。

どんなに、声を掛けるタイミングを狙っても、その機会は与えられず・・・。

そのうちにまた見つめるだけの間柄となってしまった。

それでもやっぱり樹生の灯への思いは、段々と大きくなり気がつけば片思いをしていることに気がつく。

そこで、一大決心!

樹生は灯に告白を試みる。それは小学5年の夏の事だった。

2人だけになる機会があり、樹生は灯に伝える。


『灯。付き合ってくれないか?』


『どこに付き合えばいいの?職員室にでも用事があった?

1人で行くの嫌なの?』


首を傾げながら、樹生に質問され見事玉砕。

付き合う=恋人

という図式は灯にはなかったのだ。

それからも、樹生の告白は何度もされた。


『灯、俺、灯の事が好きなんだ。』


『私も好きだよ。話しやすいクラスメートだと思ってる。』


またも、玉砕。


『灯は、俺の事どう思ってる?』


『クラスメートでしょ?ほかに何かある?』


灯のまっすぐな瞳に見つめられては、それ以上のことが言えずまた、日を改めて告白する。

そんな月日が過ぎていった。

卒業式の日を迎え、小学生最後の告白をしようと決意して学校に行き、式もすべて終了して灯を探してみれば灯の姿がない。

近くに居たクラスメートに聞いてみれば、用事があるとかで早々に帰宅したと言われガックリと肩を落とした樹生だった。

中学校も同じ学校だし、また告白しようと軽く思いその時は何も行動を起こさずにいた樹生。

だけど、入学式にいってショックを受けた・・・。

なんと、灯は違う中学校に行ったという事実。

灯と関わりがあったであろう人物にどうして引っ越ししたのかを聞いてみても、だれも分からないという事。

灯は、誰にも告げずに引っ越ししたのだ。

それからも、樹生の片思いの相手は灯で、灯以外を好きになることはできなかった。

中学生になり、樹生はクラブ活動を始める。

陸上を始めた樹生。樹生の明るい性格は、みんなに好かれやがてクラブのムードメーカになる。

そんな樹生だったから、樹生に片思いする女の子は後を絶たなかった。

毎週、同級生やら後輩に告白されていた。

しかし、樹生の中にはいつでも灯の姿があった。


『あの・・・好きなんです。付き合ってもらえませんか?』


『俺、好きなやついるんだよね?

それでも、付き合うつもりある?』


『樹生先輩の好きな人って誰なんですか?!

どんな人に、告白されても受け入れることはないって聞きました。

ほんとに、好きな人っているんですか!』



『いるよ。もう、ずっと片思いしてる。

何度も告白して、受け入れて貰えなくて・・・。

今は、どこに居るのかさえ分からない人。』


樹生が遠くを見つめながら、話す。その瞳は、恋する誰かを思う瞳。

その瞳を見つめていれば、樹生の話が嘘なのか、本当なのかは分かる。


『分かりました・・・。』


それが、いつもの告白のパターンであった。


俺だって、灯の事が忘れればこんなに辛い思いはしなくて済むのにな。

忘れたくて、誰かと付き合ってみようと思ってもそれができなかった樹生。

そして、ついに樹生の時間は回り始める。

たまたま、駅に用事がありその帰り自宅に向けて歩いていた樹生。

すると、目の前に恋焦がれてやまない灯の姿を発見したのだ。

まるで、夢を見ているようだった。

まさか!!と思い何度も眼を疑った。

やっと見つけた灯。声を掛けずにはいられなかった。

声を掛けると、灯本人だった。樹生の心臓は早鐘を打つ。

嬉しくて舞い上がりそうだった。

今度こそは、逃がさないとばかりに灯に連絡先を聞いたが、なかなかいい返事を貰えない。

それでも、根気よく話しやっとの思いで連絡先の交換をしたのだった。

灯とつながりを持ちたくて、振られるのを覚悟して告白。

灯が、樹生に対してクラスメートとしての感情しか持っていないのを自覚しながら付き合う形をとった樹生。

無理があるのを知りながら、いつか樹生に心が向けばいいなという気持ちを抱えつつ『お試し期間』の提案をした。

じっくり、時間をかけて灯を口説くはずはライバルの蒼人が出現。

この勝負に勝ちたいと思いながらも、焦りも見え始めた。

この短期間に灯も、自分の気持ちに気がついたようだ。

樹生=友達

蒼人=片思いの相手

そして、今日灯から自分の思いを告げられた。



灯に樹生は声を掛ける。


「蒼人さんなら、任せられるか・・・。

なぁ、灯・・・。告白してみろよ?

灯が蒼人さんに告白してうまく行ったら、俺もこの思いにケリがつけられる。」


「・・・・。

そんな、無理だよ?

・・・・・ねぇ、樹生!私は恋をしてもいいんだろうか?

よく愛情の事も分からないのに、恋してもいいの?」


「・・・・灯・・・。」


樹生は、灯にどういう風に声を掛ければいいか分からず、無言になる。

でも、灯には恋する自信を持ってもらいたい。


「確かに、俺は振られたけどさ、灯がいいっていうなら友達として隣に立っていいか?」


灯はその言葉が信じられないというように、瞳を大きく開く。


「樹生は、それでいいの?」


「俺も新しい恋をしてくよ。そのために、灯にも幸せになってもらいたいから。」


「ありがとう・・・樹生。」


ふんわり笑った顔が、とても綺麗だった。

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