12.策略~御膳立て~
城山家に戻ると、美華は灯の手を取り自分の部屋へと招く。
そこには、大きなパウダールームとトイレがあり、ウォークインクローゼットにはたくさんのドレスが並べられていた。
部屋の中央のはリクライニングチェアも置いてある。
「うふふ。ここで灯ちゃん大変身計画を実行するの。」
楽しそうに笑っている美華である。
その美華と対照的なのは灯だ。戸惑っている灯を見て美華は
「普通にしていていいのよ。その椅子に座ってね?」
そういってリクライニングチェアに座らせる。
「私の腕もなかなかのものなのよ?」
言いながら、クリームを手に取り灯の顔をマッサージする。
灯は目を瞑り、自分の体を美華に任せる。
「…ところで、灯ちゃんには好きな人はいるの?」
ドキッとする灯。それを見通たように美華は続ける。
「いるのね?どんな人?私の知っている人かしら?」
「あ……あの……。」
灯は何も言えず、しばらく自分の考えを整理し始める。やがて意を決したように話し始める。
「美華さんには教えなきゃならないと思います。
…いや、知っていて欲しいです。」
前置きをしてから話し始める。
「好きな人は蒼人さんなんです。
この前気がついたばかりなんです。でも、いままで好きな人いなかったから。」
「初めての恋なのね?」
美華微笑みながら、脳裏に先日蒼人と話したことを思い出す。
トーヤの1件以来、毎月のように城山家に足を運んでくる蒼人。命日だけではなく、トーヤの弟たちに会うのが楽しく訪ねてくることも多い。そんな蒼人に美華が訊ねたのだった。
「蒼人くん、彼女はいないの?」
「今は、いないです。だからこうして、ここに来ることもできるんです。」
「でも、好きな人くらいいるわよね?」
「もちろんいますが・・・。
でも、相手の人には気づいてもらっていないようです。」
その会話の中で、蒼人の好きなタイプなどいろいろと美華に探りを入れられた蒼人。
「綺麗というか、凛としている人に魅力を感じますね?一本筋が通っているというか・・・」
そこで、美華は重大な発言をする。
「それって、灯ちゃんだよね?」
驚いた表情の蒼人を見て美華は、ニヤリと笑う。
「…図星??」
俯いて赤くなっている蒼人に美華が
「セッティングしてあげようか?」
といい始め、蒼人がしてほしいとも、してほしくないとも返事をしていないのに勝手に計画を始める。
そのうちに、蒼人もその気になってしまっている。
その計画とは・・・
灯を美華の家に招き、灯を女性らしく変身させる。
その後、変身した灯を連れて美華が食事に誘う。
灯と美華で食事をしているところで、蒼人が現れる。
そこで、美華が帰り蒼人と交代。2人でデートする。
「ただし、灯ちゃんが蒼人くんに心が向いていたらの話。
もし、灯ちゃんの心が蒼人くんに向いてないのなら、この話はなかったことになるわ。」
それでも蒼人は美華の計画に乗ることになる。
その後、今日の日程などを美華と連絡を取り合い煮詰めていく。決定は当日にならないとわからない。
回想しながら、灯のマッサージして化粧を施していく灯。
化粧が終わると、美華は灯に鏡を見るように促す。
「綺麗だわ。灯ちゃん。元がいいのね?」
「あ・・・ありがとうございます///。」
頬を赤く染めて俯く灯に美華は先ほどのワンピースに着替えるように話す。
「着替えが終わったら、私のお気に入りの美容室に行くわよ?
変身したら、私とデートよ?」
もう、ここまで来たら嫌ともいえない灯。美華の言葉通りに従う。
美華のお気に入りの美容師さんのところでゆるくパーマをかけられた灯。
「なんだか、自分じゃないみたいです。」
「私の想像通り!綺麗な女性になったわ。」
美華は大満足である。
さて、その美華は灯がパーマをかけられている頃自宅に戻り蒼人に連絡を入れていた。
『計画実行!』
そのあとは、灯に合わせるようにシンプルなデザインのワンピースを着て灯の元に戻ってきた。
「さて、行きましょうか?」
そういって、連れて来られたのはフランス料理の店。
予約していたようで、個室に通される。
「ここのお店、美味しいのよ?家庭的なの。
灯ちゃんは何が飲めるの?もう成人したんだし、少しくらいのお酒は大丈夫よね?」
「じゃ、じゃぁ…カクテルなら大丈夫です。」
2人で、楽しくカクテル選びをして、運ばれてきたカクテルのグラスを二人とも手に取る。
「カンパ~イ!」
カクテルの美味しさに微笑む灯。
そこに、ギャルソンの声がする。
「失礼します。お連れ様がご到着になりました。」
計画通りに蒼人が現れる。
「美華さん、これは…」
「女同志のデートは味気ないでしょ?
やっぱり男性もね?今日は疲れちゃったし、蒼人くんに選手交代してもらうことにしたの。
さっき、自宅に訪ねてきたから、灯ちゃんのことお願いしたのよ?
……ということで、蒼人くんあとはお願いね?」
言う事だけ言うと、美華は席を立ち出ていってしまう。
美華の席にかわりに蒼人が座る。
「こんばんは。灯ちゃん、僕じゃ迷惑かな?」
「いえ、そんなことは・・・」




