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8.お試し期間~その2~

誤字訂正しました。

小学校の散策を許可された2人。

まずは、自分たちが使っていた教室に足を運んだ。

置かれていた、小さな机と椅子に、驚きの声をあげた2人。


「俺たち、こんなに小さかったんだな?」


樹生の呟いた言葉に、灯が答える。


「そうだね?目線が違うよね?昔と今じゃぁ、目線の高さが違うから違和感がある。」


言いながら、自分が昔座っていた座席を歩きながら探す。


「確か、私の座席はここ。

…樹生は確か、斜め前だったよね?」


「よく覚えてるな?

俺は、灯の席が斜め後ろだったという事しかわからないよ。」


そういいながら、2人でその席に座る。


座りながら、灯が突然声を立てて笑いだす。


「どうしたんだ?!」


「あぁ、ごめん。なんだか昔を思い出していたら、懐かしくて。

みんな可愛かったよねと思ったら、笑いが・・・」


「あの頃、いつも灯は邪魔者扱いされていたのにな。

それでも、嫌な思い出は思い出さないのか?」


「そんなことないでしょ?

ここには、私の邪魔物扱いされていた記憶も一緒にあるよ。

でも、どうしてかな?

いまは、その思い出もいい思い出になってる。」



「ここに来て、後悔してないならいいんだ・・・。」


「私が、ここに来たいと言ったのに?

後悔するわけないじゃない?

…変わらないものに触れたかったんだ。

私だけ、ここに自分の思いを置いてきてしまったようでずっと心残りだった。

樹生が付き合ってくれたから、今日はここに来れた。

ありがとう、樹生……。

感謝してる。」


灯の表情を見て、顔を赤く染めた樹生。

灯の表情に艶が見え、心臓の鼓動が早くなる。

ここで、キスの1つくらいしたい樹生だが、なにせ灯とはまだ『お試し期間』なのだ。

そんなことをしたら、怒られてしまうのは目に見えている。

キスしたい感情を抑えて会話を続ける。


「灯の気持ちは、ここに来て解放できたのか?」


「そうね。そういうことだよ。

置いてきた思いは、いま現在の私と共に動き出した気がする…

ここに来てよかった。

…これも、美華さんのおかげかな?

あの人たちが、私を楽にしてくれたから。

だから、家族とも向き合うことができたんだから。」


「…あの人たち??!」


「うん、あの人たち。

樹生が知らない人だよ。」


灯は、言葉を区切るとまた口を開く。


「…樹生が知らなくてもいいんだよ?

私の家族みたいな人たちだよ。

とても、信頼のおける人たちなんだよ。」


「それって…。

蒼人さんも含まれているのか?」


「蒼人さん?

含まれているかと言われれば、そうだよ、ということだけど、どうして?」


その言葉に、がっくりと肩を落とした樹生。


「樹生、どうしたの?

なんか、落ち込んでるみたい。

さぁ、次に行くわよ。」


樹生の落ち込んでいる姿をそのままに、灯は次の思い出の場所へと進んでいく。

ここでも、主導権を握るのは、灯のようだ。

ここに来る時のように、灯は樹生を置いて歩いて行ってしまう。


「灯、待てよ。

灯って、こんな性格だったんだ。なんか、灯といるとなんでも、決められてしまうな。

昔は、ほとんど口を聞かない大人しい女の子だったのに…。」


灯に、追いつくと肩を並べて会話を続ける。


「あら?今の私は、嫌いかぁ。

じゃぁ、このお試し期間に本来の私が見えてよかったじゃない?」


「…これが、本来の灯なのか?」


「そうね!そうらしいわ。

昔は、色んな声が混じってどれが人の声か区別がつかなかったから、静かにしていただけよ。」


最後の言葉は、小さな声で告げる。

樹生には、伝わらなかったようだ。


「何?何か言った?」


「ううん。なんでもない。

今の私が、どういう人物かこのお試し期間にじっくり見て、それから考えてよ?

それに…わたしは、まだ樹生を好きになったわけじゃない。

まだ、友達の域を超えてはいないからね。」


「はい。じっくり見させていただきますよ?

でも、考えるって言ったって、俺は今も灯が好きだから。

多分…再会する前よりも、今のほうがずっと好きになっていると思う。」


「樹生!!

そんなこと言うの、やめてよ。」


「灯が、今俺とは友達だって思っていても…。

俺は、必ず灯が俺を好きになってもらうようにする!」


「なに、宣言してるのよ?

樹生ってば、昔と変わらないね~。」


そんな会話をしながら、2人は学校訪問を満喫した1日だった。





校門を出ると、灯が言い出す。


「樹生、今日はありがとう。充分、楽しむことができたわ。

今日は、これで。」


そういって、樹生と別れを告げようとすると、樹生に手を掴まれる。


「駅まででも、送らせてはくれないのか?」


「…ごめんね。」


灯は、掴まれた手をほどきながら言う。


「じゃぁ、また連絡していいか?

また、出かけよう。」


灯が困って下を向いてしまうと、樹生のため息が聞こえた。


「焦りたくはないんだけどね。

ライバルがいるからな…。連絡だけはしてもいいよな?」


「それなら…。」


その言葉にほっとした表情の樹生。


「またね。」


「またな。」


そういうと、駅方向に向かって、歩き始めた灯。

自分のアパートに帰って、早くゆっくりしたいと願う灯であった。











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