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8.お試し期間~その1~

灯の実家が、解決した翌日樹生(たつき)からメールが届いた。

“そういえば、あのときかなり強引に言われて、教えてしまったんだっけ?”と思いメールを開く。


『初めてメールすることに、少し緊張してる。

まず、連絡先を教えてくれてありがとう。


早速なんだけど、今度のバイトの休みの日にでも遊びに行かないか?

行きたいところはどこかある?灯の行きたいところにいこう。』


その文面を、しばらく見つめ固まってしまった灯。

“どうしたら、いいんだろう?”

すると、精霊の彩加が灯の体にまとわりつく。


『あら?灯、デートのお誘い・・・。

まぁ、灯にも春が来たのねぇ~。

灯はどうするの?行く?』


『どうしようか、迷っているところ。

樹生とは、多分・・・デートと言う感覚じゃないし。

まだ、彼になったわけじゃない、お試し期間だし。』


『そうね?まだ、お試し期間なら気軽に行けるじゃない?

行って来ればいいのに。』


“そうだよね?うん。いってみよう。

一歩、足を出してみよう”


灯は、そう思って、メールを打つも上手く打てず。

携帯片手に、文面を作っては消し、作っては消しを繰り返し。

やっと、1時間もかけてできた文章は灯らしい、短い文章だった。


『メールありがとう。読みました。

お試し期間なので、気軽に会うことにしました。


この前、実家に帰った時にあたりの移り変わりに驚きました。

小学校とか見たいので、一緒に行ってくれると嬉しいです』


悩んで、悩んでやっと出来上がった文章に返事が返ってきたのは早かった。


『返事ありがとう。嬉しいよ。

たとえ、お試し期間で灯の彼氏と、胸を張って歩けないのは残念だけど

一緒に出掛てくれるのなら嬉しい。

休みの日を、教えてくれる?』


そのあと、何回かメールのやり取りをして、翌週の平日にデートすることになった。





樹生との待ち合わせはあの森林公園になった。

待ち合わせの森林公園に行くと、すでに公園の入り口には樹生の姿があった。


「樹生、早かったね。」


すると樹生は灯に笑いかける。


「当たり前だろ?

灯がたとえお試し期間とはいえ デートしてくれるんだ。

これを逃すことはないよ。

…少しでも 長くいたいし。」


本音をちらりと覗かせる樹生。しかし、灯はその言葉には答えず、自分の思いを話す。


「でも、樹生は不思議だよ?

どうして私に拘るんだろう……」


「そうだな?

…灯は必ずみんなを平等に見るんだ。

特別に誰かを見ることはない。

俺はそんな灯を好きなんだよ。」


樹生が短い会話の中に自分の思いを乗せて告白するも、灯は告白された感じがしない。

樹生本来の持つ、雰囲気のせいなのか?

または、灯の持つ性格のせいなのか?


「そうか~。

まぁ、樹生そんなことより出掛けようか?」


と樹生を促し、懐かしの母校の小学校に向け歩き出した。

それを慌てて樹生が追いかける。


「待てよ!」


樹生が、追いかける姿を笑って見つめる灯。


「おい、灯。

話は、まだ終わってなかったんだぞ。

まだ、話したいことがあったんだ。

……まぁ、いい。まずは、小学校に行こうぜ!」


苦笑いの樹生に、昔の樹生の姿が被って見えた。

“昔の樹生は、いつもあんな顔していたっけ?”


「その顔!!

小学生の樹生が、いつもしていた顔だね?

やっぱり、樹生は変わらないね?

……周りが変わっていくなかで、変わらないものは新鮮だね。樹生が、変わってなくてよかった。」


それから、昔話に花を咲かせた二人。

気がつくと、子供たちの姿が多くなってきている。丁度、いまが下校時間なのだろう。

小学校に着くと、小学校の入り口には教師の姿が見える。

その1人に声を掛ける灯と樹生。

どこかで見た後ろ姿だなぁと思い声をかけると、その人物はなんと!

灯と樹生のかつての担任だった。


「おお!お前たちか?不審者と思われるぞ!」


そういって、豪快に笑う体格のいい男性教師。

確か名前は・・・小宮山(こみやま)とか言ったなと遠い記憶を手繰り寄せる。


「お久しぶりです。確か・・・小宮山先生ですよね?」


灯が、挨拶すると小宮山は笑顔で話す。


「覚えててくれたか?・・・ところで、今日はどうしたんだ?」


今度は樹生に顔を向ける小宮山。


「今日は、灯が小学校が見てみたくなったというので、訪問しに来たんです。」


「そうか!ここは変わってないぞ!佐山。

…佐山はあれからどうしたんだ。元気にやっていたのか?

突然、お前だけ引っ越すと聞いて、先生は驚いたんだぞ?」


「あの時は、お世話になりました。

突然、祖母と暮らすことになったんです。祖母が1人暮らしになったので、うちの両親も不安だったようで。

それで、私が一緒に暮らせば不安も無くなるし、いろいろな面でそれがよかったものですから。」


そういって、灯が頭を下げると小宮山は納得した顔を向ける。


「…それで、お前たちは付き合っているのか?」


小宮山はさっきから、気になっていた疑問を投げかける。


「先生!誤解はしたらダメですよ?樹生は、友達ですから。」


完全に、彼氏認定はされなかった樹生は苦笑いを浮かべながらも落ちていく気持ちを受け止めていた。





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