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7.向き合う~その3 ひと呼吸~

実家に帰った、灯。

祖母に言われたとおり、家族と向き合う決心をした。

しかし、やっと家族の元を訪れることができたばかり。もう少し時間を貰うことにした。

……つまりは、あのあと話し合いもせずに帰ってきてしまった。

一気に進んでいく状況に怖さも感じたのだ。

でも、灯にとってはひとまず、一歩が踏み出せた事実。

長くは続かない会話でも、両親と話す事はできたのだから。

帰り際に、灯は両親に訪ねていた。


「もし、私がこの変な力を持って生まれなかったら、私はここにずっと住み続けていたのかな?」


「そうね。ここに居たはずよ。ここは、灯の家だから。」


「…ありがとう。

もう1ついい?今度来る時は、きちんと話し合いたいのだけど…

…不安だったら、誰か連れてきてもいい?」


「灯が、そう思うのなら。」


この言葉で、灯の不安は少し和らいだ。

私は、1人でないと、何かあったら頼ってほしいと美華に言われたばかり。

他人(ひと)を頼ってみようと、今までの灯には考えられないが…そんな考えを抱いた灯だった。




いつものように、大学から帰る道すがらアルバイト先である【ikoi】に向かう灯と凪。

そこで、灯は凪に実家に帰った報告をした。


「でも、灯…実家に帰れたのは、凄いことだよね。

よく頑張ったね。」


自分の事のように喜んでくれる凪に、嬉しさを覚える灯。


「もし、1人で行くことができない時は、誰かに付き合ってもらうことになるかもしれない。」


「灯が、誰かを頼ってくれるの?嬉しい。私じゃなくても誰かを頼ってくれるなんて。

今までの灯とは、違う。

…灯も変わったね?一匹狼だったのに…

もっと、その話がしたいけど、着いちゃったね?」


凪が【ikoi】のドアを開ける。

2人で笑いながら、店内に入るとそこには蒼人の姿があった。


「灯ちゃん、凪ちゃんこんにちは。」


にこやかにほほ笑む蒼人。


「こんにちは。今日はお休みですか?」


「今日は、違うんだよ?」


視線を拓斗に向けると、拓斗は苦笑いをする。


「店が忙しくてね、手伝ってもらっていたんだ。

忙しいところに、たまたま蒼人がきたからね。

…いいところに、灯ちゃんが来たよ。

疲れているところに、灯ちゃん自慢のパフェを蒼人に作ってくれる?」


拓斗に、頼まれれば拒否はできない灯。

…いや、それ以前に拒否する理由もないが。


「いいですよ?蒼人さん待っててくださいね。今作りますから。」


そういうと、灯はキッチンにまっすぐ入っていく。

その後姿を見つめ、微笑んでいる蒼人。

ニヤニヤと、蒼人の姿を見つめると、拓斗は声を掛ける。


「随分うれしそうだな?蒼人。

今日は、手伝ってくれたお礼だ。好きな灯ちゃん特製のパフェだぞ?

ゆっくり味わえよ?」






しばらくすると、灯が作りたてのパフェを手に蒼人の所にやってきた。


「お待たせです。蒼人さん。どうぞ。」


「ありがとう。灯ちゃん。これって、弟さんが好きなパフェ??」


優しい笑顔で、返事を返す灯。


「あたりです。先日、実家に久しぶりに帰って作ったんですよ?

なんか、作りながら弟や家族の事を思い出しちゃいました。」


「…楽しかったみたいだね?」


なぜか蒼人には、家族の事を言えてしまう。不思議な感覚だ。

蒼人には、灯が家族と楽しそうに会話する姿が思い浮かぶ。

…実際は、やっとぎくしゃくしていた家族が一つになりつつあるという姿だが。


「う~ん、楽しくなるのは、これからですね?」


小さな、小さな声で答える灯。

自分の考えが、そのまま言葉に出てしまった感じだ。

灯は、慌てて話を変える。

蒼人がその言葉を聞き取れず、聞き返そうと思った時、灯は声量を大きくして話を変える。


「どうですか?美味しいですか?」


「美味しいよ。灯ちゃんは、料理が上手なんだね?」


褒められたことが、今まで生きてきた中でほとんどない灯は戸惑うばかりだ。


「あ、ありがとうございます。」


消え入るような声でお礼を言う。頬をちょっぴり染めながら。

灯は、蒼人の言葉に驚きながらも、なぜか心が落ち着いていくのを感じていた。

“これは何?なんだろう、この気持ち…。

以前にも、こんなことがあった。

その時も、蒼人さんと話しているときだった。”

これが、恋心だとは分からない灯。気がつくのは、まだまだ後の事になるだろう。


「灯ちゃん、実家に帰ったの?」


拓斗が聞き返す。


「そうなんです。」


「よかったね?でも美華さんに、報告しないといけないよ?

待っているはずだから。」


「ありがとうございます。

…でも、今度は美華さんに付き添ってもらいたいと思っているんです。

OKしてくれるかなぁ?」


最後の言葉は、独り言のように呟いた灯。


「大丈夫だよ。安心して。

みんながついているんだから?」


満面の笑みを向ける拓斗。その隣では同じように微笑む凪。

よくこの状況を分かっていない蒼人まで微笑んでいる。

3人の笑顔を見て、“大丈夫!”と思えてくる。

みんなの笑顔が頑張れる源。

その笑顔に笑顔で返す灯。

言葉はなくても、眼で語り合える友人。

灯が頷くと、みんなが頷き返してくれた。







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