陽炎
うだるような暑さがまだ残る晩夏、効きもしない扇風機を回して、融けきって固まったアイスを眺めている。セミはもう鳴いていない。風鈴の音が虚しさを孕んでこだましている。私は重い腰を上げて、台所に立った。が、虚しい。何も食欲が湧かない。置いてあった水をこくこくと飲み、自室に戻る。木漏れ日を受けながら、今日は何をしようか、いや何をするべきかに思いを馳せてみる。
どうしようもなく動きたくない気分だ__。友人に片っ端からジーコ、ジーコと電話を掛けてみる。当然、繋がらない。なにしろ今は平日の真っ昼間なわけであって、真っ当に仕事をしていれば電話に出る余裕などないのだから。そう言い聞かせて、一歩外に出てみる。
日差しの強さに面食らう。「日差しが痛いな……」そう独り言を呟き、ぼろぼろになった日傘を拾ってきて歩く。歩く。歩く。寂れた喫茶店に入ると、朝刊を開く。相変わらず変わらない内容だ。一通り読み終えた後、喫茶店を出て家庭菜園の様子を見に行けば、胡瓜が食べごろであった。収穫し、我ながら慣れた手つきで下処理を済ませて漬物を作る。栄養が摂れないためにあまり意味はないのだが、漬物というのは寂しい食卓に彩りを与えてくれる。飯盒でコメを炊き、干し魚と共に黙々と食べ終えてしまう。一通り片付けを済ませたあと、電話の折り返しがないことにため息を吐き、机に向かって日誌を書く。
「ええと、今日は32417年9月30日__だっけか。」




