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聖女は死んだ  作者: 氷桜 零
第1章
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死んだ聖女


喉が渇いた。

お腹が空いた。


誰もいない。

誰もきてくれない。


寂しい。

苦しい。


助けてほしくて伸ばした手を、握ってくれる人はどこにもいない。

もう随分と長い間、わたしの手を握り返してくれる人はいなかった。


長い長い夢を見ていた。

幸せな夢。


両親がいて、大好きな兄がいる。

温かで優しい夢。


目が覚めると、現実に引き戻される。

その度に、落胆する。

目なんか、覚めなくていいのに。

ずっと、夢の中でいられたらよかった。


そうしたら、こんなに悲しくならなくてすんだのに。


苦しくて苦しくて、わたしは目を閉じた。

てっきりこのまま死んだんだと思った。

死んでしまいたかった。

なのに、気がつくと空中に浮かんでいた。


自分の身体はなぜか透けていて、もう一つの身体が床に横たわっていた。


これは、アレだ。

死んで幽霊になったパターンだ。


わたしは理解した。

死んだことで、私自身のことについて知ることができた。


なんて皮肉なことなんだろう。

死んでから、わかるなんて。


もっと早く知っていれば、こんなことにならなかったかもしれないのに。

力が使えれば、こんな状況から抜け出せたのに。


知るのが遅すぎた。


わたしは、聖女だった。


女神様からの御使いである聖女。

女神様の祝福を人々に伝え、人々を正しい道に導くための存在。


大切な役割があったのに、その役割を果たす前に死んでしまった。

女神様に申し訳がない。

せっかく、こんなわたしを選んでくれたのに。

死んでしまって、申し訳なく思う。


……ん?

ちょっと、待って。

なんで死んだのに、幽霊になってここにいるの?

死んだなら、女神様のところに行くんじゃないの?


それとももしかして、死んでも役割を果たせってこと?

いやいや、まさかそんな……

そんな非道なことを、女神様が言うわけない。

きっと上が渋滞しているのか、ここで自由時間を過ごせってことだと思う。

きっと、そうだ。


この身体を使えば、自由にいろんなところに行ける。

いろんなものが見られる。

なんて、素晴らしいのだろうか。


わたしは飛び上がって喜んだ……ら、屋根を突き抜けて上空まで飛んできてしまった。


この身体、思ってたよりも軽くて飛んで行きやすい。

ちょっと気をつけないと。


あ、鳥さん、お邪魔してすいません。

……て、見えてないか。


さて、これからどうしようかな。

小さい頃はともかく、ここ数年は閉じ込められてたから、何をすればいいかわからない。

相談に乗ってくれる人がいればよかったんだけどそんな知り合いいないし、そもそも見えないだろうし。


これから、どうしたらいいのかな……






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