詩小説へのはるかな道 第94話 論より証拠の猫
原詩: 愛の証拠
証拠なんて
いつも静かにそこにありました
わたしが気づくより先に
朝 あなたが淹れてくれるコーヒーの香り
帰り道 わたしの歩幅に合わせてくれる足音
雨の日 黙ったまま差し出される傘の影
帰りが遅い夜 灯しておいてくれた廊下の光
愛の証拠は探すものじゃなくて
いつも生活の隙間で息をしているのです
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詩小説: 論より証拠の猫
わたしの家には、一匹の白猫がいます。
名は「ロン」。
名付けたのはわたしです。
理由は単純で、彼がやたらと理屈っぽいからです。
もちろん猫が言葉を話すわけではありません。
でも、わたしが何かを言うたびに、ロンは「本当に?」とでも言いたげに尻尾を揺らし、じっとこちらを見るのです。
ある日、わたしはロンに向かって言いました。
「ロン、わたしは毎日ちゃんと掃除してるんだよ。偉いでしょう」
するとロンは、すたすたと歩いていき、机の下から埃の塊をくわえて戻ってきました。
まるで「論より証拠だろう」と言わんばかりに、ぽとりと落としました。
「……はい、すみません」
別の日、わたしは太り気味なロンのダイエットを決意して宣言しました。
「ロン、今日からおやつは禁止。健康が一番大事だからね」
するとロンは、ゆっくりとソファーの上に上ると、昨日わたしがこっそり食べたポテトチップスの空き袋を前足でチョイチョイと叩きました。
「……自分を棚に上げて、ルールを押し付けるな」という彼の無言の指摘に、わたしは思わず目を逸らしました。
そんな調子だから、わたしは次第にロンに嘘をつけなくなりました。
論より証拠を突きつけてくる猫と暮らすのは、なかなか骨が折れます。
ある晩、わたしはロンに言いました。
「ねえロン、わたし、ロンのこと大、大、大好きだよ」
ロンはぴくりと耳を動かし、こちらを見ました。
その目は、いつものように「証拠は?」と問いかけています。
わたしは少し考えて、ロンをぎゅっと抱きしめました。
ロンは一瞬、嫌そうな顔をして身をよじりましたが、やがて諦めたようにわたしの腕の中で力を抜きました。
「これが証拠。理屈じゃないんだよ」
すると、いつもは理屈っぽくて無口なロンが、珍しく「にゃあ」と短く鳴きました。
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わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:論より証拠の猫
一 名付けの日
白猫の
尻尾の先の 問いかけに
名はロンとなる 理屈のきざし
二 掃除の証拠
「掃除した」
言い張るわたしの 前に置く
ぽとりと埃 論より証拠
三 ダイエット宣言
おやつ禁止
言ったそばから 見抜かれて
ソファの上の 空袋ひとつ
四 嘘つけず
嘘つけば
すぐに見抜かれ 尻尾鳴る
猫と暮らせば 心も磨かれ
五 好きの証拠
抱きしめて
理屈を越えた 温もりに
ひと声だけの 「にゃあ」が返事
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




