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異世界帰りの勇者ですが、現代日本で会社はじめました。ブラックな業界を物理でホワイトにします  作者: 黒崎隼人


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第7話「最初の敵対者」

 依頼は順調に増えていた。

 廃墟の悪霊祓い、公園の池に住み着いた水棲魔獣の駆除、時には農家の畑を荒らす巨大イノシシの討伐。

 レオンにかかれば、どんな案件も「現場到着→魔法一発→清掃完了」の3ステップで終了する。

 舞はその手腕でスケジュールを管理し、法的な手続きを完璧にこなし、報酬を確実に回収した。


 そんなある日、会社(ひだまり荘)のドアが乱暴に叩かれた。


「株式会社ブレイブ・ソリューションさんですね?」


 立っていたのは、黒いスーツを着た数名の男たち。胸元には「ギガント・インダストリー」の社章が光っている。

 舞の顔が青ざめた。彼女のかつての勤め先の親会社であり、業界を牛耳る最大手だ。


「何の用だ?」


 レオンが奥から出てくる。ジャージ姿に、片手には週刊誌。威厳も何もないが、その眼光だけは鋭い。


「単刀直入に言おう。お宅の会社を買い取りたい。技術提供契約でもいい。あの『浄化技術』を我が社に渡せ。金額は弾むぞ」


 先頭の男が、尊大な態度で分厚い封筒を差し出した。

 中には、相場の数倍の契約金が記された書類が入っているだろう。

 だが、その契約書の裏には「全権利の譲渡」や「隷属的な労働条件」が隠されていることを、舞は経験上知っていた。


「お断りします」


 舞がレオンより先に口を開いた。


「私たちは、独自のやり方でやっていきます。傘下に入るつもりはありません」


「ほう? 元社員風情が、偉そうな口を利くようになったな」


 男が冷笑する。


「いいか? この業界で我々に逆らって生きていけると思うなよ。お宅のような弱小、ライセンスの停止や、資材の流通ストップなんて簡単にできるんだぞ」


 典型的な脅し。だが、効果的な脅しだ。

 舞が唇を噛む。


「……帰れ」


 低く、地を這うような声が響いた。

 レオンだ。彼は週刊誌を置き、ゆっくりと男たちの前に立った。


「俺はな、そういう『上から目線で他人の自由を奪う奴』が一番嫌いなんだ。異世界でも散々相手にしてきたからな」


「なんだと? 貴様、誰に向かって……」


 男がレオンの胸倉を掴もうと手を伸ばした、その時。

 レオンからは殺気すら放たれていない。ただ、ほんの少し、彼の纏う空気が「勇者」のものに変わった。


 ゾクリ。


 男たちの肌が粟立つ。

 目の前にいるのが、ただのジャージ姿の若者ではないことを、生物としての本能が理解してしまったのだ。

 まるで、ドラゴンの喉元に手を突っ込もうとしているような、圧倒的な「死」の予感。


「ひっ……!?」


 男は悲鳴を上げて手を引っ込め、尻餅をついた。


「二度と言わない。帰れ。そして、上の人間に伝えておけ。『喧嘩を売るなら、買う準備はできている』とな」


 男たちは這うようにして逃げ出した。

 嵐が去った後の静けさの中、舞はへなへなと座り込んだ。


「あぁぁ……やっちゃいました……。完全に目を付けられましたよ……」


「気にするな。遅かれ早かれこうなっていた」


 レオンはいつもの調子で笑った。


「それに、ちょうど良かった。次の仕事、そいつらが管理しているダンジョンの『救済』だろ?」


 舞がハッとしてパソコンを見る。

 次に舞い込んでいた依頼は、ギガント社が管理を放棄し、内部で探索者が遭難しているという「Sランク相当」の危険ダンジョンからの救難要請だった。


「売られた喧嘩だ。実力で黙らせてやろうぜ」


 元勇者の瞳が、久しぶりに戦士の色を帯びて輝いた。

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