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思い出した。
俺と一緒に旅をしていた勇者のリオンと同じ顔をしている。
いや、でもリオンは男だった。
妹か姉とかか?
「ようやく気付いたか」
「リオン、じゃない。リオンの妹か姉だな?」
「違う! 本人だ!」
「そ、そんなわけ……性転換の魔法でも使ったのか!?」
「私は元々女だ馬鹿野郎!!」
魔王、改リオンは右拳で俺の頬を殴ってきた。
肉体的にはノーダメージだが、リオンが元々女だったという事実に俺は衝撃を受けた。
た、確かにちょっと可愛い顔をしていたと思っていたが、男じゃなかったか? 口調も男っぽかったし。
でも、直接裸を見たりはしたことなかった。温泉に行った時は、確かにリオンだけいなかったみたいなことがあったような。
ほ、本当にリオンなのか? こいつが?
「ま、待て。何でリオンが俺の命を狙っている。お前は俺が魔王を倒したおかげで、勇者になれただろ? 大体、何で魔王になんかなってるんだ? どういうことだ?」
混乱しながら俺は質問を繰り返した。
「とぼけるな! 全て貴様の仕組んだことだろうが!」
リオンは怒り心頭という表情で怒鳴ってきた。
「し、仕組んだ? 何の話だ?」
「とぼけるな!」
リオンはゼロ距離で魔法を放ってきた。
直撃するがダメージはない。
「くそ……忌々しい奴め!」
攻撃が効かない俺をリオンは憎らしそうににらみつける。
「わかっただろ? 俺を倒すのが無理だ。事情があるなら全部話してくれ。絶対なんか勘違いしている」
リオンと一度別れた後、一回も会ったことはない。
もちろん何か危害を加えたことなどあるわけがない。
相当ひどい目にあったのだろうが、それは別の誰かがやったことだろう。
それを俺がやったことだと勘違いしているんだな。
リオンは剣を離して俺から距離を取った。
「いい気になるなよ。貴様がいくら強かろうと必ず倒すと誓ったのだ。貴様を殺すことだけを考え、魔物どものを喰らいひたすら強くなった」
リオンの内から禍々しい魔力があふれ出てきた。
見た目も変わっていく。背中か翼が生え、頭から角が二本生えてきた。黒い尻尾もある。
まるで悪魔のような見た目だ。
かなり魔力が増えた。感知が下手な俺でも流石に分かる。
「消し飛べ!! 闇魔砲!」
闇の球がリオンの手から放たれた。
野球ボールくらいの大きさではあるが、強力な魔力が込められている。
俺の目の前まで飛んできて、大爆発が起こった。
凄まじい威力だった。
この攻撃を耐えられるものは、世界に一人いるかいないかだろう。
そう思うくらいの威力ではあった。
ただ、俺は無傷だった。
これほどの攻撃を受けても、俺の体にはダメージは入らないのか。
優越感などもちろん感じない。虚しさしかなかった。
リオンを見る。
「こ、これでも無傷……だと?」
驚愕に目を見開いている。
俺の強さは重々知っていたのだろう。
それでも本気を出せば、倒せる可能性もあると思っていたのかもしれない。
「分かっただろ? 無駄な攻撃はよせ」
「く……」
悔しそうな表情をリオンは浮かべる。
「その状態で長くいるのは、あんまり体に良くないんじゃないか? 早く元に戻れ」
魔物化についてはあまり詳しくはないが、力を解放した状態を長く続けるのは、体に負担が多そうな気がした。
それこそ長時間この状態になったら、理性を失ってしまったりしそうだ。
「ふざけるなぁああああ!」
リオンはこちらに飛びついてきた。
鋭い爪で俺を斬る。当たるが、逆に爪の方が折れた。
その後、腹部を蹴ってきたが、微動だにしない。
「ああああああああああああああああ!!!!」
雄叫びをあげながら、怒りに任せてめちゃくちゃに攻撃をしてきた。
何度当たろうと俺にダメージが入ることはない。
リオンの両腕を掴んで動きを止めた。
「やめるんだ」
「ぐうううう……」
リオンはじたばたともがいたが、その後、大人しくなった。
「ふざけるな……なぜそれほどの力を持ちながら……私を嵌めるような真似をしたんだ……」
「いや、だからはめてないし。何があったのか言ってみろ」
「とぼけるな……! 貴様が私を魔界送りにしたんだろうが!!」




