45
「……! この魔力!!」
パークとの戦いを終えたエミルは、強力な魔力を感知していた。
(間違いない。この魔力は魔王……! 魔力を解放したということは、今から戦闘するということ……? となるとほかの冒険者が先に魔王のもとに到着したみたいね)
魔力が魔王のものであるとエミルは感じ取っていた。
(早くいかないと!)
エミルは急いで魔王が戦っている場所へ向かった。
かなりのスピードで移動し、到着する。
「!!」
到着すると魔王とアリアが対峙していた。
後ろでハーナとシャープの二人がぐったりとした様子で倒れている。
どちらも大怪我を負っているようだった。
まだ立っているアリアも、怪我を負っており、苦しそうである。
一方の魔王は涼しげな表情をしていた。
まだまだ余裕そうである。
「新手か」
鬱陶しそうな表情を浮かべながら、魔王はつぶやいた。
「来たのねエミルさん。一応言っておくけど、あなたを守りながら戦う余裕はありませんわよ」
「問題ないわ」
エミルは剣をかまえる。
(この時のために、力は残していた……!)
エミルは奥の手である雷轟化を使った。
体が雷轟剣と一体化し、身体中から電気がほとばしる。
目にも止まらぬスピードで、魔王に斬りかかる。
その剣を手で受け止めた。
「!!」
雷撃が魔王を襲うが、ダメージがあるようには見えない。
「ふん、小賢しい攻撃だ」
魔王はエミルに向かって、蹴りを放つ。
雷轟化したエミルは、超反応を見せ後ろに下がり何とか回避した。
(つ、強い……桁違い……強くなった自分が雷轟化を使えば、もしかしたら何とかなると思ったけど……レベルが違う!)
エミルは雷撃をものともしない、魔王の姿を見て、そう悟った。
(いや……諦めてなるものか……私は最強になる女よ……)
レベルの差は悟ったが、決して闘志は失っていなかった。
剣を構える。
「わたくしも本気を出させてもらうわ」
アリアがそう言いながら、頭に付けていたティアラを外し、それから着ていたドレスを脱いだ。
ドレスの下には、ノースリーブの戦闘用の衣装を着ていた。
スピードを重視した機能的なふくだ。
ドレスのようなおしゃれさは全くない。
「魔力転換」
アリアは自らの左拳と右拳を突き合わせ、そう唱えた。
青いオーラが彼女の体を纏う。
アリアが使ったのは、魔力を運動能力などの、体の機能に変換する魔法である。
運動能力が上がるだけでなく、自己再生や肉体の強度も飛躍的に向上する。
先ほどまで負っていた怪我が、どんどん治っていった。
「はっ!!」
アリアは雄叫びをあげて、魔王に向かって殴りかかった。
「闇壁」
魔王は黒い壁を作り、アリアの攻撃をガードした。
(防いだ……! 強力な防御魔法だけど……でも、防ぐ必要があるということ!)
エミルはその様子を見てそう思った。
先ほど雷撃がノーダメージだったので、凄まじい防御力を持っていることは間違いなかった。ただ、防御魔法を使うということは、決して無敵ではないということだった。
「巨雷槍……」
エミルは剣を握っている右手に、力を集中させる。
雷撃が集まって行く。握っていた剣は巨大な槍へと姿を変えていった。
(この一撃で仕留める!)
アリアと魔王が戦闘をしている。
エミルが力を集め攻撃しようとしているのは、察知しているようで、魔王はエミルの方にも警戒を向けていた。
「はぁあああ!!」
アリアが渾身の力で殴りかかる。
魔王は再び防壁を張るが、割れ、そのまま魔王に殴りかかった。
魔王は咄嗟に腰に下げていた剣を抜いた。真っ黒い禍々しい剣である。
その剣でアリアの拳を受け止めた。
魔法で強化されたアリアの拳は、鋼のように硬いので、剣を殴っても切れることはない。
普通なら剣をへし折るほどの威力ではあるが、魔王の剣は傷ひとつ付かず、アリアの拳を受け止めていた。
「やっと抜きましたわね」
「……ふん」
魔王は吐き捨てるようにそう言った後、剣を振る。
凄まじい力でアリアは吹き飛とばされた。
(いまだ!)
ついに隙が出来たと思ったエミルは、巨雷槍を思い切り、魔王に突き刺した。
「はああああああ!!」
「!」
渾身の雷撃が魔王に直撃する。
巨雷槍を突き刺した後、自動的に雷轟化が解かれる。
エミルは力を大きく消耗し、地面に膝をついた。
(あ、当たった……やったかしら?)
魔王を見る。
「嘘……でしょ?」
エミル最高の攻撃を受けてなお、魔王は平然とした様子で立っていた。
表情も苦しそうではなく、相変わらず涼しげである。




