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「私が魔王様と会ったのは今からだいぶ前の話でした!!」
ライラという魔物に、魔王の元へと案内してもらっていた。
その時、魔王について情報を聞こうと尋ねてみたのだが、それが間違いだった。
熱に浮かされたように、ライラは魔王について語り始めた。
動くのを忘れて語るので、語っている間、しばらくひたすら話を聞くことになってしまった。
「あー、もういいから、案内を再開して……」
「私は当時、弱小の魔物……魔王様はすでにお強かったですが、今ほどの強さは持っておられませんでした」
止めようとするが語り続ける。
こりゃ話を聞き終わるまで、動けなさそうだぞ。
「くーくー」
退屈でシーラなんかちょっと寝ている。
「実は私は魔王様の配下の中でも、一番の古株でして……それが自慢でもあるのですが……まあ、古株と言っても実力は新参者の魔物にどんどん抜かされてしまって、序列はどんどん下がっていったんですが……」
懐かしむようにライラは言う。
「魔王様は敵対する魔物どもを次々に喰らって、どんどん強くなっていきました」
「魔物を喰らって? 魔物ってほかの魔物を食うと強くなれるのか?」
「そう言う魔物もいますが、珍しいと思いますね」
「そうなのか」
魔物を喰らって能力を得る魔物か。
ちなみに人間は魔物の類を食べると、力が強化される。
と言っても微妙に強化されるくらいで、大幅に強化されることは少ない。
ただ、めちゃくちゃ強い魔物を食べたりしたら、結構強くなれる。
また、体質によって魔物を食べると、より強化されやすい体質とかもある。
魔物を食べすぎると、理性を失って魔物化するケースがあるようなので、あんまり食べすぎないようにとは言われている。
まあ、基本的に魔物食はタブーとされているので、食べること自体は少ない。人間が魔物化したなんてケースも、百年で片手で数えられるほどしかなかったはずだ。
「魔物を食うのに結構味方がいるんだな。怖くないのかお前は」
「怖いです! それ以上に素晴らしいお方だと思っています! 私以外の魔物は恐れて従っているようですけどね……」
ほかの魔物の方が正しいと思う。
自分を食うかもしれないやつに忠誠は誓えないだろう。
多分、従わなかったら食うって感じで、無理矢理従わせているのだろう。
「魔王様は怖いですがそこが良いですのに……あの、私をゴミか何かとしか思っていないような表情……ああ、思い出すだけで体が熱くなります」
ライラは頬を赤らめてくねくねとし始めた。
なるほど、こいつはど変態のようだ。
「おっと、話し過ぎましたね。そろそろ行きましょうか」
やっと移動する気になったようだ。
話を終えて俺たちはライラの案内で魔王のいる場所へと向かった。
「ここです!!」
しばらく歩いて到着した。
研究所のような建物があった。
ここに魔王がいるのか。
「魔王様! 配下希望の人間を連れて参りました!」
元気よくライラは研究所の扉を開けて中に入る。
魔物たちが大勢いた。
どこか怯えたような表情を浮かべている。
「お、おいライラ。なんだその人間は。もう一人は魔物みたいだが」
魔物の一人が話しかけてきた。
「魔王様の配下になりたいと言っている人間です! 人間にも魔王様の素晴らしさは伝わっていたようで私は嬉しいです!」
「ば、馬鹿野郎! どう考えても嘘だろ! アジトの場所を知りたくてそう言っただけだ!」
魔物は怒った口調でそう言った。
「え? そ、そんなはずは……」
「そうとしか考えられんだ! 魔王様の素晴らしさと言ってるが、会ったことないのに分かるわけないだろそんなこと!」
「た、確かに!」
目から鱗という様子でライラはそう言った。
「し、しかし、彼らは死にかけの私を治してくれました」
「それも情報を引き出すためだ」
「……そ、そんな」
ライラは悲しげな表情を浮かべる。
「ち、違いますよね!」
「いや、その魔物の言う通りだな」
「がーん!!」
場所は知れたし、今更演技する必要もないので本当のことを言った。
ライラはショックを受けているようだ。
「残念ながらここに魔王様はいねぇよ」
「何?」
「お前以外の人間どもが先に来て、そいつらと戦いに行った。ま、すぐに倒して戻ってくるだろうがね」
「どこで戦っているんだ?」
「なんだ? 魔王様の魔力がわからねーのか?」
戦っているとなれば、確かに魔力は隠していないだろう。
魔王の魔力は普通の魔物に比べれば、巨大だろうから普通は気づくのだろうが、俺には細かい違いがわからない。
でもまあ、確かにここから東側に複数人の魔力がある気がするな。あそこに魔王がいるのか?
「え? 戦っておられるのですか!? く、私が感知が苦手なばかりに、気づけなかった」
「お前魔王様の魔力近くにいないとわからないんだったな。鈍すぎだろ」
どうやらライラも苦手なようだ。魔物に呆れられていた。
俺とライラは気づいていなかったが、シーラは気づいていたはずだが……
振り返ってシーラの表情を見ると、不安そうな表情を浮かべていた。
「怖い人いそうだったから黙ってたけど、やっぱり行かないとダメなの?」
どうやら魔王の魔力が怖くて、黙っていたようだ。
確かに移動中もちょっと無口だったか、それが原因だったのか。
「大丈夫だ。俺が負けるわけない」
「お兄ちゃん……」
シーラは俺の手をぎゅっと掴んできた。
大人の姿のシーラの胸が腕に当たって、むにゅっと変形する。
だ、駄目だ。本来のシーラは子供の姿なんだ。興奮したらロリコンになるぞ!
こころでそう言い聞かせ、俺はなんとか心を沈める。
とにかく魔王がいる場所は何となく分かった。
俺は大まかな場所しかわからないが、シーラは細かい位置まで分かっているだろうし、案内して貰えばすぐに行けるだろう。
ここにくる必要なかったな。
無駄な時間を使ってしまった。さっさと魔王が戦っている場所まで行くか。
「じゃ、行くから。邪魔したな」
「な、ま、待て!」
引き留める声が聞こえたが、気にせず魔王がいる場所へ俺は向かった。




