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「もう……やめてくれ……」
「あら、喧嘩を売ってきたのはそっちですわよね」
エミルが戦闘している最中。
別のところでも戦闘が起きていた。
もっとも戦闘と言っていいのか分からないほど、一方的な様子であった。
アリアが、血まみれのドルードの首を掴み持ち上げていた。
彼女の拳には血がこびり付いてる。
「魔王はどこにいるの?」
「お、教えるわけには」
アリアはその返答を聞いた瞬間、ドルードの腹を殴った。
「ぐはっ……」
強烈なパンチを腹に受け、苦しそうな声をあげる。
「このレベルの魔物でもあっさり一人で倒すとは……流石アリアさんですね」
シャープは感心したような表情でその光景を見ていた。
今の所基本アリアが一人で戦っているので、サポートの冒険者の出番は全くなかった。
「け、研究所にいます……魔王様は研究所に……」
耐えかねたドルードは、魔王の場所を漏らした。
「ありがとう。それではさようなら」
止めとばかりにドルードを思いっきり投げる。
見えない位置までドルードは飛んでいった。
「とても野蛮な戦い方ですね……」
「戦いとは元来野蛮なものですわ。どんなスタイルであれ同じく野蛮です」
呆れて言うシャープにアリアは反論した。
「さて研究所にいるようですわ。確か、この島の中央にあったはずです。向かいますわよ」
「ええ」
アリア一向は研究所に向かって移動を始めた。
その道中。
「あら、ハーナさん」
「アリアかい」
ハーナと出会した。
「魔王の位置は分かったのかい?」
「ええ。研究所にいるらしいですわ」
「もう掴んでいたのか。流石だねぇ」
ハーナは感心したようにそう言った。
「一緒に行きますか?」
「共闘しろってかい? まあ、あんまり得意じゃないんだけどね」
「別にわたくしが戦うのを見ているだけで構いませんわ。足手まといになられても困りますし」
「甘く見てもらっちゃ困るね」
見下すように言うアリアに、少し怒り顔でハーナは言い返した。
「まあ、目的は一緒だ。一緒に行くしかないね」
「そうですわね」
結局一緒に行くことになる。アリアの一向にハーナが加わった。
その後も、急いで移動し無事研究所に到着した。
中に入ると、大勢の魔物たちが潜んでいた。
「結構いますわね」
「大したやつはいなさそうだが、この数いるのは面倒だね」
「早く倒しましょう。魔王と一緒に戦うことになったら厄介です」
魔物たちを殲滅しようとする。
しかし、次の瞬間。
強大な魔力が研究所の奥から発生し、アリアたちは怯んだ。
魔物たちはもっと怯んでおり、全ての魔物が床に這いつくばっている。
(この魔力…………魔王!)
莫大な魔力を感知し、アリアはそう確信した。
全員が静まり返り、部屋を沈黙が支配する。
しばらくすると、コツコツと足音が響き渡った。
魔王がゆっくりと歩いてきた。
「こりゃ……やばそうだね……」
魔王の姿を見て、ハーナは冷や汗をかきながらそう言った。
一眼見て圧倒的な力を持っていると理解した。
アリアはチラリと後ろを見る。
シャープ以外のサポート役の冒険者たちが顔を真っ青にして、ブルブルと震えている。
魔王の魔力を間近で見て、戦意喪失している様子だった。
「あなた方は帰りなさい。ここはわたくしとシャープ、ハーナで戦いますわ」
「……! し、しかし!」
「早く行きなさい。命令ですわ」
冒険者たちは悔しそうな表情を浮かべながら、戦線を離脱した。
「私に何かようかな?」
魔王が尋ねる。
「ここは人間の世界ですわ。あなたのいていい世界ではない。今すぐ魔界に戻るか、出来ないのなら討伐させていただきますわ」
内心の恐れを一切表に出さず、毅然とした表情でアリアは警告した。
「私のいていい世界ではない……か」
少し残念そうな表情で魔王はつぶやいた。
「探している者がいる。そいつを見つけるまで、魔界に戻ることは出来んな」
「そうですか。なら戦うしかないようですわね」
アリアは構えをとる。
「良いだろう。だが、ここは戦いづらいな。場所を変えよう」
「!!」
魔王は外に向かって動いた。
あまりの速度にアリアたちは反応できなかった。
「来い」
そう一言告げて、魔王は飛び立っていった。
「……行きますわよ」
「逃げたいけどねぇ」
「やるしか……ないですね……」
3人は魔王を追った。




