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エミルはハーナが去っていく様子を見送った後、自分も捜索を開始した。
途中人里を発見する。
(人がいる気配がないわね……住民は皆、無事避難したみたいね)
誰もいなくなっていた。
家の中などに、魔物が潜伏していないか、一応確認するが何もいなかった。
「お、ここにも村が」
捜索中、男の声が聞こえてきた。
残っている住民かと思い確認する。
全身から黒い毛を生やした男がいた。
顔が狼のようだ。明らかに人間ではなく、魔物という見た目だ。
(魔物! あれがSSランクの魔物? いや……高位の魔物は手下を連れてくることもあるし……魔力を隠しているみたいだから、ぱっと見はわからないわね……)
エミルは隠れながら魔物を観察する。
「……匂うな。人間の匂いだ」
魔物がクンクンと匂いを嗅ぎながらそう呟いた。
(バレた……!?)
エミルがそう思っていると、一気に接近して来た。
「よう。ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
魔物が目の前に来てそう尋ねて来た。
エミルは魔物と対峙して、
(こいつはSSランクの魔物じゃなさそうね……)
と直感で思った。
相手はまだ魔力を隠しているようなので、実際の力ははっきりとは分からないが、対峙した雰囲気などでSSランクほどの力はないとエミルは感じた。
彼女の勘は当たることが多い。
「聞きたいこと? 何かしらね」
エミルは雷轟剣を構えながら返答した。
「最初に言っておくが、俺は情報が知りたいだけで、危害を加える気はない。そっちから来るなら話は別だがな」
「……」
危害を加える気はないという言葉を、エミルは全く信用していない。剣を構え続ける。
「それで聞きたいことって?」
「ある人物を俺の主が探してるから、情報を収集してるんだ」
「その主というのは?」
「魔王様だ」
魔物はそう返答した。
(魔王……なるほど……どうやらそいつがSSランクの魔物みたいね。こいつはやっぱり違ったわね)
魔物の言葉を聞き、自分の直感が正しかったと確信した。
「魔王はその人物を見つけたらどうするのかしら? 殺すの?」
「さあ。ただ、恨みを持っているようだから、無傷では帰さないだろうな。俺は殺すと思うが」
「そう……なら教えることはできない。あなた達はここで倒させてもらうわ」
誰かを殺そうとしている時点で、放っておいてはいけない存在だとエミルは判断した。
「……ほう……いや、そっちの方が俺も楽しいね」
魔物はニヤリと笑みを浮かべた。
「人間を噛み殺したいけど、するなって魔王様から言われて、退屈だったんだよ。人間から危害を加えてきたら、反撃しても良いて言われてたけど、今まで攻撃してくるやつはいなかったからなぁ。戦う気なら願ったり叶ったりだ」
嬉しそうに魔物は言った。
(魔王は狙っている人間以外に危害を加えるつもりはないの? まあ、狙っている相手が一人だろうと一万人だろうと、悪党には変わりない。討伐するのみね)
意外な情報にエミルは驚いたが、魔王を倒すという方針は変えなかった。
「俺は壊獣ケルビン。喧嘩なら喜んで買うぜ」
「私はエミル・トール。あなたを斬るわ」
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