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冒険者会議室。
アリアとシャープの二人だけになっていた。
「人類の危機だというのに……何と勝手な人たちなんだ……四人は来すらしないし」
シャープは嘆くようにそう言った。
「良いではありませんか。SSランクの魔物は手下も多数呼んでいるでしょうし、その手下の相手をさせればいいですわ」
アリアは余裕そうな表情だった。
「サポートが出来る冒険者を集めてくださいませ。流石に一人では怪我をしてしまうかもしれません。それはエレガントではありませんわ」
「一人で戦って怪我で済めば良いんですがね……」
あくまで一人でも討伐可能だと思っているアリアを見て、シャープは呆れながら呟いた。
「ほかの高位の冒険者たちは連携は期待できない以上、そうするしかありませんか。僕の知っている冒険者に声をかけてみます」
「ありがとうございますわ」
ニッコリと笑顔でアリアはお礼を言った。
「まあ、もし見つからなければ、僕だけでなんとかしましょう。僕は高位の冒険者には珍しく、サポートもできるタイプですので」
最後にそう言った後、シャープは急いで会議室から出た。
アリアが一人会議室に残された。
シャープが出てしばらくは済ました表情だったが、しばらくして青ざめ始める。
(どどどどうしましょう! SSランクの魔物!? めっちゃ強いって聞きますわ!? それをわたくしが中心で倒す!? 無理ですわ!?)
地面に突っ伏しながら、アリアはそう言った。
アリアには他人の前では気丈に振る舞う癖があった。
(今から冒険者引退しますか!? いや、さすがにそれは……でも死ぬよりはマシなような)
引退までアリアの頭をよぎった。
「忘れ物……あ、アリアさんはまだ残っていたのね」
突如エミルが会議室に乱入。
アリアは何事も無かったかのように、一瞬で先ほどまでの澄まし顔に戻った。
「ええ。今、頭でどうやってSSランクの魔物を倒すのかシミュレートしておりましたの。邪魔はしないでほしいですわ」
「そ、そう……分かった。すぐに立ち去るわ」
エミルは自分の席に行くと、忘れ物を
取って、すぐに会議室を後にした。
(あ、危ない。突然来ないで欲しいですわ)
エミルが去った後、アリアは額から冷や汗を流した。
(……まあ、やると言った以上、もう後には引けませんわね。めちゃくちゃ嫌ですが準備を始めますか……)
心は弱気ではあるが、彼女は冒険者ランク2位の最強クラスの冒険者である。
実力は並外れたものはあった。
アリアはどんよりとした気分になりながらも、SSランクの魔物を倒すための準備を始めた。