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 場所を移動してみたが釣れない。

 釣り餌がよくないのか?

 海釣りの経験は湖での釣りに比べたら少ない。

 海中に魚がちゃんといるのだろうか?

 魔法で確認するか……?


 いや、駄目だ。


 釣りの際には魔法は極力使わないようにしたい。

 シーラが湖を戻したときは、状態の確認のために魔法を使ったが、今使うのは釣りの難易度を下げるからちょっと違う。

 場所を変えた方が良さそうだな。

 それで釣れなかったら、釣り餌を変えるか。

 そもそも、デルルは何の餌に食いつくのだろうか?

 情報が少なすぎて、餌から試行錯誤するしかない。

 場所を変えるため、釣り糸を引き上げようとすると、


「!!」


 強い引きが来た。

 というか、強すぎる。

 ぼぎっと音を立てて、竿がへし折れた。


 な、なんだ?


 海が大きく揺れる。

 下から魔力の気配がする。そこそこ大きい魔力のような気がする。

 他者の力量を図るのは苦手だが、流石にBランク以上の魔物くらいの強さはある気なのは分かる。

 大きく水飛沫が上がり、巨大な生物が顔を出した。


「うがあああああ!!」


 その生物は大きく唸り声をあげる。

 顔は鮫っぽい。狂気を感じる小さな瞳をしている。尾鰭が海から出ている。

 かなりでかい。頭部だけで3mは優に超えている。


 こいつがデルル……なわけないか。

 魔物っぽいがゲートは発生していない。

 この世界にずっといた大きな魚か、魔物なのか判別はできない。実は魔物以外にも、元々この世界に存在している強力な力を持った生物は結構存在する。

 そいつらは魔物とは呼ばれず、むしろ神扱いされて崇められていることが多い。

 その生物は俺を発見。噛みついてきた。


魔弾マジック・バレット


 襲ってきたので危険な生物であることは間違いない。

 俺は顔を目がけて、魔弾マジック・バレットを放った。

 一撃で顔が消し飛ぶ。


 謎の生物はそのまま倒れ込み、動かなくなった。死体が海にぷかぷかと浮いている。

 結局何だったのだろうかこいつは。

 でかい鮫……か? 

 釣った魚は、稚魚以外なら食べるのが俺のポリシーだ。

 一応、持っていくか。

 俺は謎の巨大鮫を持って一旦砂浜に戻った。


 〇


「お兄ちゃんお帰り! うわー! おおものだね!」


 俺が釣ってきたでかい鮫を見て、シーラは無邪気にそういった。

 シーラ以外の客はドン引きしている。そりゃめちゃくちゃでかい鮫を持ってきたやつがいたらビビるだろう。


「エミルは?」

「お姉ちゃんはおさかな釣りに行ったよ!」

「なに?」


 魚釣り? あいつ釣り好きになったのか?

 ま、まあそれは良いことだな。だが、シーラを野放しにしたのは、よくはないな。


「あ、もどってきた。おかえり~」


 エミルが釣りを終えて帰ってきた。


「ただいま……って、ライズ。帰ってきてたのね。何よそのバカでかい魚は……魚ってか魔物じゃない?」


 俺が取ってきた鮫を見て、エミルはそういった。

 ビキニから着替えて、普通に服を着ていた。ちょっとがっかりである。

 エミルはバケツを持っており、そのバケツが少し動いた。

 中に魚がいるようだ。


「何を釣ってきたんだ?」

「結構大きい魚釣れたわよ。まあ、アンタが持ってきた奴ほどじゃないけど」


 確認してみる。

 黄色のかなり綺麗な魚だ。初めて見る魚である。エミルの言葉通り結構でかい。

 海の魚はあまり詳しくないので、魚の名前はわからない。


「……そ、それは!!!!」


 近くを通りがかった釣り人が、エミルのバケツの中を見て、驚愕して叫んだ。


「デ、デルル!! 姉ちゃんデルルを釣ったのか! 凄いな!!」


 な、なに!?!?


 こいつがデルル!?


 確かに色は黄色という話は聞いていた。

 釣り初心者のエミルが釣っているとは夢にも思わず、これがデルルとは思わなかったが……確かに知っている特徴と一致している!


「へー、そんなに凄い魚なんだ。これがライズが釣りたかった魚?

「そ、そうだ」

「ライズは釣れたの?」

「い、いや……」


 俺は首を横に振る。


「そうなんだ。じゃあ、私の方で釣れてよかったじゃない」


 よ、よくない……


 自分で釣りたかった。

 デルルがこの辺りの海にもう一匹いる可能性は高くないだろう。

 エミルは屈託のない笑みを浮かべている。勝ち誇ったりしているわけでなく、本気で自分が釣って良かったと思っているのだろう。文句を言ったらかわいそうなので、言わなかった。


「デルルは珍しいうえ、味は絶品だからな~。いやぁうらやましい」


 最後にそう言って釣り人は去っていった。


「美味しいんだ……なんだかそれ聞くとお腹すいてきたわ」


 時刻は夕方である。食事を取る時間帯ではある。


「じゃあ、飯にするか……」


 ちょっと落ち込みながら俺はそう提案した。


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