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「ははは、何を冗談を言っておる」
アルバスは笑い声を上げてそう言った。
彼は邪神を復活させれば、その邪神を支配し世界を征服できるものだと思っていた。
ただ、副代表のリーグは出来ないと言う。
冗談であると思っていた。
「済まないな代表。長年騙していたんだ」
「……騙していた?」
「邪神を復活させても支配することはできない。奴は衝動のままに全て破壊する。まともな意志などない邪神ラクトーアとはそういう存在だ」
リーグの言葉に党員たちは絶句していた。
「ふざけるな! 貴様は支配する方法を知っていると言っておっただろうが!」
「そんな方法は残念ながらない」
「それではいったい何のために私は研究していたのだ! せっかく研究が終わったのに! 支配できなければ復活させた意味がないではないか!!」
アルバスは激怒する。
「やはり研究は終わっていたか。代表を抑えろ」
党員の数名がアルバスを取り押さえた。
「な……!」
二人とも胡乱な目をしている。魔法で操られているようだ。
「代表。死にたくなければ研究の成果を教えろ。お前のように強い魔力を持った人間を魔法で操作するのは時間がかかってしょうがないからな」
「ふ、ふざけるな。復活すればどうせ私は死ぬのだろうが」
「そうだな。だが、ラクトーアは一瞬で殺してくれるが、私はそうはいかないぞ」
「ぐ……何が目的だリーグ! ラクトーアを復活させて何の得がある!」
「世界を滅ぼしたいのだ。それ以外に理由は必要か?」
「く、くそ自殺志願者か!? 死ぬなら一人で死ね!」
アルバスはリーグを睨みながら叫んだ。
「爪を一つ剥がせ」
「!?」
リーグの命令に従い、部下の一人がアルバスの爪を剥がした。
「あがああああぁぁああ!!!!」
アルバスは痛みで悲鳴を上げる。
「はぁ……はぁ……」
アルバスは痛みで額から脂汗を流し始める。
「今度は痛みを倍にする魔法をかけて剥がす。気絶できないよう回復系の魔法もかけてな」
リーグは無表情でそう言った。長年の仲間であるアルバスを痛めつけて、一切良心を痛めていないようだ。
「く……貴様……」
睨みつけるが、アルバスは次の瞬間笑みを浮かべる。
「良いだろう教えてやる。だが貴様は邪神を復活させることなどできん。材料が足らんからな」
「……」
リーグは黙ってアルバスの話を聞く。
「邪神の復活にはAランク以上の魔物の生き血が必要だ」
「それは知っている。研究していて一番最初に判明したことだろう」
「だったら無理なのも分かるはずだ! 今の我らではAランクの魔物の捕獲など不可能だ! もっと戦力の増強が必要だが、ここで真実を話してどうやって戦力を増強する!? 脅されても逃げる者の方多いだろう」
「……くくく」
リーグは笑みを浮かべる。
「何がおかしい!」
「Aランクの魔物を捕らえる必要などない」
リーグがそう言った瞬間、彼の体が変異をし始める。
角が生え、皮膚は赤く変化していく。額から第三の目が開く。肩からも角が生え、短かった髪が伸びていく。黒色だったが、紫色になった。
アルバスは変化の様子を信じられないものを見るような目で見ていた。
最後に背中から赤い翼が生えて、変化は終わった。
「ま、魔物……」
「私の生き血を捧げればいい……」
「ば、馬鹿な……なんという魔力……Aランク相当……」
アルバスもある程度力量を持った男である。
見た瞬間、魔物がどれだけの力を秘めているかは、理解できた。
「この通り私は人ではないのだ。人間どもは滅ぼさなくては気が済まない、善良な魔物だ」
「……!」
リーグが目にもとまらぬ速さで移動し、アルバスの目前に立った。
「さて、方法を教えてもらおうか。代表」