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薄暗い一室。
怪しげな液体の入ったフラスコ。まがまがしい模様の本。
床には魔法陣。
何か怪しい魔法の研究をしていそうな部屋に、白衣を着た男が一人佇んでいた。
「ふふふふ、研究は完成した!」
男は狂気的な笑みを浮かべたそう言った。
「これで邪神ラクトーアを復活させられるぞ!!」
高らかに男は叫んだ。
「ラクトーアの力さえ借りられれば……この世をこの私、アルバス・クラウンドの物にすることが出来る!」
アルバスがそう言ったとき。
「アルバス代表!! 副代表がお呼びです」
「リーグが?」
「はい。大事な話があるので、党員を全て集めてほしいとのことです」
「ほう……それはちょうどいいな。俺もちょうど大事な話があるところだったんだ。早速向かう」
アルバスは部屋を出た。
部屋を出て、中央の大広間に向かう。大勢の人間が集まっていた。
先に副代表のリーグが壇上に立ち話をしていた。
「おお、代表来たか! では私からまず話をしよう!」
リーグは強面の男だった。真っ黒のスーツを身に着けている。
「我がラクトーア党は邪神ラクトーアを復活させ、この腐っている世界を支配するために作られた党である! この私が邪神の存在を代表に伝え、そして天才的な頭脳と最高の魔法技術を持つ代表が邪神復活の研究を行う」
リーグは身振り手振りを加え、演説をした。
(やつは何を改まって言ってるんだ?)
アルバスは疑問に思ったが口にはせず、黙って壇上に立つリーグの話を聞く。
「ハープト海の海底に邪神は眠っている。我々は海底にこのアジトを作り、研究を行っていた。渦潮を起こす防衛設備を付けたおかげで、今まで誰も入っては来れず好きに研究ができた。研究が大いに進んでいるのは、諸君たち党員のおかげでもある誠に感謝する」
リーグがそう言うと、党員たちが喜んで歓声を上げた。
「諸君たちに一つ。言っておかなければならないことがある」
先ほどまで笑顔だったが、一転し無表情になる。
「邪神の力を借りても世界征服は出来ない。邪神を復活させれば、世界は滅びる」
○
釣れないな……
沖に出て釣りをしたのだが、全然釣れない。
普通の魚も釣れない。ムカつくくらい釣れない。
最近なんか不調だ。ボウズの日が続いている。
エサが良くないか? それとも、竿の使い方が良くない?
いや……ただ、このやり方でもいっぱい釣れるときは釣れてたしな……
単純に最近は運がないだけか?
そういえば、エミルがやたら釣りまくってたな。
あいつに運を吸われたのか?
しばらく竿を垂らし続けると、いきなり近くで渦潮が発生した。
かなりデカい渦潮だ。
少しジャンプして離れる。
……これ、人工的に起こされてるな。魔法か?
魔力の気配を感じて俺はそう思った。
誰が何のために渦潮を?
下に何か隠されているのか?
うーん……
ま、どうでもいいか。
ただ、こんな渦潮があったら、この辺りには魚は釣れないだろうな。
さっきまで釣れなかったのは、これが理由か。定期的に渦潮が発生する海域に、魚は住んでないだろう。
俺は場所を変えて釣りを再開した。