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 今日も俺はいつも通り、湖で釣りをしていた。

 シーラが俺のすぐ近くで寝息を立てて寝ている。

 思ったより彼女は大人しい。変なものを作りまくって騒ぎを起こすと思ったが、意外とのんびりすることも嫌いではないようだ。


 多分シーラは、一人が寂しいからこっちの世界に来たのだろう。

 俺とエミルがいるから、満足はしているということか。

 エミルはというと、俺が釣りをしている間は、じっと俺を見るか、素振りをしたり走ったりトレーニングをしていた。今は素振りをしているが。


「はぁー!! はぁー!!」


 一回一回力をこめて素振りをするので、すごくうるさい。

 集中力が削がれるからやめてほしいが、練習をやめろとは言いづらい。

 俺は釣りをする時、いつもラジオをかける。エミルの声でかき消されるので、ラジオの音量をちょっと上げた。

 シーラが近くにいるが、エミルの声でも起きないので大丈夫だろう。


 音量を上げるとラジオからニュースが飛び込んできた。


『ハープトビーチ付近で釣れる伝説のデルルについての情報です! デルルをダイビング中目撃したという情報が多発しており、大勢の釣り人がハープトビーチに向かっているようです!』

「!?」


 デルル……!


 聞いたことがある。

 十年に一度釣り上げられるかられないかくらいの、めちゃくちゃ珍しい魚だ。

 ダイビングで見たと言ったが、それもかなり珍しいはず。

 釣る難易度は非常に高く、釣り人にとっては憧れの魚と言っていい。


 あと、噂だが味が格別に美味しいらしい。


 普段は湖で釣りをしているが、海に釣りにいくこともあるので、海釣りについてもある程度は知っている。

 まあ、湖での釣りに比べると、微妙であるが。

 ほかの釣り人も集まっているって話だったな。

 よし、決めた。

 ビーチに行こう。


『それからハープトビーチ付近の海域では、今まで発生したことのない渦潮が発生しているという情報もあります。沖までは釣りに行かないようご注意ください』


 渦潮? 


 そんなの俺には全く関係ないし、行くことには変わりない。

 シーラは流石に置いとくのは不味いので、連れて行こう。

 エミルは……来るなって言ってもどうせ来そうだな。

 とにかく早くいかないと、ほかの釣り人に釣られてしまう。


 俺は寝ていたシーラを起こして、準備をしてハープトビーチへと向かった



「ここがハープトビーチね!!」


 砂浜を眺めながらエミルがそう言った。

 彼女について来いと言った覚えはないが、勝手についてきていた。


「ここ暑いね~」


 シーラがまぶしそうに空を見ながら言った。

 ハープトビーチは夏になるのが早い地域だ。

 今はほかの場所は春なのだが、ここは夏だ。

 俺が住んでいる場所からかなり距離が離れてはいるが、俺たちは全員、移動速度が速いため、数日で到着した。


 ビーチには結構人がいた。ただ、釣っている人ではなく、ビーチで遊んでいる人がほとんどだった。


 まあ、当然か。人が泳いでる場所で釣りなどしていいわけがない。


 ラジオでもハープトビーチ付近の海と言っていたし、この近くに釣り場があって、その辺りで釣りをしているのだろう。


 このビーチ自体は、景観もいいし季節的にも泳ぎにぴったりなので単純に人が多いのだろう。


「楽しそうね。せっかく来たし泳がない?」

「泳ぐ? そんな暇はないぞ。今すぐ釣りだ。大体水着持ってきてないし」

「ノリが悪いわね。私は水着持ってきてるのに」


 と不機嫌そうに頬を膨らました。

 ちなみにこの世界には水着などの文明器具がある。文明のレベルは割と高く、結構ハイテクなものがあったりする。


「水着って何ー」


 シーラが尋ねた。


「えーとね……あの子が着てるみたいな服ね」


 エミルは海で遊んでいた少女を指差してそういった。可愛いデザインのスク水を着ている。


「あれを着て海で泳ぐのよ。シーラは持ってきてないよね」


 というか持ってもいないだろう。


「海泳ぐんだ。たのしそー」


 シーラは少女を見ながら、創造者としての力を使った。

 数秒後、シーラの服が水着に変化する。

 少女が着ていたのと形は同じだが、、デザインはいつものマーブル模様の水着をシーラは着ていた。


「出来た!」

「み、水着になった……」


 エミルが驚いている。

 水着を作ることができるのか。

 そもそも元々きていた服も、能力で作ったものだったのだろうな。


「じゃあ私も着替えてくる」


 エミルはそう言って、更衣室に向かって行った。


 ……水着か。


 すぐ釣りにいくつもりだったが、見てみたくなってしまった。


 一目見て釣りに行くか?

 いやいや、釣り人魂より、スケベ心を優先してどうする。


 早速釣りに……


「お兄ちゃんは遊ばないの?」


 シーラが俺の手を掴んで、少し寂しそうに言ってきた。


「……」


 ここで遊ばないと言えるのは人の心がないものだけだろう。


「い、いや俺もちょっと遊んでいくか」

「やったー」

 俺の言葉を聞き、シーラは全力で喜んだ。


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