15
名乗り終えた後、エミルとブラシドは剣を構えながら目を合わせる。
(こいつ……相当強い)
構えと雰囲気で相手の強さをエミルは理解した。
(これだけの強者を従えているということは、シーラはそれだけ強い魔物ということね……)
ブラシドより、シーラが強いのは間違いない。エミルに勝てる自信はなかった。
(今はこいつを倒すことだけに集中よ)
気を取り直し、エミルはブラシドとの戦いに集中する。
ブラシドは二本の剣をクロスさせる。
「双斬波!」
両手の剣を同時に振り、斬撃を飛ばしてきた。
斬撃は床を傷付けながら、エミルに向かって飛んでくる。
受け止めきれない。そう判断したエミルは、咄嗟に横に飛び避ける。
避けるのを予想したのか、ブラシドは瞬時にエミルに斬りかかる。
何とか受け止める。その瞬間、雷轟剣から雷が迸る。
ブラシドに直撃。
「ぐっ!」
一瞬動きが止まる。
その隙を見て、エミルは斬りかかる。
剣が当たる直前に、ブラシドは動きを取り戻す。後ろにジャンプして回避。
エミルと距離を取った。
「中々に良き剣だ……我も武器を変えよう」
そう言った瞬間、ブラシドの持っていた二本の剣が輝き始める。
瞬時に形状が変化し、弓になった。
ブラシドは光で矢を作り、それを弓にセットする。
弦を引いて、エミルに向かって矢を放った。
凄まじいエネルギーをエミルは感じ入る。攻撃を受けきれないと思い、後ろに下がって回避する。
矢は床に当たったと同時に爆発する。
直撃は避けたエミルだったが、余波を食らってしまう。
「くっ!」
体勢を崩したが、何とか受け身を取る。
ブラシドは弓を連射する。
先ほどよりは一本一本のエネルギーは少ない。エミルは雷を込めて、剣を振る。
途中で矢にあたった。当たった瞬間、爆発した。
「はあああ!」
エミルは叫びながらもう一度剣を振る。今度はブラシドに向かって雷撃を飛ばした。
ブラシドの弓が形状を変えた。盾になる。盾で雷撃を受け止めた。
攻撃を防いだ後、盾が形状を変える。
今度は一本の大剣になった。
上から振り下ろす。ミエルは後ろに飛び回避。
大剣は床に激突する。凄まじい衝撃波が発生した。
「ぐっ……!」
勢いでエミルは少し吹き飛ばされてしまう。
ブラシドは再び武器の形状を弓に変え、矢を放つ。
エミルの頭めがけて、矢は飛んでいく。
「!!」
直撃する寸前、何とか剣で防ぐ。
ブラシドの猛攻はその後も続く。
(思った通り、こいつ相当強い……)
攻撃何とか受けながら、エミルはそう思った。
(奥の手を使うしかないわね)
エミルは雷轟剣を両手で握りしめ、力を込めた。
雷轟剣は凄まじい電流を放ち始めた。
剣身が電気に変化する。
「むっ!」
ブラシドが驚愕したように目を見張る。
エミルが雷轟剣を自分の口で飲み込んだからだ。
彼女の体が徐々に白い雷そのものに変質していく。
手に雷で出来た剣が握られていた。先ほど飲み込んだはずの雷轟剣と同じ形をしていた。
「むっ!?」
物凄いスピードでエミルは動き、ブラシドの体を一刀両断した。
「……雷轟神斬」
真っ二つに斬られたブラシドの体が地面に落ちる。
「ぐはっ……見事なり」
そう言い残し、ブラシドは黒い靄となって消滅した。
「ぐ……」
徐々にエミルの体が元に戻ってくる。
握っていた剣も、元の雷轟剣に戻っていったら。
エミルは膝をつく。
(雷轟化はやっぱり消耗が激しいわね……もう使えないかも……でも三連勝すればボスって言ってたから、あと一回戦う必要があるのよね……さっきのやつより強いってことは……無理してでも戦わないといけないかもしれない……)
息を切らせながら、エミルは考えていた。
何とか立ち上がるも、少しふらついている。
『おめでとうございます! ついにボス戦でございます』
アナウンスが鳴り響いた。