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擬似魔界とやらを一周し終え入り口に戻ってきた。
しかし、土龍がいたのは少し驚いたな。
龍種は、Aランクの魔物とされているが、知能は持たないし存在名もない。ちょっと変わった魔物である。
龍種みたいな魔物が数種いるが、魔界からこっちにやってくることは稀だ。
あと、さっきの土龍……
倒した瞬間、黒い靄となって消えた。
あれは恐らくシーラの能力で作成した偽物。
本物なら死体が残るはずだ。
俺が魔法で破壊したのは、頭だけだったからな。
土龍を能力で作れると言うことは、シーラ自体は相当な実力者だ。
Aランクの魔物ではなく、Sランク並みの実力を持っている可能性がある。
一瞬で倒したから、あの土龍が本物と同じ力を持っているとは限らないが……ただ、シーラはここなら苦戦すると言っていたし、本物と同じ力をもっていた可能性は高いか。
まあ、シーラの力量がどうだろうと知ったことではないがな。
とっ捕まえて、湖を元に戻してもらうだけだ。
外に出て、ぬいぐるみからスタンプを押してもらった。
これで全スタンプを押してもらったこ。
「おい! シーラ! 出てきやがれ! 全部揃ったぞ!」
スタンプカードを掲げながら、俺はそう叫んだ。
「せっかちねお兄ちゃんは」
背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り向く。
少女が目の前に立っていた。
ゴスロリ衣装を着た、黒髪。
肌が非常に白く、クマのぬいぐるみを右手に持っている。
「お前がシーラか」
「うん。初めまして、"創造者"シーラだよ」
創造者。
それがこいつの存在名か。
物作る能力だろう。わかりやすいな。
しかし、こいつがシーラか。
子供の声だったが、見た目も同じく子供だったか。
姿が子供の魔物というのも、何回か見たことはある。そこまで珍しいわけではない。
「ようやく会えたな。さあ、俺と一緒に湖まで来てもらおう」
「みずうみってどこ? 楽しいところ?」
「楽しいところだったが、お前のせいで楽しくなくなった」
「えーどういうことー? シーラそんなことしてないよー」
白々しい反応しやがって。
目の前に来たのが大チャンスだ。
さっさと捕まえるか。
俺は魔縛の魔法を使用。
白く光っている、魔力の糸がシーラに絡み付き、縛り上げた。相手を捕獲するための魔法である。
「あー、捕まっちゃったー。やばーい」
シーラは、無邪気に声を上げた。
やばいとか言っているが、全然危機感を感じない声である。その気になれば力ずく破れると思っているのか? 残念ながら俺の魔縛を破れる者は、俺以外いない。
「なーんちゃって」
シーラがそう言った瞬間、黒い靄となり消滅した。
『そのシーラは本物そっくりの分身でした~。本物はお城の一番上にいるよー』
おちょくるような声が、空のから響いてきた。
『ははは、気づかないなんて間抜けだね〜』
ちっ……ガキが。ふざけやがって。
こういう分身を見破ったりするの苦手なんだよ。
勘のいい奴は分身の方が弱く感じて、すぐ分かるらしいが、正直分身も本体も俺からすると力の差が分かりにくいから、気づくことはできない。
ま、ガキの悪戯に本気で怒るのも大人気ない。
城は確か中央にあったはずだ。
俺は急いで城へと向かった。