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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
プロローグ 悪魔と死神と探偵と
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第7話 推理議論中盤~犯人指摘~

 僕は丸太が川に置かれた時。

 その場でに居たであろう人物を指摘した。

 ツカサ・オレット。人界の代表剣士であり。この論争を始めた張本人。


「貴方は僕の何気ない一言に、こう答えましたね?」

『ああ。生意気なエルフの小娘の、提案でな』

「どうして知っているんですか? アスハさんの提案を」


 僕に指摘されたツカサさんは、焦る様子を見せない。

 眼鏡を光らせて瞳を隠し。ニヤリと笑っている。

 まるで、待っていましたと言わんばかりに。


「それにこの事件の捜査中。貴方の態度はおかしかったです」


 妙に高圧的な態度を取ったり。他殺に固執したり。

 大した証拠もなくアスハさんを、疑ったり。

 ツカサさんの言動は、どこか妙だった。


「それに貴方はアスハさんの名前を。ピッタリと言い当てましたね?」

「あ! そういえば。私、人界の守備隊に、名乗ったりしてませんよ!」

「答えてもらいましょうか? どうしてなんですか?」


 ツカサさんは、ニヤニヤしながら両手を広げた。

 追い詰めているはずなのに、そんな感覚がしない。

 まるで彼の掌で踊らされているような気分だ。


「素晴らしい……。想像以上だ。人界に一人欲しいほどにね……」

「つ、ツカサさん……?」

「なんで"どうして"なんて聞くの? 君にはもう、答えが分かっているはずだ」


 な、なんだ……? 急に雰囲気が変わったような……。

 でもここで恐れてはだめだ。一気に畳みかけないと!


「最初に疑問に思ったのは。貴方が人界の騎士を指揮しなかった事です」


 現場を捜査したいなら、魔界の暗黒騎士ではなく。

 人界の聖騎士団を使うだろう。彼らは部下なのだから。

 でもツカサさん。元敵対国の騎士に、見下す様に接していたんだよな。


「ツカサさん。まさか。反感を買うために。高慢な性格を演じていたのですか?」

「ど、どういう事だね? ユウキ君」


 ずっとツカサさんと一緒に居た、ホソさんが恐れている。

 

「彼はずっと、他殺に固執していました。大した証拠もない内から」

「ええ。まぁ……。でも、実際他殺だったわけですし……」

「でもホソさんは。事故だと思い込んでいたわけですよね?」


 ホソさんだって、無能な騎士じゃない。

 冷静な判断力があれば、他殺の線にだって気づいたはずだ。


「上から目線のツカサさんに、腹を立てて。冷静な判断力を失わせていたのかも……」

「まさか……。あの態度はわざとだったのか!?」

「元々人族と魔物は、対立関係です。そこに上から目線。対抗意識を持っても、不思議じゃない……」


 僕が説明している最中も、ツカサさんはニヤニヤ笑っていた。

 この人の真意がまるで読めない。

 瞳の中に巨大な闇が隠されているようにすら、思えてくる。


「他殺を主張すれば、反感からつい事故死の可能性を考える……」

「そうですな。私はこのムカつく剣士の鼻をあかしたくて。つい事故の証明に先走りました」

「その後、自分の他殺の推理を外せば。これは事故だと思い込んでしまう……」


 彼の推理には穴が多過ぎた。

 これが最初から反論されることを、想定していたら?

 

「ふむ。しかし、どうして彼がアスハさんの提案を知っていたのかね?」

「あの場に暗黒騎士二人が居ました。兜と鎧で身を隠した……」

「まさか……。そのどちらかが、ツカサさんだというのか?」


 魔王様の問いかけに、僕は頷いた。

 鎧で体格を誤魔化し。兜で素顔を隠したんだ。


「でもなんでそんなことを?」

「丸太を自分の手で運ぶため、じゃないでしょうか?」


 丸太の位置次第では、川に流すことは出来なくなる。

 その位置調整のためにも、自分の手で丸太を運ぶ必要があった。

 あの時、僕と一緒に丸太を運んだ暗黒騎士が。ツカサさんだったんだ!


「アスハさんが提案しなくても、最悪自分の手で、提案できるよ……」

「はい。丸太の中に、被害者が居る事を知っていれば……」

「どうなのですか!? 人界代表剣士殿!」


 魔王様が珍しく、啖呵を切った。

 あの形相で睨まれても、ツカサさんは笑みを引っ込めない。


「アハハ! 凄いよ! これが魔界探偵の推理力かぁ!」


 ツカサさんは目を開きながら、口角だけ笑った。

 両手を前に突き出して、掌を開いている。


「人界の騎士ではなく、魔界の騎士を使ったのも。普段の性格との違いを隠すためか!」

「そうだね。結論から言えば。ユウキ君の、大・正・解!」


 何だこの人……。心理の底が全く見えない。

 問い詰められているというのに。楽しんでいる……。


「いやぁ。普段人を見下すことなんてないからさぁ! 結構演技に苦労したんだよ!」

「……!?」


 魔王様もこの展開に、言葉を失っているようだ。


「師匠は、貴方が殺したんですね!?」

「いやいや。"僕"は暗黒騎士の振りをして。丸太を運んで。騎士団が間違えるように仕組んだだけさぁ!」

「思いっきり暗躍しているじゃないですか!?」


 ここまで認めたと言うのに、この理由は。

 殺エルフの証拠が、一つも提示されていないからだろう。

 確かに彼が直接殺害したという証拠は、一つもない。


「だって、僕には動機がないし。それに……」


 僕を見つめながら、ツカサさんはにやりと笑った。

 

「僕にはメイ液を生成できないからね。雷を起こすほどの、魔力もないよ」

「でも貴方が犯人なら。暗殺未遂事件の説明もつきます!」

「へえ。助手君の魔王の娘ちゃんが言うじゃない。どういう事?」


 アスハさんに犯行が不可能なのは。ステージ上に居なかったからだ。

 逆に言えば。矢を放てるのはステージ上の者だけになる。

 人界代表剣士のツカサさんは、和平発表のため。当然ステージ上に居たはずだ。


「人族にだって、一部を氷点下にする魔法くらい使えますよね? メイ液は常温で気化するから……」

「おっと! 助手君にしては、着眼点が良いね。でも異議ありと言わせてもらおうかな?」


 狂ったように笑いながら、ツカサさんはルシェ様を指した。

 

「僕はどうやって、メイ液を作り出しのかな? 人族には作れないはずだけど?」

「じ、事前に作っておけば良いだけです!」

「おいおい。僕はただの人界の騎士だよ。エルフの国が、訳も聞かず作ってくれるわけないじゃん!」


 争点が戻ってきたな。問題はそれだけじゃない。

 被害者を気絶させるほどの電気も、人族は使えない。


「ルシェ様……。それに暗黒騎士は僕らと終始一緒に居ました」

「その通り! 流石ユウキ君! 僕にはペットボトルを飛ばせないって、分かってるねぇ!」


 この人が暗躍しているのは、間違いないけど。

 ツカサさんに被害者を殺すのは、不可能なんだ。

 どうやら明かす時が来たようだな。この不可能犯罪を可能にする方法を!


「確かに貴方に、チイさんを殺すことは不可能です」

「アハハ! じゃあ君の暴いたことは全て、無駄……」

「でも。暗殺未遂事件なら、起こせますよね?」


 そうだ。僕らはまだツカサさんの罠に嵌っているんだ。

 彼は人の心理を操る。性格すら偽って。

 そんな彼がわざとらしく洩らした失言。ここに罠があるんだ。


「風船に使われる予定の、メイ液。これをこっそり調達すれば、暗殺未遂事件は起こせます」

「そう! "暗殺未遂事件"は起こせるよ」

「でも被害者殺害は不可能。つまり! この事件は全く別々の人物が引き起こした事件だったんだ!」

「え? えええええええ!?」


 ルシェ様のみならず。魔王様すら口を開いて驚いている。

 暗殺未遂事件は、アリバイ工作でも。事後工作のためでもない。

 全くの別人が、別の思惑で仕組んだことだったんだ。


 関係があるって、僕も思い込んでいたけど。

 ツカサさんの影響で、魔王様もホソさんすらも思い込まされていた。

 そして被害者を殺せるのは。このトリックを仕組めるのは……。


「もう一つの。チイ・アリーノ殺害の犯人は……」


 僕は真犯人に向かって、指を突きつけた。

 雷を偽造出来て。タイミングよくペットボトルロケットを使えて。

 なおかつ、自由にメイ液を生成できる存在と言えば……。


「アスハさん。貴方しかいません」


 全部罠だったんだ。ツカサさんが、アスハさんを真っ先に指名したのも。

 僕に推理の穴を指摘させて。一度彼女から疑いを逸らすための……。

 まさか二人が……。共犯関係にあったなんて!

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