エピローグ
「ヒラが全てを認めたよ」
人界での事件から数日後。僕は再びルト村を訪れた。
ルナティックさんにその後の様子を聞いて。
ようやく全てが終わったんだと、実感する。
「権力者の盾がなくなり、生気すら失ってるぜ」
「その様子だと脅した通りの、暴露も出来なさそうですね」
一気に混乱が起こるという事態は、避けられそうだが。
主謀者と共謀していた権力者達も。いずれ捜査の手が免れないだろう。
でもそれは彼らにとって、リスクが低い事だ。
僕は彼らの保身を利用した。文句が言える立場じゃない。
明かされない真実はない。いずれ彼らも裁かれる時が来るだろう。
「ユウキ。本当によくやってくれた」
「終わりは新たな始まりですよ。これから僕には、激務が待っていますから」
僕は苦笑いをしながら答えた。
魔界以外の国が、ヒラの支配下にあった。
秩序の崩壊を防ぐため、僕は魔界の協力を約束した。
これから僕は、魔界の偉い人達を相手に。
説得と言う仕事が大量に残っている。
「大丈夫! ユウだけにはやらせない! 私も一緒だから!」
「ルシェ様……」
ルシェ様はこうして、いつも僕を支えてくれる。
まったく、これじゃあどちらが世話係か分からないなぁ。
「微力ながら、俺達も協力するぜ。世界情勢の変化に対してな」
「そう……。ですね」
僕は真実を明らかにした。その結果、情勢が大きく変わるであろう。
自分が成し遂げた事の大きさを。僕は身に染みていた。
同時にそれらを成し遂げた者の責任も。
「どうした? 難しい表情をして」
「いえ。ちょっと、探偵として。真実について考えていたんです」
僕は魔界唯一の探偵として。様々な依頼をこなしてきた。
探し物が殆どだが、殺魔物事件も珍しくない。
僕は魔界と言う小さな世界しかみていなかったんだ。
「僕は今まで、真実を明かせば全て良い方向に繋がると考えていました」
実際魔界での事件は、全て真実を明かした事で好転した。
でも今回の事件を通じて僕は思った。
「真相を話すってことは。何かを犠牲にすること。真実を明かす重みを、僕は痛感しました」
広い世界を見て。世界情勢を見て。
真実はいつも明るいものではないと、僕は知った。
「時に真実は残酷で。世界をも変えかねない」
「ああ。だから真実を探す者は、責任が問われるんだ」
「僕は探偵です。真実を探すのが仕事で。使命です」
でも僕が真実を追い求める理由は。それだけが理由じゃない。
真実を隠せば、その分誰かが不幸になる。
僕はそれを見過ごせない。だから僕はこれからも真実を探す。
「きっとこれから僕は。多くの責任を背負う事になるでしょうね」
それが探偵として。いや僕自身が進みたい道として。
僕がやるべき事なのだ。
「良い覚悟だが。忘れるな。お前は一人じゃない」
「はい。分かっているつもりです」
今回の事件だって、僕一人で謎を解いた訳じゃない。
色んな者に協力してもらって。父さんと母さんが諦めなかったから。
僕はヒラを追い詰めることができたんだ。
責任を一人で背負う必要もない。
一緒に背負って、軽くしてくれる者達が居る。
そのことを僕は胸に刻み込んでおく。
「じゃあ、僕達はこれで。一度魔王城に戻ります」
「ああ。そうだ。コイツはお前に渡しておこうと思ってな」
ルナティックさんは、懐から取り出したものをくれた。
それは写真とそれを飾る物のようだった。
「これは……」
「辛くなったらそれを見ろ。写っている者が、お前を見守り、支えるだろう」
「はい!」
僕は力一杯頷いた。ルナティックさんに一礼をして。
ルシェ様の転移魔法で、魔王城に戻る。
僕の事務所に戻り、一息つき。
今回の一件。勝手に動いた事で、魔王様からそれは激怒された。
彼はルシェ様だけじゃなく、僕の事も心配してくれた。
でも成し遂げた事を告げると。労いの言葉もくれた。
「真実は時に残酷。でも残酷な真実の先にもきっと……」
僕は二枚の写真を、事務所に飾った。
一つは色褪せた写真。僕の両親とルナティックさん達が写っている。
その隣に新しい写真。僕とルシェ様、アリス様が写った写真を飾る。
明かされない真実はない。時を超えようと。
次の世代に受け継がれて。真実は暴かれていく。
親と同じ志で前に進む。それこそが、受け継ぐという事なのだろう。
「ほら、ユウ! 行くよ! 休業中に仕事が溜まっているんだから!」
「今行きますよ!」
僕はコートの袖を通して、新たな依頼へ。
今回は旧友からの依頼だ。丁度良い。
探偵として。真実を明かす者として。
一回り成長した僕の姿を見てもらおう。
責任感を持つ。それがきっと。大人への成長ということなのだから……。




