最終話 推理議論クライマックス!
全ては十二年前。父と母が関わった、コン家没落事件から始まった。
父さんと母さんは事件の真相を追い。命を落とした。
でも彼らが残したものは無駄ではない。それを今から証明する!
「ユウ……。大丈夫……?」
不安そうに見つめるルシェ様に、僕は力一杯の笑みを見せた。
「大丈夫です。任せてください!」
僕は父と母の事が知りたくて。過去の事件に関わった。
今なら分かる……。何故二人がここまでこの事件に固執したのか。
両親の思いが流れる様に、心に広がり。解き放たれるのが感じる。
二人が残した無念を晴らすため。僕は真実でヒラを追い詰める。
大勢の権力者達に守られている以上。守りは固い。
この状況で僕が逆転する方法は一つだけ。
奴が権力者を操れているのは。自分の逮捕が彼らの不利益に繋がるからだ。
だとしたら。権力者達に逆の事を証明すれば良い。
ヒラを庇う事が、逮捕よりも大きな損失になるという事を。
「な、なんだ? その笑みは? お前この状況で、何とかなると思っているのか?」
「一つ確認ですが? 彼らには言葉も届いている。その解釈で良いですか?」
「ああ。奴らには俺の五感が共有されている。それがなんだ?」
それが聞けて安心だ。彼らに僕の言葉を届ける事が出来る。
これは推理を超えた、駆け引きだ。
真実の力を使って……。僕は主謀者を倒す!
「権力者の皆さん! 聞いて下さい! 僕は真実を諦めない!」
「無駄だ。いくら語り掛けても、奴らは自分の保身しか考えない」
それが狙いだ。
「このまま僕を逮捕したら、どうなるか。もう一度考えてください」
権力者達が揃って首を傾げる。
良いぞ。僕の声が届いている。
「僕は魔王様の娘。ルシェ様の側近です。そんな者が人界で逮捕されたらどうなりますか?」
十二年前に起きた事件を思い出せ。
あの時、僕の両親は何をした?
「当然魔王様は不服として。僕の無実を訴えますよ?」
実際のところ只の使用人だが。魔王様ならしてくれると信じている。
ルシェ様が説得してくれると信じている。
「そうなれば。魔界側は僕の無実を。人界側が僕の有罪を主張する。すると?」
この状況は船の沈没事件と同じだ。
この時何が起きた? そう!
「国際裁判が開かれます。第三者立ち入りの下でね!」
「国際裁判だと……?」
僕の主張に初めてヒラが、表情を消した。
「そうなれば、僕は貴方達の罪を告発します。第三者立ち入りの、公の場でね!」
「正気か? 国の秩序がかかっているんだぞ!」
「ああ。お前が暴露するのと同じ結果になるだろう。でも!」
これが最後の賭けだ。魔界と人界は和平が結ばれたんだ。
長い年月の末結ばれた絆を……! 僕らはここで使うんだ!
「僕らが……。魔界がきっと助けになります! 魔界はヒラの影響を受けないのですから!」
誰が反論しても、僕が説得して見せる!
人界の人たちも、他の国の人たちも。僕ら魔物が救って見せる!
「僕を犯人にすれば。貴方達は罪を一つ増やすことになる! 真犯人隠蔽と言う罪がね!」
「貴様……。そんな主張が通るとでも? 十二年前の判決を忘れたのか?」
あの時は判事も弁護士も、ヒラの影響かだった。
だから母は真実に届かなかったが。今回は違う。
「同じ手は使えないよ。正体を明かした以上、お前は自由に動けない」
聖騎士団が監視するはずだ。僕はアリス様達を信じる!
「騎士長! コイツの戯言を信じるな! 魔界の助けなんて、起きやしない!」
「確かに難しいかもしれね。でもな。その難しいを、坊主は何度もやってみせた」
ルナティックさんとアリス様は、剣を構えた。
刃先を指の代わりに、ヒラにつきつける。
「彼の持つ可能性を信じて。私達はお前の監視に入ります!」
「貴様らぁ……! そんな言葉で……!」
「さあ、皆さん! どうしますか? ここでヒラを逮捕すれば、魔界裁判は起きません!」
人界で起きた事件で人間が逮捕されても、問題はない。
普通の裁判として、処理されるはずだ。
「どちらの方がリスクが大きいか。今一度考えてください!」
球体の向こう側の人々が、考え始める。
その様子を冷汗と共に、ヒラは見つめていた。
「騙されるな! コイツにそんな事出来る訳……」
「十二年前、実際に裁判は起きました。それを繰り返すだけです」
「ぐっ! ユウキ……! 貴様ぁ!」
これで最後だ。権力者達の意志を、奴につきつけてやろう。
「さあ! 僕の提案に乗る者は。視界共有を解除してもらいましょうか?」
僕の言葉と共に、宙に浮いた球体が消えていく。
一つ、また一つと。権力者たちが意志表明する。
「ああ……。そんな……」
「どうやら、お前を抱える方がリスク。みんなそう判断したらしいな」
これで終わりだ。
「ヒラ。十二年、お前を守った盾はもうない。お前の退屈が満たされることは永遠にない」
僕は最後に、最大限の力で人差し指を突き出した。
「お前はここで! ゲームオーバーだ!」
「そんな馬鹿な……。この俺が……? 知恵比べで負けただと……?」
空中で頭を抱えながら、体を揺らし始めるヒラ。
「嘘だ、嘘だ、嘘だ! 俺の計画は完璧だったはず……!?」
雨雲がさけ切れて、太陽が姿を現す。
動揺から、ヒラの魔法が解けかけているようだ。
太い雲の向こう側から、光が放出され。ヒラを照らす。
ヒラは剣を上空に向かって、投げつけた。
同時に彼は地面に落下。正気を失って、狂った様に頭をひねる。
上空に投げ出された剣に、青い光が集まっていく。
ヒラが立ち上がり、その背後の床に地面が突き刺さる。
すると青く光った剣に向かって。一筋の雷光が降り注いだ。
「うおおおおおおおお!」
ヒラは発狂しながら、落雷の生み出す衝撃に吹き飛ばされた。
彼は白目を剥きながら、気を失う。
「父さん、母さん。僕はやり切ったよ……」
十二年の歳月を超えて、ようやく事件は解決した。
僕はようやく両親がやり残した事を、達成した。
探偵として真実を明かすことによって。
「ユウ! 良かったぁ……。本当に良かったぁ!」
ルシェ様が涙目で、僕に飛びついた。
余程心配してくれたのだろう。
「ありがとう。坊……。いや、魔界探偵ユウキ」
ルナティックさんが微笑みながら。
それでも瞳から粒を流しながら、称えてくれた。
「これで終わったんだな。全て……」
空から降り注ぐ太陽光が、僕の事を照らす。
闇の者である魔物には、太陽光は暑すぎるはずなのに。
今だけは温かいと感じていた。




