第7話 推理披露~動機~
「一応聞いておこうか。何故俺が主謀者だと思った?」
変貌ぶりから認めたようなものだ。
でも推理を披露しない訳にもいかない。
「事件を振り返っている時。僕は疑問に思ったんですよ」
「へえ。どの事件?」
「双子塔事件ですよ。貴方と初めてあった場所だ」
僕がヒラに疑いを持ったのは、ルナティックさんの話を聞いた後だ。
主謀者がヒントを出した。そのおかげで、僕はたどり着けた。
「あの時、貴方は五階を見張っていた。それが争点となった訳ですよ」
「犯人が隠し通路から来たにせよ、俺に目撃されるわけだからな」
「まるで事件が起きるのが分かっていたかの様に。貴方は状況を限定させた」
ツカサにトリックを仕込ませるためだろう。
五階に目撃者がいたのなら。煙突を通るしかない。
「次に貴方は、隠し通路の存在を僕に知らせた」
あの時はドジで偶々、隠し通路を見つけたと思ったけど。
本当は知っていたんだ。あの塔に隠し通路があった事を。
「僕に推理をミスリードさせるため。貴方は隠し通路を明かした」
「まあ、君の推理力じゃ。俺が何もしなくても、見つけただろうけど」
ヒラは涼しい表情で、剣を回していた。
追い詰めているはずなのに、この余裕。
ツカサの時を思い出す。物凄く嫌な予感がする。
「主謀者は事件複雑にするため、魔王様の部屋で偽装をしています」
「ああ。マホが単純すぎるトリックを使ったから。ちょいと細工をね」
「主謀者は一連の事件を監視するため、常に僕達と一緒だった」
警備の振りをして、操った者達に指示を出していたのだろう。
他にも工作をして、犯人の手助けをしていたはずだ。
「そして大統領は、ルト村の騎士が主謀者だと言いました」
「言ったね」
「貴方の本来の所属は、ルト村。それはこの場に居る事から、明らかです」
更に主謀者が自ら、大統領の証言は正しいと口にした。
「でもその条件なら。騎士長やアリスだって、当てはまる」
「ルナティックさんには不可能だ。彼にはアリバイがある」
雷が落ちる直前に、ルナティックさんはアリス様に指示を飛ばしている。
そこから教会に移動して、被害者を誘導。
その前に鎧を着て隠れるなんて、不可能だ。
「アリス様は十二年前、六歳だったので除外しました」
「なるほど。確かに条件に当てはまるのは、俺だけだ。いやぁ! 素晴らしい!」
ヒラは両手を広げて、ニヤリと笑った。
「流石は魔界が誇る名探偵! あのヒントで、ここまで見抜かれるなんてね!」
「認めるんですね? 自らの罪を」
「ん? まあそれはおいおい話すとして。まずは動機でも聞いてもらおうか?」
僕の胸を貫くように、不安が徐々に影を見せる。
何故だか分からないが、僕には確信がある。
このままじゃ逃げ切られる。
「まあ別に動機なんてないんだけどね! 強いて言えば……。退屈だったから」
「なっ! それだけで!?」
「そうだよ。権力者を操ったのも。十二年前の事件も。今回も。只の退屈しのぎなんだよ!」
嬉しそうに、自慢げに。自分の動機を話すヒラに。
僕は想像を絶する恐怖を抱いた。
彼の目には利益も支配欲も存在しない。ただ空虚な狂気だけが広がっている。
「俺は昔から、魔力が合ってね。更に剣の腕も自信があり。知恵もあった」
自画自賛だが、本当の事だとしか言えない。
実際彼は、天気を操るほどの魔力を見せている。
「でもさ。こんな村で生まれたせいで。全然刺激が足りなかったんだよね~」
狂気の笑みを浮かべながら。ヒラは空中に浮いた。
まるで村全体を見下すかのように、下を向いている。
「この村じゃ才能あっても、精々衛兵が限界だからさぁ。貴族じゃないと、騎士になれないんだよね」
ここに村があるという事は。それを納める領主も居るはずだ。
騎士になれるのは、領主の一家だけと言う事か。
それがルナティックさんの一家なのだろうな……。
「そんな俺に幸運が訪れた。この村で、人界を騒がす死神事件が起きたんだよ」
死神は元々人界の殺し屋だ。一切証拠を残さない事で有名だったらしい。
こんな小さな村で、殺人が起きれば話題になるだろう。
「そんで俺はちょちょいと解決したわけさ!」
「なっ! 死神をあっさり見つけたというのか!?」
「別に大したことじゃないよ。俺と組む前のアイツは、爪が甘かったから」
ヒラは聖騎士達をあざ笑うかのように、口角を上げた。
「あ! そっか! 穴だらけの計画すら! 人界最高の騎士は見抜けなかったんだっけ?」
彼の言ったことは本当だったらしい。彼には知恵がある。
事件を瞬時に見抜くほどの、才能が。
「でもさ。突き出したんじゃ、結局貴族に手柄を横取りされるだろ?」
「だから脅迫したわけか。ツカサを利用してのし上がるために!」
「中々良い策だろ? おかげで地盤も固まって! 他の国にも手が伸ばせたよ!」
そうやって支配下になる人物を増やしていったわけか……。
「そこで俺はちょっとした事件をした。下っ端騎士でも、各国を操れるのか? 結果は知っての通りさ」
ヒラは他者の欲望と必要なものを見抜く才能で。
支配下に置いた存在を、国の重鎮へとのし上がらせた。
結果ただの下っ端か騎士が、三国に渡る影響力を得たのだ。
「計画が上手く行き過ぎて。また退屈したところに。君が現れてくれたのさ!」
「僕が……?」
「そう! 俺が仕掛けたトリックを見破り! ツカサの罪を立証した君達親子がね!」
まるでおもちゃを貰った子供の様な表情を見せるヒラ。
狂っている。何もかもが歪んでいる。そうとしか言えない。
事件の真相を見抜く才能がありながら。彼は歪んだ目的のためにそれを使ったんだ。
探偵としてヒラの様な存在を許すわけにはいかない。
彼はここで終わらせなければならないんだ!
「だからちょっとだけゲームをしてみた訳! まさかこの俺が、ここまで追い詰められるなんてね!」
「この状況で余裕だな。そろそろ観念して下りてきたらどうだ?」
「観念? まあそれは良いや。それより、ユウキ君! いつものお願いね!」
いつもの。事件の事を振り返り、事件の全貌を明らかにすることだろう。
ヒラは完全に楽しんでいる。きっと何か裏があるんだ。
「みんな君が推理語るの、楽しみに待っているんだからさ!」
「みんな? みんなって誰の事だ!?」
「まあ、推理を披露したら分かるよ。君達が何を相手にしているのか……」
ここで主謀者の言いなりになるのは、癪ではあるが。
今僕に出来ることは、事件の全貌を明らかにすることのみ。
この事件を解決して、彼に償うべき罪を突きつけてやるんだ!




