表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
最終章 ルト村教会殺人事件
56/62

第4話 捜査後編~最後の真実へ~

 僕達は現場まで向かった道を、引き返していた。

 ゆっくり歩くことで、駆け付けた最中に見逃したものが分かる。

 この森に動物の類はいないようだ。


 公道を以外は土道でできている。

 雨で濡れているせいで、土道を歩くと足跡が出来るだろう。

 この足跡は、人間以外に付ける事おは出来ない。


 自然豊かで、静かな場所だ。本来であれば、静かに読書出来るスペースだが。

 現在は殺人事件に関係する場所だ。

 緩やかな見た目とは裏腹に、時間の流れは速く感じる。


「それで。ここで何を探すというのですか?」


 アリス様が公道の真ん中で立ち止まり。

 僕に対して怪訝そうな表情を向ける。


「随分と村から離れてしまいましたが?」

「長くて鉄でできている物だよ」


 僕の説明に、アリス様のみならずルシェ様も首を傾げる


「ユウ。被害者に刺された跡はないだけど……」

「分かっています。でも今回の事件。間違いなく、刃物が使われたはずです」


 あの火事は落雷で、発生したものだ。

 今朝。ルシェ様から人工的に落雷を起こす方法を、教えてもらった。

 でも雷のコントロールは難しいらしい。


 火事が意図的なものなら。雷を操る道具があるはずだ。

 道具はこの森の中にあるはず。


「雷は金属に、引き寄せられます。それに教会は、村で一番高い建物です」

「言いたいことは分かりました。避雷針を探せってことですね」


 アリス様は流石に聖騎士だけあって、理解が速い。

 避雷針。雷を引き寄せる道具だ。

 本来は安全のために設置される。


「問題は火事なっても、母が逃げていない事ですね……」

「アリス様。電気は金属の表面にしか、流れないんです」


 金属の内側に、電気は流れないのだ。

 逆に言えば表面であれば、どんな場所でも流れる。


「なるほど……。教会の内部は電気を通しますからね」

「ちょっと! 二人で納得していないで! 私にも教えてよ!」


 一人謎が解けていないルシェ様は、頬を膨らませ抗議した。

 

「ルシェ様。避雷針が教会内部まで貫通していたら?」

「あ! 教会内部にまで、電気が伝わるね!」

「その時被害者が居たら感電します」


 直撃よりマシだが気を失う。

 被害者が意識を失っていたなら、逃げなくてもおかしくはない。

 気絶と眠りは違う。気絶状態は簡単に目を覚ませない。


「でも避雷針が、何故この森にあるの?」

「犯人が飛ばしたからです。村に置けないですから」


 村が封鎖されることも、想定済みだ。

 誰も外に出ていないなら。捜査が森に及ぶ可能性は低い。

 封鎖が解除されたら、処分するつもりだったのだろう。


「だから騎士長に、村の封鎖続行を提案したのですね?」

「はい。先を越されるわけにはいきませんから」


 犯人はまだ村の中に居る。このチャンスは長くない。

 今なら証拠を探せる。僕は自慢の目を使って、森を見渡した。

 大きな木の小枝が光る。何かが太陽光を反射したのだ。

 

 僕は気の下へ向かった。見上げると、一本の剣が枝に引っかかっている。

 柄の部分が焦げている。僕の推理は当たっていたようだ。


「うわ! ユウの考えた通りだ! 流石だね~」

「しかし。封鎖された村から、どうやってこんな場所に?」


 飛ばしたんだろうけど、それはまだ言わない。

 万が一、盗み聞きされたら。後で言い訳される。

 まだ自分の推理は、胸の内に秘めておこう。


「それから教会は、酷く燃えましたが。何故あそこまで、炎の勢いが?」

「え? それなら油が撒かれていたじゃないか?」

「ん? そうなのですか?」


 アリス様。本当に気づいていない。

 そう言えば、僕が現場に入った時も、直ぐに気づけなかったな。


「アリス様。この公道は洞窟までは?」

「繋がっていません。敵国との国境なのだから、当然です」


 敵兵に歩きやすい道を提供しない。

 だったら、洞窟から森に向かう時。絶対に足跡が着くってことだ。

 雨が止んで間もない。まだ残っているはずだ。


「もう一度。洞窟まで、戻ってみましょう」

「もう何故とは聞きません。事件と関係あるのですね?」


 僕はアリス様に頷いた。彼女は何も言わずに、洞窟まで案内してくれる。

 洞窟までの道のりに、ルト村まで向かう足跡がある。

 僕達が駆け付けた時のものだ。でもその種類に問題があった。


「四種類ありますね……。私達は三人ですが」

「つい最近、ここを誰かが通ったんだ。魔界の者が」


 人界人が魔界に来たという、報告はない。

 洞窟から来られるのは魔物だけだ。


「これは犯人の足跡でしょうか?」

「いや、犯人は村に居た誰かだ」


 魔物がルト村に居たら、目立つだろう。

 今も村に潜伏している可能性は低い。


「じゃあ足跡は。事件と関係ないのかな?」

「どうでしょう? 覚えて損はないですよ」


 アリス様はカメラで、足跡を撮影した。

 

「洞窟へ入りましょう。二人共。匂いに注視して欲しい」

「匂い?」


 二人は同時に首を傾げる。僕の推理が正しければ。

 洞窟内では、ある匂いがするはずだ。

 僕達は三人同時に、洞窟の中に入った。


 直ぐに鼻を強烈な臭いが、刺激する。

 来るときは必死だったから、気にしなかったが。


「これ。油の匂いに似ているね」

「それも強烈なものですよ」

「うん。戦時中の痕跡だろうね」


 ここ数年、国境でのいがみ合いが続いていた。

 この洞窟を通るものは、全くいなかった。

 だけど戦争中なら洞窟に、仕掛けを施している。


 多分敵が攻めてきたら、油攻めの兵器を使うつもりだった。

 それらが忘れられて、油だけが洞窟に残されていた。


「ねえ。こんな匂いが、事件と関係あるの?」

「ありますよ。それが確認できました」


 強烈な油の匂いだが、時間と共に慣れていく。

 脳が油の匂いを、処理しなくなっているのだ。

 脳は必要ない情報は、切り捨てる。慣れたもの程ね。


「真相は見えました。二人は先に、村に戻ってください」

「え? ユウはどうするの?」

「僕は……。魔界側で最後の確認をしておきます」

「魔界側で?」


 ルシェ様はお忍びだし。アリス様は人間だ。

 二人を魔界の国境に連れていけない。


「良いでしょう。貴方の推理。楽しみにしていますよ」


 アリス様はルシェ様を連れて、ルト村へ引き返した。

 僕は重たい足取りで、洞窟を抜ける。

 洞窟の直ぐ傍には、魔物の衛兵が立っていた。


「おい! 脅かすなよ! 人間が来たと思ったじゃないか!」


 この衛兵。僕達はルシェ様の転移魔法で、すり抜けたのだが。

 本来なら国境を通る時。彼の前を通る。絶対に。


「すみません……。少しお話聞かせていただいても?」

「んだよ! こっちは忙しいの!」

「すぐ終わりますから……」


 僕の質問は一つだけだ。


「つい最近。"仮面をつけた"金髪の女性が通りませんでしたか?」

「ん? ああ。通ったな。俺達の話も聞かずに」


 やっぱりか……。


「ありがとうございます」

「お、おう。これだけで良いのか?」

「はい。おかげで、全て分かりました」


 僕は来た道を引き返した。衛兵は何か言ったが。

 僕の耳には入らない。どうやら、真実が出たようだ。

 僕にとって残酷な真実が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ