表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
最終章 ルト村教会殺人事件
55/62

第3話 捜査前編~首謀者の暗躍~

 僕達はルナティックさんと共に、教会を出た。

 現場での細かい作業は、部下に任せる。


「それで。人界の聖騎士が。何故魔物を呼び出したんですか?」


 僕は疑問を騎士団にぶつけた。妙なことは他にもある。

 アリス様と出会ったのは、落雷のすぐ後。

 現場と合流地点は離れている。


 ならば落雷前から出発したはずだ。

 でもその時既に、ワンダさんは殺されたと言っていた。


「数時間前。俺達の前に現れたのさ」

「現れた? 何がですか?」

「十二年前の主謀者。全ての元凶がな」


 曇天の空のした。静かな場所で、ルナティックさんが発した言葉は。

 僕の胸を大きく貫いた。


「主謀者が? 自ら?」

「勿論正体は隠していた。だが奴は言った」

「"お前達の大事な人を殺害する。これはユウキへの挑戦状だ"と言ってました」


 アリス様達の大事な人。すなわち、ワンダさんの事か。

 だからアリス様は死体を、彼女だと確信していたのか……。


「主謀者は、お前との勝負を望んでいた。だから俺達は……」

「ちょっと待って下さい。貴方が主謀者の言いなりになるのは、おかしいですよ」

「勿論。最初は俺の手で蹴りをつけるつもりだった」


 ルナティックさんの性格上。直ぐに他者を頼らない。

 きっとこの結論に至るまで、様々な事件があったはずだ。


「この事件は、主謀者が自ら手を下した。奴はそう言っていた」

「なっ! 今まで他者を操っていた、主謀者が?」

「これはゲームだそうだ。お前が自分にたどり着けるかのな」


 そんな……。僕と知恵比べをするためだけに。

 事件を引き起こしたというのか……。

 僕は主謀者へ怒りと、畏怖の感情が半々で出た。


 狂っている。そうとして言えない。

 命を奪う事に、何の躊躇いもない。それどころか、楽しんですらいる。

 探偵として色んな事件を解決してきたが。どの事件も、動機はそれなりにあった。


「動機はもう一つある。ワンダは独自に、十二年前の事件を調べていた」

「十二年前。ワンダさんは、担当弁護士でしたね」

「主謀者にとって。坊主に情報が行くのは、都合が悪いのだろう」


 ゲームと言う割に、フェアじゃないな。

 もっとも自ら手を下したという事が、怪しいものだ。

 でもドワーフ大統領は言った。この村に、主謀者が居ると。


「奴は自分の正体について。ヒントを口にしやがった」

「随分と余裕ですね」

「とは言え。情けない事に、それだけじゃ、俺らは首謀者の事が分からなかった」


 人界最高の騎士が解けない謎とは、相当だな。

 

「お前さんなら、解けるんじゃないかと思って。アリスに呼び出したんだ」

「それにしても、危険すぎる賭けですね。国境付近には血の気の多い、魔物がいますよ?」

「ワンダが狙われたんだ。俺も冷静さをなくしていた」


 確かに妻が狙われているなら、焦っても不思議じゃない。

 それも主謀者のやり方なのかもしれない。


「奴が提示したヒントは三つ。一つはドワーフ大統領の証言は正しい」


 人界の騎士が主謀者と言う事か……。


「二つ目はドワーフ屋敷の事件。チイの事も、主謀者が操ったと言っていた」

「まさか! あの事件は、トリックもチイさんが考えたはずです」

「そう思われたが。実は巧みに誘導されいたようだ」


 現場となって部屋を使うように、誘導したとかか?

 そうなると、犯人はチイさんに接触できる人物と言う事になる。


「最後は双子塔事件で。魔王の部屋を荒らしたのは自分だと言っていた」


 あの事件で魔王様の部屋に、血があった理由は不明だった。

 それが主謀者自らが、行ったという事か……。

 なるほど。見えてきたぞ。


「ルナティックさん。この村から、騎士を含め。誰も出さないようにしてくれますか?」

「ああ。勿論封鎖しているが……」

「主謀者はまだこの村に居ます。ここで逃がすわけにはいかない」


 絶対に逃げられない方法で、正体を明らかにしてやる。

 まだ主謀者の正体に、確信は持てないけど……。

 和平成立から、ずっと僕達と一緒だった奴のは確かだ。


「坊主には既に、真相が見えているのか?」

「薄っすらとですけど。これから確信を持つつもりです」


 遺体は判別できないほど、焦げていた。

 つまり、被害者がワンダさんとは限らないという事だ。

 問題はもし被害者すり替えトリックが起きたなら。


 ワンダさんが姿を表わさない理由だ。

 この事件、被害者が誰なのかが争点となるだろう。


「そのために、僕はこれから森と洞窟を調査します」

「私が同行しましょう。道案内は必要でしょう?」


 アリス様が自ら買って出た。

 この村の騎士でもある彼女だけど。犯人ではないだろう。

 犯行は彼女が洞窟の中にいる間、行われていたし。

 

 何より今まで共に事件を解いた仲間が、犯人なんて思いたくもない。

 僕はアリス様を信じて、頷いた。

 微かだか、彼女の頬が緩んだ気がした。


「急ぎましょう。主謀者は十二年、隠れた相手です。時間をかければ……」

「いいえ。逆です。ゆっくり行きましょう」


 村にたどり着くまで、必死に走ったから。

 僕達は森の情景や、洞窟の事に詳しくない。

 魔界からルト村までのルートが、鍵になるはずだ。


「お前が言うなら良いですけど……」

「アリス様。この村から、洞窟までの最短経路を教えてください」

「分かりました。ついて着てください」


 僕達は村のすぐそばにある、森へ向かった。

 アリス様は迷うことなく、道を選んでいく。


「随分と詳しいんですね。僕は故郷でも、道があやふやです」

「昔、散々遊びまわりましたからね……」


 昔話をするアリス様の表情は、どこか儚げだった。


「昔の私はハチャメチャだったんですよ」


 『昔は?』っと思ったが、口にしたらまた斬りかかられる。


「多くの友と。母と一緒に、この森を散々駆けっこしました」

「ワンダさんとですか……」

「十二年前。あの事件が起きるまではね……」


 コン家没落事件。それは多くの者の道を狂わせた。

 ここにも一人。日常が変わった人物がいたのか……。


「父も母も、あの事件執着して。私に構ってくれなくなりました」

「気持ちは分かります……。僕もその時。両親が目の前から消えましたから」


 同じ事件の捜査のため。母は失踪して、父は家を離れた。

 親代わりの魔物が、一緒にいてくれたけど。

 やっぱり家族が居ない寂しさだけは、消えなかった。


 次第両親の愛情すら、僕は疑問に思っていた。

 本当に母は、僕を生んで良かったのかと考えた事もあった。


「だから私は、騎士を目指したんです。十二年前の事件を、解決するために」


 全て終わったら、両親が元に戻ってくれる。

 傍に居ながら構ってもらえない状況なら、そう考えてもおかしくない。

 

「美味しいところはお前にもっていかれましたが。後少しだったのに……」


 ワンダさんが死んだと思って。アリス様は悲しんでいるようだ。

 表情や態度には出さないくても。言葉には感情が宿っている。

 この姿を見て、僕は真実を。推理を口に出来るだろうか?


 ワンダさんが生きている、死体がすり替わっている可能性。

 今このことを口にしたら。いらない希望を抱かせるだろう。


「さて。無駄話は終わりです。最短ルートは、実はこの道なんですよ」


 アリス様が向かったのは、整備された道。公道だ。

 商業様に手が加えられていて、生物が動きやすいように出来ている。


「直進が近い様に思えますが。この森は、土が柔らかいですからね」

「その上雨も降っていた。確かに、公道以外では足元が取られますね」


 この最短ルートを知っているのは、森に詳しいものだけ。

 すなわち、ルト村で過ごした誰かのはずだ。

 僕はわざと公道を外れて、山から直進するルートへ向かった。


 現場は濡れている。ここに足跡がなければ、僕の推理は外れている。

 祈るような気持ちで、僕は土を覗き込んだ。


「足跡だ……」


 土を靴で踏んだ後が、村の方向へ伸びている。

 僕は足から力が抜けて、倒れそうになった。

 足跡は洞窟から、直進するように村へ伸びていた。


「どんな残酷な真実でも。それを導き出すのが、探偵だ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ