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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
最終章 ルト村教会殺人事件
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第2話 調査開始

 アリス様の案内で、僕達は人界を訪れた。

 侵略目的以外では。初めて魔物が人界を訪れただろう。

 でも干渉に浸っている場合はない。既に事件は起きているのだ。


 駆け足で走る彼女の後を、僕達は必至で追いかけた。

 元々インドア派と、騎士と言う違いがあり。

 僕達は既に息切れ寸前だ。


 だけどルト村に到着するなり。僕らは呼吸するのすら忘れた。

 既に消火作業が終わったのだろう。教会を覆っていた炎は。

 跡形もなく消えている。教会の上部と共に。


「これは酷いな……」


 僕ら魔物に信仰心なんて欠片もないが。

 信者達にとっては、神への冒涜とも取れる行為だろう。

 火事の跡に引きつっていると。アリス様が教会の中に入った。


 慌てて追いかける。教会の上部は焼け焦げているが。

 かろうじで、階段と床だけは残っていた。

 三階に向かい僕達が目にしたものは。


 酷く焦げていた、原形を留めていない。

 人間の姿だった。確認しなくても分かる。

 既に亡くなっている。アリス様の話では、ワンダさんとのことだったが。


「坊主……。随分と速い到着だな」


 現場には既にルナティックさんと。

 彼が指揮する、騎士団が野次馬を抑えていた。

 

「ルナティックさん。どうして僕を?」

「そいつは話せば長くなる。まずは現場保存をするために……」


 現場の状況を頭に叩き込んでおけと言う事か……。

 雷が落ちたのは、数分前。それで教会が燃えた。

 それはアリス様が、道中で証言してくれたことだ。


 ならこの死体が焦げたのも。数分前と言う事になる。

 事件が起きてから時間が経てば。証拠品も意味をなくす。

 ここで最優先すべきことは。手がかりを得る事だ。


「とにかく死体の状況を確認しておこう……」


 僕は死体に近づいた。目立った外傷はない。

 抵抗した跡もない。これじゃあ死因は特定できないな。


「焼死ではないのですか?」

「うん。死後に燃やされた可能性があるからね」


 死体が焦げていたからと言って。

 燃やされて殺されたとは、僕には思えない。

 

「それに体が一瞬で焼け落ちることはあり得ない。もし体に火が点いたら……」

「普通火を消すために、暴れるもんね」


 意識を失った状態で、燃やされた可能性もある。

 だからこそ、死因を特定するのは難しいだろう。


「それにしても。よくこの遺体が、ワンダさんだと分かったね」

「死体をよく見なさい。髪の毛は残っているでしょう?」


 アリス様に指摘されて、気づいた。髪の毛の先端には、色が残っている。

 アリス様と同じような金髪だ。これがワンダさんの髪色なのだろう。


「それと……。幼い頃私がプレゼントした、ペンダントが……」


 アリス様は死体の首元を指した。

 そこには貝殻でできた、ペンダントが残されている。

 焦げてはいるが、形は判別できる。


「こららから私は母だと、思いました」


 ワンダさんは肌身離さずペンダントを持っていたのだろう。

 断定するには、十分な情報だと思うけど……。

 この体格。髪型。僕は最近どこかで会ったような……。


 僕は死体から離れて、周囲の様子を観察する。

 三階はどこも、酷く燃えた形跡があるが。

 


「それにこの部屋だけ。酷く燃えているな……」


 確かに火事があったにせよ。他の部屋より、焦げ具合が酷い。

 消火されて間もないのだろう。まだ焦げ臭い匂いがする。

 ん? その他に、油の様な匂いが感じられるな……。


 誰かが油を巻いたという事か。でも火事の原因は、落雷だ。

 わざと雷を落とす方法があったとしても。

 被害者が油に気付かないなんてこと、あり得るのか?


「探偵殿! こちらに来ていただけますか!」


 一人の騎士から呼ばれた。僕は彼の下に近寄る。


「どうしたんですか? ヒラさん」

「自分如きを覚えていただいて! 光栄であります!」

「それは良いですから。何を見つけたんですか?」


 大体貴方のような、濃いキャラ。

 一度見たら忘れないだろうに……。


「ゴムを発見しました! 物凄く巨大なものです!」

「確かに。バカでかいと言いたい、輪ゴムですね」


 輪ゴムは、炎の影響を受けていない。

 これほどの大きさなのに。どうしてだろう?

 いや。そもそも。教会にこんなものが?


 教会にに使わないものと言えば。もう一つ気になるものがある。

 それは部屋の端に置かれた鎧だ。

 金色で塗装された、鎧と兜は。装着すれば全身を覆いつくすだろう。


「あ。それは触れてはいけませんよ。天罰が下りますから」


 鎧に近づく僕を、アリス様が止めた。


「なんですか? 天罰って……」

「この鎧には、神の力が宿っていると言われています」

「はぁ……。神器と言うやつですか……」


 噂には聞いたことがある。神器には、強力な力が込められていると。

 でもそれは、ただ強いだけの武器だ。

 本当に神の力なんて、宿っていない。


「勿論私は信じていませんが。この村は信仰心が強いですからね……」

「村人は殆ど信じていたのですか?」

「ええ。ですから教会に捧げられ。誰も近づこうとしないのですよ」


 教会に出入りするほどの者なら。鎧に触ることは絶対にないか。

 祀られている割には。ちょっとだけ、動かされた形跡があるんだよなぁ……。

 話が拗れそうだから。このことは黙っておくか……。


「それと。現場には魔法が使われた痕跡があるな……」


 残留魔法が残っている。濃さから言って。

 使われたのは一時間ほど前だ。

 属性は風属性と、闇属性か。


 闇属性は幻影など、視界をコントロールする力。

 風属性は風など、気体をコントロールする力が出せる。

 幻の再現度や気体の細かさによって。魔法の難しさも変わる。


「アリス様。天気予報ってこちらにもありますか?」

「ええ。予測士が居ます。彼らが次の日の天気を、村人に知らせるのです」

「もしかして、今日の予報は。晴れの予報じゃなかったですか?」


 大きく開かれた、アリス様の目で。答えを聞かなくても分かった。


「もう答えが分かったのですか?」

「なんとなくだけどね……」


 雷も雨も、人工的に作られたものだろう。

 だからどちらも局所的に、発生したんだ。

 問題は、誰が行ったのか? それが分からないと意味がない。


「大体現場で調べられることは、これくらいか……」


 僕はもう一度。死体の事を観察した。

 体格や髪の色。ペンダントから。ワンダさんだと、言えなくもない。

 でも逆に言えば。彼女だと証明出来るのは、その三つしかない。


「坊主。もう良いか? そろそろ遺体を、解剖したい」

「はい。大丈夫です。調査させていただき、ありがとうございます」


 僕は頭を下げて、ルナティックさんにお礼を言った。

 皮肉だな。エルフもドワーフも。騎士団は僕を追い出したのに。

 一週間前に和平が結ばれたばかりの人界騎士が。捜査に協力的だなんて。


「ユウ。次はどこを調べようか?」

「来た道を引き返しましょう」

「ええ!? まさか放り投げて、逃げるの!?」

「いやいや! そんなこと、しませんよ!」


 分かってて言われたようだ。ルシェ様は悪戯っぽく笑った。

 僕は肩を落として、溜息を吐く。

 最近ルシェ様にからかわれること、増えてきたなぁ……。


「手がかりあるんだよね? 私達が村に来たルートに」

「はい。走っていたから、ロクに調べられませんでしたけど……」


 僕達が通ったのは。綺麗な小川が流れる、森の中と。

 山に出来た洞窟だ。洞窟を抜けると、国境を超える。

 その先には魔界が広がっているのだ。


「……」

「どうしたの? ユウ……」


 僕は嫌な推理をした。生まれて初めて、推理が外れて欲しいと願っている。

 でももし森や洞窟で、手がかりが見つかれば……。

 この事件は根底から、ひっくり返る事となる。

 でもその前に僕には、必要な情報があった。


「ルナティックさん。話していただけますか? 僕を呼んだ理由を」

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