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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第3章 ドワーフ屋敷事件
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第9話 推理議論クライマックス~事件の全貌~

「これが全ての真相だ!」


 僕は改めて、事件の事を振り返った。


「犯人はまず。事前に屋敷に侵入していた」


 トリックを仕掛けるには。事前に屋敷に居る事が不可欠。

 

「コーヒーを出される事を予測して。前もってカップに睡眠薬を入れたんだ」


 恐らく客人用のマグカップは決まっていた。

 だから以前勤めていた犯人は。使われるマグカップが分かったんだ。


「睡眠薬を眠らない量、仕込み」


 全員が眠ったら、トリックの意味がない。

 怪しまれない様、眠らない様調整したんだ。


「ルシェ様と被害者の席に。眠気を強めるハーブを塗ったんだ」


 誰がどこに座るか、決まっていた。


「睡眠薬とハーブを擦った二人は。他の者より症状が重く出て……」


 ルシェ様にいたっては、会談中に体調が悪くなった。

 それだけハーブの効き目が強かったという事だ。


「昏睡状態に陥ってしまった」


 被害者は中庭で。ルシェ様は現場で意識を失ったのだろう。


「この時、ルシェ様は赤い看板が、救護室だと知らされていた」


 分かり易いように、色で教えてくれたのだろうけど。

 シェイプさんの言葉は、犯人に利用されたんだ。


「ルシェ様は意識が朦朧としていたから。看板の文字は読めなかったはずだ」


 僕も会談後、視界がぼやけたから分かる。

 ルシェ様は色だけで、部屋を判別したんだ。


「多分犯人は、看板を入れ替えていたんだ。その結果、ルシェ様は自分の意思で現場に入った」


 そこを目撃されたうえ、現場で意識を失ったのだ。

 犯人は最初から、ルシェ様に罪を着せるつもりだった。


「しかも犯人は。二人の隣に座った。僕と大統領もハーブを吸うと計算していた」


 吸った量は二人より、少量だったはず。

 だから僕達は、遅れて症状が出たんだ。


「僕は救護室で。大統領は執務室で。それぞれ意識を失った」


 この時僕が現場の隣に居る事も、犯人は計算していた。

 第一発見者にすることで、犯行時刻を狭めたんだ。


「大統領が眠ったのを確認すると。滑車を使って、被害者を執務室の中へ入れた」


 この時使ったロープと鉄球は。回収しているはずだ。

 後で使うのだから。


「犯人自身も窓から執務室に侵入し」


 この時は普通にロープで登ったはず。

 ドワーフは力持ちなうえ、犯人は職人だ。

 腕力には自信がある。


「非常口から、被害者を現場に落とした」


 先ほどのロープが括られたままだから。

 被害者の死体は音がしないよう、ゆっくり降ろされた。


「鉄球をパイプに欠けて。非常口に剣を固定した」


 非常口を閉じた直後に、犯行が行われたはずだ。


「この時、現場は既に犯人の手で。細工が施された居たんだ」


 密室を作るトリックは、もっと前から仕込まれていたのだろう。


「つっかえる様に本が並べられ。その先のダストボックスまで繋がっていた」


 このせいで、僕達は鍵がかかっていると錯覚した。


「犯人は二階でジャンプすると。二階の床。つまり現場の天井が振動したんだ」


 ジャンプした音がすれば、気づかれるだろうけど。

 警備を過信していたシェイプさんは。

 中に誰も居ないと思い込んだ。


「この振動で鉄球がパイプから外れ。落下した」


 恐らく犯人は軽い振動でも外れる様に。

 甘めに鉄球を挟んでいたはずだ。


「鉄球が落ちた事で。滑車の原理で被害者が非常口のドアへ」


 本来なら持ち運べる鉄球の重さが足りないけど。

 エルフ族は軽い種族。重さは十分だ。


「非常口に仕掛けられた。そのまま背中に刺さったんだ」


 被害者は即死じゃなかったけど。

 まだ意識がないかったから。振り向いた形跡がなかったんだ。


「普通なら天井の血で気付けるけど。犯人は血痕を吸い取れる布を使ったんだ」


 ハーブと同じく、親方の工房で作られたアイテム。

 犯人はそれを悪用した。


「被害者を殺害した後。再び非常口を開けた犯人は……」


 もう一度ジャンプしたら、気づかれると思った。

 だから犯人は、剣を素手で取り外せる。

 非常口に固定していたのだ。


「道具を使って、紐を燃やし。被害者と剣を地面に落とした」


 被害者の上にあった燃えカス。

 アレはロープを燃やした形跡だろう。


「全てを終えた後。犯人はそのまま窓から逃走」


 入口をシェイプさんが見張っている以上。

 窓からしか出ることは出来ない。


「三時に飛び出す鳩時計を利用して。鉄球を転がした」


 本を開いてい居れば。鉄球が左右に動かない。

 

「そのまま鉄球はダストボックスへ。そこから落下する音に、僕は気が付いた」


 僕が目覚める時間を逆算して。

 三時に鉄球が落ちる様に、セッティングした。


「その音を聞いて飛び出した僕は。現場でルナティックさんと合流」


 この時扉をいくら押しても開かなかった。

 音のせいで焦った僕らは、鍵の有無を確認しなかった。


「僕達は体当たりで無理や扉を開けた」


 いくらつっかえていたとはいえ。本だ。

 少し強い力を与えれば、ばらける。


「その結果。敷き詰められた本がバラバラになった」


 そのせいで密室の原因と、鉄球の移動を隠した。

 

「犯人は本の散らばりを誤魔化すため。事前に他の者も荒らしていたんだ」


 部屋が荒れていれば。本の散らばりは目立たない。

 犯人はそこまで考えて、準備していた。


「こうして犯人は。現場に入ることなく、被害者を殺害したんだ」


 僕は最後に。力いっぱいの人差し指で、犯人を指した。


「そうだよね? この事件の犯人。ドワーフ工房のチイさん!」


 犯人。チイさんは突きつけられた人差し指に。

 仰け反ったような反応を見せた。


「そんな……。僕の仕掛けが暴かれた……?」


 チイさんはハンマーと釘を取り出した。

 その場で木材を掘り始める。


「違う! 僕は天才なんだ! 才能があるんだ!」


 木彫りを始めるチイさん。

 無茶苦茶な動きで、木材は形にならない。


「僕の仕掛けを暴けるはずが……。こんな……!」


 チイさんはハンマーを。力いっぱい振り下ろした。

 釘に当たった反動で、ハンマーは飛び跳ねる。

 そのままチイさんの頭に直撃。彼は体をふらつかせた。


「畜生……!」


 チイさんは反論が出来なくなり。その場で膝をついた。


「なんでだよ……。なんでルシェ様に罪を着せようとしたんだよ! チイさん!」


 僕は詰め寄るような形で。チイさんに近づいた。


「それは彼女が上流階級だからだ!」

「なんだって?」

「お前達上の者いつもそうだ! 敗者の気持ちなど、分かりはしない!」


 狂ったような笑みを向ける、チイさん。


「僕の父は。上流階級の者に。見世物にされて殺されたんだからな!」

「なっ……。そんなことまで……」

「だから僕は格差社会を許さない……! それを作るエリートを許さない!」


 チイさんの動機は、単純な社会正義だけじゃなかった。

 上流階級への強い憎悪。それが殺エルフに至らせたんだ。


「どうやって。ソウヤさんの告発文を知ったんだ?」

「前の事件の後。僕はソウヤを付けてみたんだ」


 船の事件の時。二人は一緒に居たな。


「そこで魔王とコソコソ話しているのを聞いたのさ」


 そうやって。告発文の存在を知ったのか。

 何てことだ……。今回だけは。主謀者は何も関与していない。

 僕が真実を暴き出したせいで引き起こした事件なんだ……!


「良いか? ユウキ! よく覚えて置け!」


 邪悪な表情を向けながら、チイさんは僕に告げる。


「真実はいつも美しいとは限らないんだよ! 時に残酷で。殺害の動機にもなりえるんだよ!」

「……っ!」

「お前が今回暴いた真実で。また誰かが犯罪を犯すかもな!」


 そうだ。彼を逮捕するには、必ず動機が必要になる。

 そうなれば今の大統領は退任するだろう。でも……。

 

「罪の上に築かれた平和なんて。脆く崩れやすいものだよ」


 僕は彼らの正義を否定した。その一言が余程効いたのか。

 チイさんは狂ったように、雄たけびを上げた。


「ユ……。ぎゃああああ!」


 こうして、事件の真相は暴かれた。

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