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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第3章 ドワーフ屋敷事件
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第8話 推理議論終盤~明かされた真実~

「ちょっと待て! なんでチイが犯人になるんだ!?」


 告発に、本人より先に反応する親方。

 可愛い弟子が疑われたのだから、無理もない。

 でも彼しかいないんだ。犯人になりえる人物は。


「彼なら、親方の工房にある道具を持ち出せます」

「確かにハーブも、布もうちの製品だが……」

「その条件に合い。アリバイがないのは、チイさんだけなんです!」


 僕だって、出来る事なら信じたくない!

 前の事件で協力してくれた、チイさんが犯人だなんて。

 でも。真実なんだ。彼がルシェ様に罪を着せようとした!


「屋敷に詳しい奴が犯人だろ? チイは今日初めてここに来たんだぞ!」

「それは違いますよ。良く知っていると思いますよ」


 僕はチイさんに向けて、再び人差し指を突きつけた。


「衛兵やシェイプさんから逃げ切った貴方は、屋敷の構造を熟知しているはずです」


 そもそも屋敷への侵入自体。構造に詳しい必要がある。

 親方達が入れたのも、チイさんの手引きがあったからだろう。

 

「た、確かにチイは上手い事、隠れる場所を見つけてくれたけどよ……」

「貴方は元々この屋敷の者だ! 何らかの理由で、親方の工房へ移動んでしょうけど」

「……。ああそうだよ。どうせシェイプさんが、知っているから白状するけど……」


 初めて発言をするチイさん。その表情は、今までの面影を消している。

 大人しそうな雰囲気が一転。自身に満ちた、見下したような顔になる。


「僕は一年前まで、この屋敷で働いていた」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」


 親方は必至で、反論を続ける。気持ちは分かる。

 僕だってルシェ様を疑われたらそんな反応をするだろう。


「チイには動機がねえ! 被害者はムカつく野郎だが……。殺すほどの動機は……」

「あるんですよ。チイさんには、被害者を殺さなければならない理由がね……」


 この告発には勇気がいる事だ。ドワーフの国が、変わりかねない。

 でも僕は真実を見つけると誓った。それが探偵の役目なのだから。


「口封じなんですよね? 告発文への」


 ソウヤさんは告発文を書こうとしていた。

 それは自分の罪と向き合った証拠だ。

 でもそれが。ある者達に不利益を与えてしまう代物だったんだ。


「その告発文には……。大統領の、過去の罪が書かれているはずです」

「大統領の過去の罪だと……?」

「大統領。貴方は十二年前の、コン家没落事件に一枚噛んでいますね?」


 あの事件は、エルフとドワーフの国境で起きた。

 判事をドワーフ族が、務めていたはずだ。


「貴方はあの事件で、判事を務めた。鉱石の独占と引き換えにね……」

「お、おい! その鉱石ってまさか……!」

「はい。酸素ボンベの材料となり、大統領をのし上がらせた物です」


 大統領は国のトップに立つために。悪魔と契約したんだ。

 十二年前に判事となり、わざと真実を覆い隠した。

 その見返りとして、悪魔は彼に鉱石を独占させたんだ。


「その受け渡しを行っていたのが。被害者のソウヤさんですよ」


 多分彼は上から命令されただけで、何も知らなかったはずだ。

 でも昨日の事件で、十二年前の真相が暴かれた。

 だから彼は、大統領を疑い。告発文を書こうと決心したんだ。


 僕が真実を暴き出したばかりに、彼は殺されたんだ。

 ソウヤさんの心を変えたばっかりに!


「告発文が世に出れば。政権は変わります……」


 現在の大統領は異例の経歴を持つ。貧困街の出身だ。

 貧しい者の暮らしが分かるからこそ、支援を続けていたのだろう。

 でも本来大統領になれる存在は。生まれながらのエリートなのだ。


「貴方は貧困層への支援を打ち切らせないために。告発文を握りつぶしたんだ」

「……。大統領がトップになるまで。この国の格差は、それは酷いものだった」


 チイさんは俯き、目線を隠しながら語り始める。


「生まれ持った家系が全て。教育を受けられる者が裕福になり。負け犬はゴミを漁って生きる」


 僕は昔のドワーフの国が、どんな状況だったか知らない。

 でもそこまで格差がある社会だったのか……。


「だが大統領は、この国を変えてくれた。僕達全員に、チャンスがある国にしてくれたんだ!」


 かつて貧困街だった場所。そこが活気づいた様子から分かる。

 今の大統領は、本気で格差社会の撲滅を図ったのだ。

 そのためには、悪魔に魂を売るしか方法がなかったのだろう……。


「政権の交代が起きれば。貧困層への支援はなくなる。また格差社会が来る」


 チイさんは顔を上げて、僕を睨んだ。

 

「君は部外者だから。あの地獄を知らないから、好きな事を言えるんだ!」

「分かるさ! 僕だって……。力が全ての悪魔族の中で、力なき者として生まれたから!」


 悪魔族と言う種族は、力があるものが権威を振るえる。

 僕みたいな力なき者は、欠落者として生き物とすら扱われない。

 僕にはそれを救ってくれる魔物が居た。彼にとって、それが大統領なのだろう。


「だからって! 真実を隠して、他者に罪を着せて良い理由にならない!」


 僕は気が付けば、頭に熱が入るような感覚にとらわれた。

 考えた言葉が、自然と叫び声として出てくる。


「どんな理由があっても……。生物は犯した罪から逃げちゃいけないんだ!」


 今回の真実を暴くことは、僕にとって罪になるだろう。

 貧困層の生活を無茶苦茶にした、魔界の悪魔として。

 でも僕は探偵として。真実を暴いた後に不幸にした者の事を、忘れない!


「認めない……」


 歯ぎしりをしながら、声が掠れているチイさん。

 その言葉と態度は、僕への憎しみを表している。


「僕は認めないぞ! 君なんかに、真実が暴けるはずがない!」


 そうだ。僕がまだ彼の動機を話しただけ。

 決定的証拠を突きつけるのはこの後だ。


「鉄球を落として、被害者を持ち上げたって? 笑わせるな!」


 鉄球がダストボックスの先にあったから、間違いない。

 問題は鉄球が落ちた時、何故音がしなかったかなんだ。


「そもそも、君の推理では。犯人は部屋に入っていないんだろ!」


 それも間違いない。もし犯人が部屋に入ったなら。

 梯子をかけないと、出られないからね。


「だったら! どうやって、鉄球をダストボックスに捨てたのさ!」


 やはりそこを突いて来るか……。


「犯人が部屋に入っていない以上! ダストボックスから、鉄球を捨てることは不可能!」

「それは違う! 犯人は鉄球の移動も、部屋に入らずに行ったんだ!」


 犯人は事前に部屋に仕掛けをしていた。

 鉄球を転がす事も、仕掛けられたはずだ!


「ダストボックスは扉の反対側にあった! 扉は本がつっかえて開かなかった!」


 あの並べられた本は、ただ密室を作るだけが目的じゃなった!


「本を開いて置けば……。本の上に落ちた鉄球が、ダストボックスまで転がっていく!」


 それだけじゃない。分厚い本がクッションになって、音を軽減するんだ!

 犯人は全てを計算に入れたうえで。密室のトリックを使ったんだ。


「だがどうやって、鉄球を転がした!? 犯人は部屋に入っていないから、転がせない!」


 僕が起きた時、何かが三階ほどなった音が聞こえた。

 それと同時に、落下音の様なものが聞こえて。

 僕は慌てて、隣の部屋の確認に向かったんだ。


「鳩時計だよ! 時計から飛び出す、鳩を使って! 鉄球を遠隔で移動させたんだ!」

「ぐっ!」


 これも親方が紹介してくれた、商品の一つだった。

 三時になれば、鳩が飛び出して。三回ほど鳴く仕掛けだったはずだ。

 聞いた音の数も、三回。辻褄が合う。


「貴方は現場から離れた後。三時に自動的に鉄球が動く仕組みを作った!」


 時間を指定したのは、死亡時刻を調整するためだろう。

 鉄球が落ちる音がすれば、必然的に確認しようと人が集まる。

 死亡推定時刻が伸びるほど。チイさんにとって不都合だったはず。


「貴方は僕が昏睡状態になり。救護室で倒れる事も、想定していた」


 薬の量とハーブの効果から。意識が戻るまでも逆算出来たはず。

 

「そして僕が起き上がる時刻に。鉄球が落ちて部屋を確認するよう、仕向けたのです!」

「ぐっ! こんな……」

「もう終わりにしよう……。チイさん」


 彼の気持ちは良く分かる。この真実が、何をしてしまうのかも。

 でも僕は、真実を突きつける!


「最後に僕が事件を振り返って! 貴方の犯行を全て明らかにする!」

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