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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第3章 ドワーフ屋敷事件
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第5話 捜査終盤~執務室と深まる謎~

「貴方シェイプさんですよね? お話を聞かせてもらっても良いですか?」


 僕は食堂で片づけをしている、執事に声をかけた。

 本当は事件後の現場周辺で、物に触っちゃいけないんだけど。

 人界の守護隊が見ているから、大丈夫なのだろう。


「はい。なんでございましょうか?」

「大統領から、詳しい話を貴方から聞けと言われまして……」

「ふむ。私で良ければ、話をしましょう」


 僕はシェイプさんの服装を、観察した。

 一切シワの無い、綺麗に整ったスーツだ。

 ヒゲにも貫禄があり、どこか隙のなさそうな人物に思える。


「とは言え、私に話せる事があるか……。私は大統領の執務室前に居ましたから」

「執務室の前ですか……。誰か執務室に入った者は?」

「いませんな。少なくとも、屋敷内の扉からは」


 外から窓を通じて、通って来た可能性はあるという事か……。

 大統領は睡眠薬で、眠らされていた。

 ちょっとやそっとでは起きない。僕自身が証明だ。


「それから、屋敷をチョロチョロする者に、説教をしていました」

「屋敷をチョロチョロする者?」


 それって怪しい人物ではないだろうか?

 これはかなり有益な証言が、期待できそうだ。


「職人ドワーフが、"坊主が会えるのに、何故俺が大統領に会えない!"と申していましたので」


 ……。親方だな。期待した僕が、バカだったみたいだ。

 

「更に弟子の方が、脇目を抜けて屋敷を駆けまわっていたようです」


 チイさんの事か。あの人そそっかしいからなら。

 ふむ。親方達も、この屋敷に来ていたのか。


「弟子の方は逃げられましたが。親分のアリバイは証明出来ます」


 これってつまり。自分にもアリバイがあると言いたいわけだな。

 死亡推定時刻に部屋に入ったのはルシェ様のみ。

 もう一つの出入口、非常口はシェイプさんが見張っていた。


 でも屋敷の外から侵入した場合、気づかれないか。

 大統領が何も言わないってことは、窓ガラスが割られたりはしていないだろう。


「窓ガラスの鍵なら、開いていたようですね」

「えぇ……。そんな不用心な」


 大統領が住んでいる屋敷なのだけど。


「外には見張りが居ます故。ここまで侵入できる者はいませんので」

「でも親方達の侵入を許していますよね」

「……。ふむ。警備兵にきつく言わなくては」


 余計な事を言っちゃったかな?

 とにかく彼から聞ける情報はこのくらいだろう。

 不利な証言もあったけど。有意義な証言もあった。


「どうですかな? この老いぼれは、役に立ちましたか?」

「はい。とても」


 窓からなら誰でも侵入可能か……。

 このことを熟知している者なら、執務室に侵入できる。

 そこから現場を出入りすることは、可能なはずだ。


 問題は被害者を持って、どうやって二階まで登ったかだな。

 被害者は意識を失っていただろうし。

 引きずりでもしたら、目立つだろう。


「あぁ。そうだ。もう一つ言い忘れた事がありました」


 立ち去ろうとする僕らを、シェイプさんが引き留めた。


「実は執務室から、ドワーフがジャンプした音が聞こえました」

「え? それって、揺れちゃうんじゃないですか?」

「ええ。少なくとも、床はかなり振動したでしょう」


 床が振動したってことは、現場の天井が振動したってことだよな?

 何か意図があるのか。もしかしたら、天井に……。


「ユウキ。何か分かったのですか?」

「うん。犯行時、現場は完全な密室ではなかったんだ」


 上の階からなら出入り可能だ。でも下の階に降りるには、梯子を下す必要がある。

 さっき聞いた話だと、梯子を落とす際凄い音が聞こえるようだ。

 そんなことをすれば、外の者が気づくらしい。


「う~ん。結局犯人は、あの非常口を通れないですね……」

「梯子を落とすやり方ならね……」


 安全に下りてかつ、上に戻る方法は。

 何も梯子を掛けるだけじゃない。

 ロープか何かを巻きつけて、滑り落ちる事もできるはずだ。


「それに犯人は、天井を揺らす必要があった。天井に何か仕掛けがあったってことだよ」


 天井にはパイプが通っていたな。

 あの時は深く考えなかったけど。仕掛けを施せるのはそこだ。

 そう言えばあの鉄パイプ。非常口のすぐ傍にあったような……。


「坊主。色々考えている所悪いが……。そろそろ限界みたいだぜ」


 僕は考えるのに夢中で、全く気付かなかったが。

 外が騒がしくなっている。どうやら騎士団が来たようだ。

 衛兵だけじゃなく、騎士団も足止めすることは不可能だ。


 ルシェ様が連れていかれる前に、彼女以外に犯行が可能な事を証明しないと。

 大丈夫。今まで見つけた証拠の中に、ヒントはちゃんとあるんだ。


「行きましょうか。アリス様。出来れば今回も、仕切ってくれると有り難いんですけど」

「ほう。お前に頼られるとは。良いでしょう」


 アリス様、頼られて少し誇らしげだ。

 単純なひとだなぁ。なんて顔に出したら、また切られそうだ。

 アレを食らうのはもう勘弁なので、僕は何を口にせず衛兵のもとに向かった。


 衛兵が集まっている場所には、それを足止めする魔王様と。

 衛兵を沈めようとしている、ドワーフ大統領が居た。

 更に僕達についてくるように、ルナティックさんとシェイプさんも。


「って……。何で居るんですか? 親方……」

「おう! 坊主! チイと一緒にちょっと、見学にな」

「ちょっとで侵入できる場所じゃないでしょ……」

 

 前の事件の時も思ったけど、大胆なドワーフだなぁ。

 酸素ボンベなんて作れるから、凄い存在なんだろうけど。

 その態度からは、まるで凄さを感じない。


「でも感謝しろよな。嬢ちゃんが連れていかれないよう、俺も足止めしたんだから」

「そうなんですか……。それはありがとうございます」

「おう。あの嬢ちゃん、かなり不安そうだ。でもお前を信じている」


 殺エルフ犯として疑われているんだ。それは不安だろう。

 でも僕を信じて、態度に出さないようにしているようだ。

 だったら僕も、その期待に応えてみせる!


 この場所で真実を明らかにして、犯人を問い詰めるんだ!

 今まで通り、議論で流れを変えて見せる。


「ユウキ。準備は良いですか?」


 アリス様が大声で、注目を集める用意をした。

 僕は頷いて答える。大丈夫だと。

 

「聞きなさい! この場は私! アリスが仕切ります!」


 全員の注目が僕達に、集まる。


「これより犯人が誰かの議論を、開始したいと思います!」

「考える余地もねえ! 魔王の娘が犯人だ!」

「反論があるなら、感情ではなく論証で答えなさい!」


 アリス様に剣を向けられたうえ、睨まれるドワーフの衛兵。

 隣に居るだけでも凄い迫力だ。僕も怯むほどだった。


「しっかりしなさい。お前が情けないと、彼女が不安がるでしょう」

「え、ええ。そうですね……。やってやります!」


 正直な所、今回の事件は殆ど何も分かっていない。

 何故被害者は無抵抗で、背中を刺されていたのか?

 部屋に荒らされた形跡がある理由は?


 被害者はどうやって、現場に入ったのか?

 そして、犯人は誰なのか?


「もう一度、分かっている情報をおさらいしよう」


 現場には本が大量に散らばっていた。

 更には円柱の積み木と、割れた木の板。

 天井にはパイプが通っており、大統領の執務室に繋がる非常口もある。


 コーヒーには睡眠薬が混入されていたが、眠るほどの量じゃない。

 シェイプさんが言うには、屋敷の中から執務室に入った者はいない。

 執務室から、誰かがジャンプした音が聞こえてきたとのこと。


 ダストボックスで見つかった、重たい鉄球。

 間違いなく、現場から落ちたものだ。

 最後に被害者を囲むように、前後につけられた布。


「やってやるさ! ルシェ様のためにも!」

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