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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第3章 ドワーフ屋敷事件
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第2話 事件発生

 薄れていた意識が覚醒した。隣の部屋で音が鳴る。

 三回ほど音が鳴った後、僕はベッドから起き上がった。

 壁の時計を確認する。午後三時を回っている。


 いつの間にか一時間近くの時間が経過していた。

 すっかり疲れが引いたのか、ぼやけた頭がハッキリしていく。

 

「そう言えば、ルシェ様は?」


 僕が意識を失いかける前。ルシェ様が居ない事に気が付いた。

 彼女は先に救護室で、休んでいるはずだが……。

 僕が立ち上がりながら、冷静に思い出そうとしていると。


 隣の部屋で大きなもの音が聞こえた。

 まるで何かが落ちるような。それも結構な重量のものが……。

 僕は嫌な気配を感じて、応接室から飛び出した。


 隣の部屋には青い看板で、赤い字で客室と書かれている。

 僕と同じ音を聞いて駆け付けたのか。

 既にアリス様とルナティックさんも、部屋の前に来ていた。


「坊主! ちょっと手伝ってくれ!」

「どうしたんですか?」

「部屋に鍵がかかっているのか、開かねえんだ! 扉をぶち破るぞ!」


 ただ物音が聞こえただけなのだが、僕にも嫌な予感がした。

 ルナティックさん達と協力して、扉に体当たりする。

 何度目かの体当たりの後に、扉は勢いよく開いた。


 僕達は勢いあまって、部屋の中で転倒する。

 その結果、近くにあった物をばら撒いた。

 

「痛てて……。これは、本か?」


 本が部屋中に散乱している。荒らされた跡のようだ。

 本だけじゃない。部屋は争った後の様に、荒れている。

 しかも……。部屋の中央にはとんでもないものが……。


「え……?」


 死体だ。背後から剣で貫かれて、明らかに死亡している。

 前後を布で包まれて、表情を崩さずに目を瞑っていた。

 

「ソウヤさん……?」


 僕が死体に気が付くと同時に、彼女の存在が視界に入った。

 彼女は呆然と立ち尽くしながら、死体をジッと見つめている。

 

「ルシェ様……? これは一体……」

「わ、分かんない……。目が覚めたら……」


 ルシェ様の手には、血痕が付着していた。

 彼女自身何が起きたのか、全く分かっていないようすだった。


「坊主。騒ぎを起こすな。今の音を聞いて、遅かれ早かれ、ドワーフの兵隊が来る」


 その通りだ。一旦冷静になるんだ。

 この状況で最も疑わしいのは誰なのかを考える。

 ルシェ様になる。何せ開かない扉の向こう側に居て。手に血が付着しているのだから。


「俺が出来るだけ引き伸ばして、他の者を呼ぶ。お前がすべき事、分かるな?」

「は、はい……。やってみます」


 僕がすべきことは、ただ一つ。探偵としてこの事件を解く事だ。

 恐らくドワーフの兵隊が来たら、現場は封鎖される。

 捜査権のない僕は、締め出されるだろう。


 そうなれば現場を調べる事は、出来なくなる。

 今のうちに調べられる所だけで、調べておかないと……。

 

「一つアドバイスですが。彼女はこのまま人目に晒した方が良いかと」


 残ったアリス様が、僕に語り掛けてきた。


「隠れると却って怪しまれます。連行前に真実を暴けば良いだけの話です」

「そ、そうですね。ルシェ様。申し訳ありませんが、少し待っていただけますか?」

「う、うん……。この状況じゃ、私が疑われても仕方ないね……」


 何かトリックがあるはずだ。現場の状況を確認して、それを暴こう。

 真っ先に確認すべきは、死体の状況だな。


「剣で一刺しの死体なんて、初めてだ」

「情けない声出すんじゃありません。しっかり調べる!」


 アリス様に発破かけられ、僕は死体の状況を確認した。

 背後から剣で一刺し。これが死因で間違いない。

 他に外傷らしきものが見当たらない。抵抗した様子も。


「妙だ……。これだけ部屋が荒らされているのに、争った形跡がない」


 激しい争いがあったら、必ず服や体に痕跡が付く。

 だがソウヤさんには、それらしきものが見当たらなかった。


「この傷からして、即死じゃないのに。首が曲げられた様子もない……」

「ふむ。確かに背後から刺されたにせよ、犯人の顔を確認しようとするのが心理ですよね?」

「はい。被害者は刺された時から、ずっと前を向いていた事になります」


 それに、剣で刺された割には、穏やかな死に顔だ。

 苦悶の表情を浮かべた様子は一切ない。


「もしかしたら、被害者は意識を失った状態で刺されたのかも……」

「と言うか。そうとしか考えられませんね」


 他に外傷がない。となると、睡眠薬でも飲まされたのかな?

 確かソウヤさんは商談の席に居たはずだ。

 途中から一言も話さなくなったけど。あの時の料理にでも、睡眠薬が?


「それにしても、なんでしょうか? この布は?」

「見覚えがありますね。それもつい最近」


 確か親方の店で、交わされた布があったはずだ。

 僕は懐から布を取り出して、比べてみた。


「間違いない。血痕さえも吸収する、新製品の布ですよ」

「ふむ。確かにこの遺体。刺された割りには、血が飛び散っていませんね」


 布にしか血痕が付着しいない。この布が全て吸い取ったのだろう。


「ですが何のために? 肝心の死体が隠れなければ、血を拭きとる意味もありませんよ?」


 確かに。それも前後に布が敷いてあることが、気になるな。

 

「ん? なんだ、この燃えカスは……」


 被害者の背中に何かが燃えた跡があった。

 残留魔力が部屋にないから、多分道具で燃やされたのだろう。

 でも一体何を燃やしたんだ? 被害者は刺殺なのに。


「遺体の傍で分かることは、これくらいか……」

「ではさっさと次に移りましょう。時間がないのですよ」


 僕は部屋の中を見渡した。気になるものがないか、隅々まで調べる。


「天井に手すりのようなものが……」

「アレはパイプですね。空気の流れを作る物です」


 この部屋には出口に当たる部分が見当たらない。

 恐らく通り道なのだろう。

 出口があれば、他の部屋からでも干渉できるのだが……。


「アリス様。天井の四角いマークはなんでしょうか?」

「アレは非常口ですね。二階で異常が起きた時、あそこが開いて梯子を下して逃げ出すのです」


 なるほど。あの場所からなら、部屋の中に干渉できる。

 っと思ったけど、梯子を落とすなら結構な音がするよな。

 隣の部屋に居た僕が気づくはずだ。そんな音はしなかった。


「なんか大きな、円柱がありますね」

「それは積み木ですね。子供が遊ぶおもちゃです」


 子供が遊ぶものか。なんでこんなところに、置いてあるんだ。

 大きさは結構なもので、経たせれば人間の赤ん坊くらいはあるだろう。

 それが横向きで転がっている。


 積み木の傍には、割れた板の様なものが落ちている。

 何か重い物を上から叩きつけたような、割られ方だ。


「ん? アレはダストボックスか?」


 僕は部屋の隅にある、鉄の扉に気が付いた。

 ダストボックスは下の階にある、ゴミ処理施設に繋がっている。

 

「ここから犯人が逃げた可能性は……」

「この大きさだと、人界の子供も通れませんよ?」

「ないかぁ……」


 でもなんだか気になるな。後でこの下に向かってみるか。

 それにしても犯人は、何故こんなに部屋を荒らしたんだ。

 一体何を隠したと言うのだろうか?


「考えている所悪いですが、時間切れのようです」


 アリス様の言葉と共に、大きな足音が近づいてきた。


「ドワーフは重いですからね。ジャンプすれば、床が振動するみたいです」

「そこまでなんだ……。知らなかった」


 まあおかげで、足音が近づいてきたのが分かった。

 現場で調べられるようなことは、このくらいだろう。


「それで。魔王の娘さんを助ける手がかりは見つけましたか?」

「いや……。それがまだ……」


 ただ一つハッキリ言えるのは。

 この状況、僕にとってとんでもなく不利だという事だけだった。

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