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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
プロローグ 悪魔と死神と探偵と
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第3話 捜査中盤~現場の状況~

 被害者が溺死した現場の、捜査が続く。

 僕は被害者の情報を、ホソさんから与えられた。

 被害者はエルフ族の衛兵長。『チイ・アリーノ』。


 死因は溺死。死亡推定時刻は、午後の一時。

 人界代表に向けて、矢が放たれたのと同時刻だ。

 もし誰かに殺されたのだとしたら。


 殺害時刻と暗殺未遂の時刻が、同じ時間になる。

 暗殺未遂と溺死は関係ないのか?


「とにかく。チイさんが、他殺かどうか調べてみよう」


 被害者の死体は、捜査のために運ばれた。

 この場にはないが、捜査資料がある。

 被害者は首筋に、新しく出来た焦げ跡があったとのことだ。


 焦げ跡か……。でも湖の周りを見ても。

 炎の残留魔力は残っていない。

 じゃあこの焦げ跡はなんだ?


「ユウ! 見て! 湖に!」


 ルシェ様が湖を指した。僕は人差し指の先を見つめる。

 そこには丸太が浮かんでいる。


「ん? あれって……」

「私達が川を渡るときに使った丸太だね」


 そうなのだ。僕達は迂回する時、あの丸太を橋代わりにした。

 エルフ族の騎士、"アスハさんの提案"で。

 彼女は僕たちの道案内をしてくれた。


 あの時。僕達の目の前で、雷が発生した。

 不運にも橋が焼け焦げたせいで。僕達は迂回を余儀なくされた。

 あの時、魔法は誰も使っていないし。天気の仕業と判断されたな。


「うん! これ、あの時の丸太だよ! だって……」


 ルシェ様が魔法で、丸太を回収してくれた。

 僕は魔力がこれっぽちもないので、助かった。


「ユキが擦りむいた後が、あるもんね」


 ユキ。この場には居ないが、僕の幼馴染だ。

 彼女も今回の和平交渉に同行していた。

 確かに。迂回する時に、彼女は足元を崩して、丸太と擦れた。


 あの時居たメンバーを思い出すと。

 僕と、魔王一族。ユキと兜をかぶった暗黒騎士二人。

 それとアスハさんだけだったはずだ。


「それにしても、この丸太。なんで浮かんでるんだ?」


 僕と暗黒騎士が、二人係でも丸太を運ぶ羽目となった。

 あの時、丸太は結構な重みがあったはずだけど……。

 川に落とすなって、念入りに言われたからね。


「この丸太。もう少し調べた方が良いな」

「よいしょっと! これ軽いね。私だけでも、持ち上げられるよ」

「やっぱり。僕が運んだ時より、軽くなっていたんですね」


 僕は丸太の断面を、調べた。

 すると断面が開き、丸太の中が丸見えになる。

 中は空洞だ。"今は"何も入っていないが。


 小柄なエルフ族なら、入れそうだ。

 被害者も小柄だ。丁度この中に入れそうなくらいね。

 でもこの中に押し込められると。手足は自由に動かせないな。


「う~ん。妙だね。なんでユウ達が、流れないよう細心の注意を払ったのに……」


 ルシェ様は頭を悩ませていた。

 僕達は全員が渡りきるため、絶対に丸太を動かすなと言われた。

 だからちょっとの振動じゃ、動かない位置に置いたはずだ。

 

 でもこの丸太。移動したうえ、流されているんだよな。

 しかもあの時は。中身が空洞の割に、重かった。


「誰かが動かしたのかな? でもそんな時間、ないと思うけど……」


 この丸太で渡ったのは。さっき言ったメンバーだけだ。

 つまり丸太が川に架かっていると知っているのも。


「でも丸太は転がりますから。何かの拍子でバランスを崩すこともあります」


 そう。何かきっかけがあれば。丸太を動かせる。

 それこそ遠隔でもね。


「どうやら。他殺の証拠が集まってきたみたいだな」

「え? そうなの?」

「まだ可能性の段階ですけどね……」


 僕の捜査がひと段落着いた頃。

 ツカサさんは、まだ騎士団にぶつぶつ言っている。

 あの人は人界の代表であって、魔界の騎士団とは関連がないはずだけど。


「何度も言わせるな! これは他殺だ! さっさと被害者を解剖しろ!」

「解剖?」


 またしても聞きなれない単語に、僕は引っかかった。


「遺体を医学的に弄って、色々調べる事だね」


 ルシェ様がまた、解説をしてくれる。

 これも人族が編み出した、捜査方法なのだろうか?


「当然調べられた遺体は、無茶苦茶になるから。遺族の事を考えると……」

「事件性がないなら、避けた方が良いってことか……」


 しかもここはエルフの国で、被害者もエルフ族だ。

 人族に権限はない。解剖するのは、難しいだろう。

 それにしても、あの人はさっきから他殺に拘っているな。


 事件の関係者であることは、間違いないんだけど。

 まだこちらの手の内は明かさないでおこう。


「愚民共が! 俺が指揮すれば、全てうまくいくのだ!」

「推理を間違えた、貴方が言いますか?」


 ホソさんは嫌味を言い返しているけど。

 本当に、ツカサさんは推理を間違っていたのか?

 そもそも。彼が口にしているのは、"推理"なのか?


「行きましょうか、ルシェ様。ここで調べることは終わりました」

「そうだね。あの人の態度は、ちょっとイラつくし」


 知的生命が相手に高圧的態度を執る理由は二つ。

 相手を見下している時か。相手に敵意がある時か。

 前者の場合は自分が優れているという、自負がある時だ。


 でもツカサさんは、そのどちらでもないと僕は思う。

 まるでわざと僕達の反感を買って。

 自分の意見を、否定させようとしているような……。


「次はどこを捜査するの?」

「一度会場に戻りましょう。アスハさんも、そこに居るはずだし」


 ツカサさんが強引に移動を始めたせいで。

 彼女の話を聞くのが遅れてしまった。

 現時点でアスハさんはかなり怪しいけど……。


 彼女、会場の警備はステージの下だったはず。

 だったら暗殺未遂事件も起こせないし。

 会場の警備をしていたなら。被害者死亡時にアリバイがある。


「うぅ……。それにしても、行ったり来たりは、骨が折れるね」

「まあ……。三十分以上かかりますからね……」


 僕達は川沿いの道を歩きながら、愚痴をこぼした。

 

「まあ、川の音でも聞いて、気持ちを落ち着けよう」

「エルフが死んでいるんですけどね……」


 僕が苦笑いをしていると。あるものを見つけた。

 少し薄くなっているが、水属性の残留魔力だ。

 川のずっと脇にあったから、来るときに気付かなかった。


 それに脇のすぐそばにある道。

 僕達が迂回時に通った道じゃないか?


「なるほど。水魔法か」


 どうやら徐々にだけど。証拠同士が繋がり始めたな。

 ……。僕の予想通りなら。焼かれた橋のすぐそばに……。

 僕は駆けだして、崖の上へ一気に登った。


 想像通り! 焼かれた橋の近くに。

 何かを打ち付けた跡がある!


「そうだ。僕はとんでもない思い違いをしていた」


 僕は橋の反対側を見た。悪魔族は目が良いので。

 視力には自信がある。反対側は魔界側。

 つまり、僕達が来た方向なのだ。


 あの時、誰も魔法を使わなかったから疑わなかったけど。

 事前に仕込まれていたとしたら? 残留魔力が残っているはずだ!


「あった……! 電気の残留魔力」


 未知の隅っこに隠されていて、薄まっているけど。

 電気を操る魔法が、使われた形跡が残されていた。

 橋が焼かれる雷発生時は、誰も魔法を使わなかったけど。


 雷発生前には、誰かが魔法を使ったんだ。

 人族は魔法が仕えたとしても。大きな魔力はない。

 大きな雷を発生させるのは、魔物かエルフ族だけだ。


「どうやら。段々と真実に近づいてきたようだな」

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