第13話 推理議論終盤~最後の追及~
僕はデッカさんが犯人だと、指摘した。動機は十二年前の事件を隠す事だと。
その事件はエルフの政治家が殺害されている。
過去の裁判で、殺エルフを隠すための沈没騒動だと証明されている。
僕に犯人呼ばわりされても、デッカさんは涼しい表情だ。
一見、僕が間違えていると思いたくなるほど顔を崩さない。
「私が犯人ですか……。面白い事を言いますね」
「状況から言って、間違いないですよ」
「ですが、状況証拠だけでしょう?」
その通り。僕が証明したのは、最も容疑が強い人物の証明だ。
まだそのトリックが使われたのか。決定打に欠けている。
「決定的証拠を提示するためにも、もう一つ話し合う事があります」
「ふむ。なんでしょうか? 私が許可を出しましょう」
すっかり仕切り役のアリス様に、僕は許可をもらった。
「浮き輪が爆発した理由ですよ。これも犯人のトリックなのですから」
「ふむ。しかし、浮き輪は殺害に直接関与していませんよ?」
「関係性を明らかにするために、みんなで話し合うんです」
あの爆発はデッカさんが、意図的引き起こしたものだ。
その理由を考えれば、自ずと犯人の目的は見えてくる。
あと一歩。十二年間逃げ続けた犯人を、追い詰めてやるんだ!
「一体なぜ、浮き輪は爆発したのでしょうか?」
「そもそもなんで浮き輪を爆破したんだ?」
親方が新しい疑問を口にする。
「窒素で殺すなら。浮き輪の爆破は必要ないはずだ」
「それにタイミングも気になりますなぁ」
ここに来て、ソウヤさんと親方の息が合って来た。
タイミングと爆発した理由。これらには必然性があるはずだ。
「そもそも現場には、残留魔力がない以上。浮き輪を爆発させることは、不可能の様な……」
「いや。爆発したのは、浮き輪じゃなかったんです」
僕はソウヤさんの発言に、自分の意見をぶつけた。
「アリス様が撮った写真を見てください。ここに浮き輪が写っていますよね?」
「本当ですな……。む? ですがこれは残骸ではなく。萎んだだけに見えます」
「はい。実際浮き輪は空気が抜けて、萎んだだけなんです」
だからこの浮き輪が、爆発したんじゃないと僕は分かった。
「実はヘリウムの小型ボンベですが。ラベルが入れ替えられた、形跡があったんです」
「また入れ替えか。確かにラベルなしじゃ、見分けがつかんからな」
「恐らく中身は水素になっていたはずです。つまり浮き輪の中身は、水素だったんです」
水素はこの世界で最も軽い気体だ。
ヘリウムと同じように、ドワーフを吊るして、浮いてもおかしくない。
「犯人はただ、ボウガンか何かで浮き輪に穴を開ければいい」
「おいおい! この炎天下で、水素が一気に吹き出したら……」
「はい。空気中の酸素と結合して、一気に熱エネルギーが放出されます」
それが爆発の正体だったんだ。
つまり爆破事態は、浮き輪より少し上で起こっていた。
だから浮き輪は爆破の影響を受けず、残った状態だったんだ。
「ラベルがすり替えることが可能なエルフも。限られてきますよね?」
「本当なのかデッカ……? 本当にお前は、俺達を妨害するために……」
デッカさんを信頼していたのだろう。
親方は信じられない表情で、彼を見つめた。
「ふん。ですがそれも状況証拠。実際に中身が水素だった、証拠はない」
「ようやく口数が増えましたね」
追い詰められている証拠だ。
「ユウ。でも確かに、決定的な証拠はないよ……」
ルシェ様が不安そうに僕を見つめた。
僕は微笑んで、彼女を安心させる。
「大丈夫ですよ。あとは一連のトリックが、実際に使われたのか証明すれば良いだけです」
このトリックが実際に行われたなら。
犯行が可能なのは、デッカさん以外に居なくなる。
まだ追い詰められないのは、あくまで可能性の段階だからだ。
もう一度事件を振り返ってみよう。そこにあるはずだ。
可能性を事実に変える、決定的証拠が!
「前提として、このトリックが使われたのは間違いない」
酸素ボンベに窒素が入れられて。小型ボンベはラベルがすり替えられた。
この二つの中で、証拠が残っているとしたらどちらだ?
「酸素ボンベだろう。ラベルはいくらでも言い訳が効く」
酸素ボンベの方に何か証拠は残っていないのか?
そもそも犯人はどうやって、窒素を丁度半分入れたんだ?
漏れる事なく、窒素を入れる方法。僕は知っているはずだ。
「空気の流れを一方向にする、特殊な道具だ」
酸素ボンベに気体を入れるとき、空気の流れを制御する道具が使われた。
窒素を入れた時にも、この道具が使われたはずだ。
だとしたら、ここに決定的な証拠が残されているはず!
「特殊な道具に、窒素のノズルの成分が付着している!」
もしそうなら。間違いなく窒素ボンベが使われた事になる。
それを事前に用意できて、印を偽造出来るエルフは。
たった一人だけになるんだ!
「もう終わりにしましょうか。デッカさん。貴方は致命的なミスをした」
「なんでしょうか?」
「親方。酸素を注入する時に使った道具はどこにありますか?」
「っ!?」
あの道具を処分する事は、デッカさんには不可能だ。
船の中で処分は出来ないし。海に捨てる事も無理だからだ。
後でない事がバレれば、必ず関与が疑われるからね。
「あ、ああ。俺が今持っているが……」
「その道具に付着している、成分を調べてもらえますか?」
そこに小型ボンベの、ノズルの成分があれば証明出来る。
「ぐっ! だが実際に使われたノズルが、窒素のものとは……」
「そんなもの。窒素のボンベの残量を調べれば分かります」
いよいよデッカさんは追い詰めらえれて来たようだ。
「ドワーフは重さで、残量が分かるのですから!」
「だ、だがドワーフが嘘をつく可能性も」
「だったら、満タンの二酸化炭素のボンベと重さを比べればいい」
「ぐっ!」
空気の重さが違うから、一概に比べる事は出来ないけど。
天秤にかけて、明らかに窒素のボンベが軽ければ。
その中身が使用されたという、証拠になる。
「もうお終いです! デッカさん! 一連のトリックは、確かに仕掛けられたました!」
ノズルの成分が検出され。窒素のボンベに使われた形跡があれば。
このトリックは絶対に使われたという、証明になる。
「そして一連のトリックを仕掛けられたのは……。デッカさん! 貴方だけだ!」
「ぐっ! おおおおお!」
デッカさんは髪の毛を乱しながら、取り乱す様子を見せた。
これでトドメだ。
「最後に! 僕が事件の流れを振り替えって、全て証明して見せる!」




