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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第12話 推理議論中盤~殺害方法~

「酸素ボンベをすり替えた理由について。議論を進めていきましょうか」


 アリス様の仕切りがあるおかげで、議論がスムーズに進む。

 この事件、酸素ボンベのすり替えは不可欠だったはずだ。


「犯人は何故、酸素ボンベをすり替える必要があったのでしょうか?」

「完成品だと、困る事があったからじゃねえか?」

「でも親方。試作品と完成品では。酸素の保存容量しか違いがありませんよ」


 確かに見た目は全く一緒だった。

 試作品は空気の量が、完成品よりも少ないのか。

 でも被害者を引き上げた時、空気はまだあった。


「試作品は誰でも出入りできる場所に置いてあったぜ。なら細工は可能だろけど……」

「やっぱり、重かったのが。気になりますね……」


 チイさんはすり替えられた時に、重さが変わった事が気になるようだ。


「もしかしたら犯人は、試作品の中に何かを仕込んでいたのかも」

「僕もそう思います」


 僕はチイさんの意見に、賛成した。


「試作品には予め、半分ほど空気が入れてあったんだと思います」

「半分ほどですか……。う~ん、確かにそれなら重さに納得がいきますが……」

「全部入れてしまうと、酸素を注入する時バレてしまいますから」


 犯人は前もって、試作品に空気を入れていたのだ。

 その中身は、恐らく酸素ではなかったはずだ。


「犯人は試作品の中に、窒素を混入したのだと思います」

「窒素だと!? そんなもの、酸素ボンベから吸引すると、酸素欠乏症になってしまうぞ!」

「はい。それこそが、この事件の殺害方法だったんです」


 窒素が肺に入ると、酸素欠乏症に陥り。

 徐々に呼吸困難へとなって、最終的に窒息死する。


「完成品に前もって、窒素を仕込むことは不可能でした」

「ああ。間違いなく、厳重に保管していたぜ」

「だから犯人は、試作品に仕込みを入れて。酸素ボンベをすり替える必要があったんです」


 酸素欠乏症になると、意識が徐々に薄まっていく。

 苦しいという感覚すらなくだ。

 被害者は恐らく、眠る様に気絶して窒息死したのだろう。


「恐らく犯人が酸素を入れるスペースを残したのは。被害者に気付かれないためですよ」


 最初から窒素を吸っていたら、被害者の異変に周囲が気づく。


「なるほどね。ですが、貴方は一つ大事な事を忘れているようだ」


 ソウヤさんが、僕に反論をしてきた。


「船内に残留魔力はありませんでしたよ。どうやって、窒素を混入したというのですか?」

「魔法なんか使う必要ありませんよ。犯人は小型ボンベを使ったのですから」


 小型のボンベの中に、窒素の入ったものがあったはずだ。

 それを利用すれば、残留魔力を残すことなく窒素を入れる事が出来る。


「確かに……。それなら可能そうですね」

「納得していただけたなら、次の議論に進みましょうか」

「中々どうして。今度、わが隊に講習にでも来てもらおうかな?」


 ソウヤさんに認められたようだが、嬉しくない。

 気を取り直して、僕は議論を進める準備をした。


「次は爆発の原因について……」

「ちょっと、待ちな。今までの話を総括すると。犯人はエルフ族ってことになるよな?」


 親方が僕の仕切りを遮った。


「はい。写真のトリックが使えるのは、エルフ族だけですから」

「なら犯人は分かったも同然だ。そうだろ?」


 親方は腕を組みながら、ソウヤさんを睨んだ。


「アンタ。随分と酸素ボンベのせいにしたがっていよな?」

「なっ! わ、私は犯人ではありませんぞ!」


 親方に詰め寄られて、ソウヤさんは動揺する。


「正直無能だった事は認めます……。ですが、私は……」

「じゃあ、なんで捜査をさっさと打ち切ろうとしたんだ!? ああ!?」

「そ、それは……。その……。本部から早急に捜査を切り上げろと……」


 ソウヤさんは先ほどまでの勢いが嘘のように、しょぼくれている。

 なんというか、攻められると弱い所は似たもの同士だな。


「今、坊主が証明した! 犯人はエルフ族だと!」


 親方の言うことは間違いない。犯人はエルフ族だ。


「犯人の狙いは、酸素ボンベのせいにして。開発を中断させることだった!」


 酸素ボンベの不備を指摘すれば。販売を阻止できる。

 でもこの事件は、そんな商売上の理由で起きた訳じゃない。


「この中で酸素ボンベに疑いを向けたのは……。アンタだけだ!」

「うっ……。そ、それは……」


 その通り。エルフ族かつ、酸素ボンベのせいにして切り上げようとしたのは。

 ソウヤさんのみなんだ。でも……。


「間違いない! アンタが犯人だ!」

「それは違いますよ」


 僕は親方の意見に、反論を告げた。


「ああ!? 何が違うって言うんだ!?」

「ソウヤさんに、犯行を仕掛ける事は不可能ですよ。だって……」


 この事件の犯人は、予めあらゆる事を仕組んでいた。

 恐らくトリックが暴かれる事自体も、計算内だったはずだ。

 だからこそ、そんなに分かり易く動くはずがない。


「ソウヤさんは、小型ボンベを事前に用意できませんもの」

「……。は?」

「このトリックに窒素の小型ボンベは不可欠です。ですがそれを用意できるのは、貴方達だけなんですから」


 空気を保存するには、ドワーフだけが持つ鉱石が必要だ。

 更にそれを加工するのも、ドワーフのみが行える技術。

 エルフの騎士団に、事前に用意する手立てはない。


「おいおい! だったら、犯人は何者なんだ!? ドワーフに、写真を用意する事は」

「一人だけ居るじゃないですか。小型ボンベの存在を知る、エルフ族が」


 酸素ボンベが注入された状況を思い出すんだ。

 何故エルフ族が仕上げをする必要があったのか?


「そろそろ発言をしていただきましょうか。この事件の犯人は……」


 僕は人差し指を突き出して、その人物を指摘した。


「デッカさん。貴方なのですから!」


 僕は先ほどから黙っている、デッカさんを指した。

 間違いない。犯人はこのエルフだ。


「ば、バカな!? 何を根拠にそんなことを!?」

「親方。純度の高い空気を生成できるのが、エルフのみですよね?」


 純度が高いものじゃないと、酸素として成立しない。

 そもそも特定の気体のみを出来るのは。

 魔界でも上級魔導士のみ。でもエルフ族なら子供でもできるらしい。


「窒素の小型ボンベに、空気を入れたのは誰でしょうか?」

「た、確かにデッカだが……」

「ならデッカさんは知っていたはずです。窒素の小型ボンベが、この場にあることを」


 このトリックは前もって、考えられていたものだ。

 その場の思いつきにしては、準備が出来過ぎている。


「だがデッカは空気を入れた本人だ! すり替えなんてしなくても……」

「酸素と窒素生成は、別の魔法です。残留魔力が二つあることがバレたら、真っ先に疑われます」


 だからこそデッカさんは、すり替えなんて行ったのだ。


「で、でもよ! デッカは動機がねえぞ! アイツは酸素ボンベ開発に……」

「動機ならありますよ。内部から工作して、酸素ボンベ完成を遅らせるというね」

「バカな……。じゃ、じゃあ開発段階から、俺らは騙されていたのか……?」


 恐らくデッカさんは、酸素ボンベの完成を妨害するために、開発に参加したのだろう。

 その狙いは分かっている。


「デッカさん。貴方は十二年前に沈没した船を、調べられるわけにはいかなかった」

「……」

「何故なら十二年前。貴方自身が、船を沈めたからです」


 間違いない。十二年前、コン家没落事件の真犯人はデッカさんだ。

 しかもデッカさんが酸素ボンベ開発に参加したのは、妨害だけが理由じゃない。


「本当はこっそり完成品を盗んで。自分で海底に向かうつもりだったんでしょ?」


 すり替えを行ったのは、完成品を盗むためでもあった。

 チイさんは完成品も最初から重かったと語っていた。

 恐らく完成品の中には、既に酸素が入っているはずだ。


「貴方は十二年前、船に残した証拠品を抹消するために。今回の事件を引き起こしたんだ!」

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