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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第9話 捜査中盤~甲板の捜査~

 僕達は甲板に向かい、浮き輪爆破の調査を始めた。

 やはりと言うべきか、甲板にも残留魔力は存在しない。

 となれば、あの爆発は遠隔で行われたのではない。


 魔法意外に酸素を入れて、熱を溜める方法が存在するんだ。

 僕は空高く上る、太陽を見上げた。

 魔界と違って眩しく光、温かいというより暑い。


「海風があっても、暑いものは暑いですね……」

「私達魔物は、太陽に縁がないし。この辺りは、常に暑いからね」


 ここはドワーフとエルフ族の国境付近。

 ドワーフの国は比較的暑く、南国と呼ばれている。

 僕らは魔界の者に、この日差しは強すぎる。


 これだけ暑かったら。浮き輪の、中の温度が気になるな。

 間違いなく爆発は故意によるものだ。

 でも爆発は、海に潜ってすぐ。本来なら、十分救助が間に合うタイミングで行われた。


「甲板に出たものの。何も見つからないね」

「まあ、空回りも捜査の基本ですから」


 日差しの強さが分かっただけでも、良しとするか。

 それに残留魔力がないというのは、有益な情報だ。

 間違いなくこの船で、魔法が使われたタイミングは酸素を入れた時のみだ。


「そこの者! 今すぐ引きなさい! これよりこの場所は、国際騎士が管理する!」


 僕とルシェ様はその声を聴いて、肩をすくめた。

 船の中から階段をどしどし駆けあがる音が聞こえる。

 金髪の少女が姿を現して、剣を構えていた。


「って。お前達は……」

「どうも。アリス様」

「なんですか!? その、"うげぇ"みたいな表情は!?」

「実際、"うげぇ"っと思っていますから」


 国際騎士で妙にプライドの高い、アリス様。

 かつて僕の母と裁判で戦った、ワンダさんの娘さんらしいけど……。

 またそこら中に引っ張られるのは、ごめんだな。煩いし。


「まあ、お前達なら良いでしょう。以前の事件で、実績がありますから」

「あ。僕ら、去るんでどうぞ」

「露骨に避けようとするんじゃありません!」


 バレたか。僕は覚悟を決めて、その台詞を発する。


「何しに来たんですか? 甲板には何もないですよ?」

「調査に決まっているでしょ。海の状況を写真に収めるのです」

「写真? ああ。確か画用紙に、そっくりの描き込む奴ですか?」


 さっきルシェ様に説明された事を、僕は思い出した。

 原理は良く分からないらしいけど、凄いもののようだ。

 実際僕らは貼ってあることすら気づけないほど、そっくりなものが出来ていたのだから。


「海は刻一刻と、状況を変化させます。出来るだけ事件時の様子を保存しようと思って」

「へえ。でもエルフ族にしか、写真は出来ないのでは?」

「ふふふ。甘いですね。魔力はなくても、人界には科学があるのですよ」


 どや顔で何かを取り出す、アリス様。

 それは円柱のついた、正方形の物体だった。


「カメラと言うものよ! これがあれば、魔法がなくても写真が撮るわ!」

「そんなものが? よくできましたね」

「原理さえわかれば、人界の科学に不可能はなし!」

「じゃあその科学で、犯人を見つけてくださいよ。ジャンジャン撮影してください」


 アリス様を調子に乗らせて、僕はさっさと退散しようとした。

 多分海の様子を観察しても、何も出てこないだろう。

 事件発生から、結構時間が経過しているのだから。


「ちなみにどんな原理なんですか?」

「私達に見える色とは、光の反射。その光を検出して、同色のものを描き込むのよ」


 聞いたことがあるな。確か可視光線と言って。

 僕達に見える色は、光の長さによって変わるらしい。


「この原理を使えば、そっくりそのまま! その様子を保存することが出来るのです!」

「ちなみに。それって専用の画用紙が必要だったりとかは?」

「カメラはそうだけど。エルフ達は必要ないですね。タトゥーとかにも、使われていますよ」


 なるほど。タトゥーは掘り具合によって、微妙に違うから。

 全く同じものが描かれるのは、人気があるだろうな。

 全く同じものが、描かれるか……。


「じゃあ、アリス様。頑張って下さいね」

「ええ!? ちょっと! 見ていかないの?」

「自慢したいなら、素直に言って下さいよ」


 僕は仕方なく、アリス様の撮影とやらに付き合った。

 彼女もカメラは初めて使う様で、喜々としながら使っている。

 甲板の上から海を撮影しながら、画用紙に画像とやらを映し込んでいく。


「この中から、怪しいものがないか。探ってみますよ」

「まさか……。手伝わせるために、僕らを引き留めたんですか?」

「名誉に思いなさい。騎士の手伝いができる事を」


 だからこの人に、付き合うのは嫌だったんだ。

 とは言え、手がかりがあるならそれに越したことはない。

 何か怪しいものが移っていれば良いのだけど……。


「ん? ここに何かビニールの残骸がありますね?」


 僕は青色のビニールに気が付いた。

 確か被害者と繋がっていた浮き輪の色も、青色だったはずだ。

 写真をじっくり見てみると、その残骸は浮き輪が萎んだものだった。


 だけど萎んだだけだ。破裂した様子はない。

 あれだけの爆発があって、浮き輪が破裂しないはずがない。

 と言う事は。アレは浮き輪が爆発したんじゃなくて……。


 別のものが爆発して、そう見せかけられただけなのか?

 浮き輪そのものが爆発したんじゃないなら。見せかけの爆破の可能性がある。


「ふむ。これは大きな手掛かりではないですか?」

「ええ。正直意外でした。ちゃんと役にたって」

「そうでしょう! ……。どういう意味?」


 笑みから睨みに変えたアリス様を余所。

 僕は逃げ込むように、船の中に戻った。

 船内の捜査はこれくらいだろう。後は聞き込みをするべきだな。


 まだ騒ぎになっているようだけど。酸素ボンベが回収された所へ向かうか。

 そこなら親方やエルフの騎士団が、居るはずだ。

 僕達は騒ぎになっている場所へと向かった。


「だぁから! 酸素ボンベに問題はなかったっつてんだろ!」

「ですが被害者は、酸素が残ったままのボンベを口にして。窒息死ですよ?」


 大柄なドワーフと、エルフの騎士が言い争っている。

 多分あのドワーフが親方だろう。

 酸素ボンベは……。もうエルフの騎士団が回収した後のようだ。


「あの。少しお話……」

「てやんでぇい! これだから貧弱なエルフは! 頭ばかり使っているから!」

「腕だけが自慢のドワーフが、ほざかないでいただけますか?」


 僕は確信した。この二人は犬猿の仲と言うやつだ。

 

「おう! 坊主! テメェからも何か言ってれ!」

「ええ!? 急に僕に振られても……」


 話しかけてしまったばかりに、火の粉が飛んできた。

 

「ふむ。魔物が私に何かようですか?」

「ええっと……。まだ事故として処理するには、早いと思いますよ」

「魔物如きが。この私。エルフ上級騎士団、"ソウヤ"に楯突くのですか?」


 ああ。なるほど。このエルフは、誰彼構わず見下しているようだ。

 そして見るからに短気そうな、ドワーフの親方。喧嘩になる訳だ。


「爆発は故意に引き起こされたものです。事件性なら十分あります」

「ですが、酸素ボンベをつけた被害者を。どうやって殺害するというのですか?」

「それはまだ……」


 僕が言葉に詰まると、ソウヤさんは扇子を取り出して仰いだ。


「ならば。爆発と被害者の死は無関係! よって、酸素ボンベのせいである!」

「だぁからぁ! 酸素ボンベ自体に、問題はねえんだって!」


 また争いが始まりそうだ。その前に話を聞きださないと。


「親方さん。本当に酸素ボンベに、問題はなかったんですね?」

「おうよ! この道三十年。この俺が、十二年かけて開発したものが、不出来なはずがねえ!」


 随分と自身があるようだ。確かに何度も実験をしたと、チイさんも言っていたな。

 酸素ボンベ自体に不備はない。そう仮定した場合。


「誰かが酸素ボンベに細工した可能性は?」

「うむむ……。肯定してやりたいが。それは無理だ。酸素ボンベは厳重に保管していたからな」


 そうか。酸素ボンベ自体に、細工することは不可能なんだな。


「じゃあ、試作品に触ることは?」

「それなら"簡単"だ。だが試作品と入れ替えられた可能性はない」

「どうしてそう言い切れるんですか?」

「俺は被害者に付けられた、酸素ボンベを見た。確か俺が彫刻した、印があったのさ」


 なるほど。だからあの酸素ボンベは間違いなく、製品の者だと言えるのか。

 その彫刻を出来るのは、世界で親方一人だけなのだから。


「ありがとうございます。おかげで確信が持てました」

「ん? お、おう。お礼されることは、言ってねえけど……」


 親方、意外と素直にお礼されることに慣れていないようだ。分かり易く照れている。

 とにかく、これで確信できた。親方の彫刻は、二つのボンベにあったのだ。

 それも親方が知らない所で。


「この様子だと、時間もありませんね……。次で最後の捜査をしましょう」

「良いけど……。誰に何を聞くつもりなの?」

「酸素ボンベの中身に最も詳しい存在。酸素を注入したエルフです」

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