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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第8話 現場捜査序盤~酸素ボンベの調査~

 僕達は酸素ボンベの発表会場へ来た。

 既に捜査班は別の場所に居るため、この場所に人数は少ない。

 僕は騎士じゃないから捜査権はない。今が調べる絶好のチャンスだ。


 僕は作品の酸素ボンベに近づいた。

 酸素ボンベを持ち上げてみる。確かにかなりの重量だ。

 

「ここにあるのは、全て試作品なんですよね?」

「と言うより、予備だね。製品に何かあった時用の」


 と言う事は、試作品と言えど使用には問題がないという事か。

 製品との違いは分からないけど。調べてみよう。

 僕は酸素ボンベの蓋を開けてみた。当然空気は入っていない。


「酸素ボンベを付けるとき、鼻は塞ぐんでしたね」

「ええ。万が一水が体内に入らないようにね」


 と言う事は。酸素ボンベからの空気供給のみで。

 被害者は呼吸していたという事だよな。

 僕は考え事をしながら、試作品を色々触ってみた。


「ん? この試作品だけ、少し重たいような……」


 僕は何気なく持ち上げた酸素ボンベの、違和感に気が付いた。

 他の試作品は大体重さが同じなのに対して。

 今持っている酸素ボンベだけ、妙に重いのだ。


「もしかして……。それが完成品なんじゃない?」


 ルシェ様が僕から酸素ボンベを受け取る。

 更に片手に試作品を持ち、重さを比べている。

 流石魔王の娘だ。僕とは腕力が違う。


「うん。やっぱりそうだよ。完成品は加工方法が微妙に違うから、重さが違うの」

「と言う事は。完成品と試作品がすり替えられていた?」


 そう言えば、チイさんも重さに違和感を持っていた。

 あの時すり替えられていたのか?

 だとしたら、どうやって?


「完成品には、親方直伝の印が印字されているはずですけど……」

「このボンベには見当たらないね。少し調べてみたら?」

「そうですね」


 僕達は酸素ボンベを床に置いて、詳しく調べる事にした。

 一通り見まわしてみたが、印らしきものは見つからない。

 僕が不思議に思っていると。ある部分が捲れていた。


「うわあ! も、もしかして、傷つけちゃった?」

「違うよ、ユウ。これ、上から何か貼ってあるよ」

「何かって……。なんだこれは?」


 僕は思い切って、貼ってあるものを剥がしてみた。

 するとその下に、印と思わしき刻印が現れる。

 非常に複雑な形で、確かに知っている者にしか、再現できなさそうだ。


「これ、印ですよ!」

「やっぱりこれが、完成品だったんだね」

「でもこれは一体……」


 僕が剥がした物は、酸素ボンベの色と全く同じ紙だった。

 酸素ボンベは銀色。そんな色の紙、僕は見たことがない。


「もしかしたら。それは写真かもね」

「写真?」

「うん。原理は分からないけど。魔法で光を作って。紙に目の前の物を印画するんだって」


 良く分からないけど、全く同じ絵を瞬時に作れるという事か?

 だとしたら、この銀色の画用紙の意味も理解できるけど。

 

「でも写真を使えるのは、エルフ族のみだよ。酸素ボンベの制作者は……」

「ドワーフですよね……」


 ドワーフは酸素ボンベの完成に、精力を上げていた。

 他種族に簡単に見せるとは、思えない。

 それにチイさんは間違いなく、完成品を持ってきたはずだ。


 だとしたら写真が貼られたタイミングはいつだ?

 それに酸素ボンベは、いつすり替えられたんだ?


「チイさんは間違いなく、印があったボンベを持ってきたはずだ」


 僕は発表会の時、チイさんが転んだ当たりを見つめた。

 床は木製であり、木の板が敷き詰められて出来ている。

 彼が転んだ位置の床を調べると。


 木の板が一枚、少しだけ浮かび上がっていた。

 これは気づかずに、足を引っかけそうだが。

 僅かな上がり過ぎて、この程度で転倒はしないだろう。本来なら。


「ねえ。すり替えられたってことは。被害者が付けたボンベにも、印があったってことだよね?」

「はい。それは間違いありません。ドワーフが真っ先に確認していました」


 酸素ボンベに問題があるかが、今回の争点だった。

 だからドワーフは試作品とすり替えられていないか、真っ先にチャックした。

 その結果、確かに刻印はあったのだ。


「でもさ。もしかしたらその印も、写真なのかもしれないよ」

「いや。それはないですよ。だって海底に行くんですもの。紙が濡れて剥がれちゃいますよ」

「あ。そっか」


 そう。少なくてもあの刻印は、本物のはずだ。

 その刻印を出来るのが、親方と言われたドワーフのみ。

 彼ならすり替えは可能なんだろうけど。


 ドワーフに写真は用意できないな。だとすれば、疑うべきは。

 本当に親方以外に、刻印を用意できなかったのだろうか?


「他に気になることと言えば……」

「ユウ。ここで、酸素注入があったんだよね?」

「え? はい。そうですけど……」


 発表会があった場所。僕らの目の前で、酸素は注入された。

 それは間違いない。チイさんが重さで、量を図っていたはずだ。

 

「でもここに、残留魔力がないのだけど……」

「ああ。それはボンベに、手を突っ込んで、その先から酸素を注入したからですよ」


 僕は昔の事件を思い出しながら、残留魔力についておさらいした。


「残留魔力は魔法を放った場所に、着きますから」

「じゃあ、酸素ボンベの中に残留魔力があるわけだね」

「はい。過去にもそんな事象が、争点になりましたから」


 待てよ? 酸素ボンベの中に直接、魔法を放つなら。

 船内に残留魔力を残さずに、細工することも可能だよな?

 やっぱりあの酸素ボンベ。最初から何か細工がされいたのかも。


「現場で調べられることは、これくらいか……」

「そうだね。大体は分かったんじゃない? 私にはさっぱりだけど」

「胸を張っている事ではないですよ」


 僕は苦笑しながら、ルシェ様にツッコミを入れた。

 酸素ボンベは入れ替えられていた。かなり重要な事だ。

 問題はすり替えられた酸素ボンベに、どんな細工がしてあったか。


 被害者は間違いなく、窒息死だった。

 毒が混入されていたのなら、毒殺と判断されるはず。

 でも窒息したのに、あの酸素ボンベには空気が残っていたんだよな。


「他には何をするの?」

「そうですね。浮き輪が爆発した理由も探りたいです」


 浮き輪の中身が水素に入れ替えられたとしても。

 爆発したのには、理由があるはずだ。

 浮き輪には水素しか注入されていない。酸素が混ざるはずがないのだ。


 それに燃えるではなく、爆発したという点も不自然だ。

 それほど強い熱反応が、浮き輪の中で起きたことになる。


「後は刻印について。親方と呼ばれるドワーフと話がしたいな」


 刻印が二つあったかもしれないのは、重要な証拠だ。

 親方の証言次第で、新たな事実が判明するかもしれない。


「後は酸素を注入した、あのエルフさんにも話を聞かないと」


 酸素を注入した時、既に細工があったなら。

 あのエルフは何かを見ているはずなのだ。

 それに気が付けないという事は、ボンベ自体に細工があったのか。


 それか酸素を注入したエルフ自身が、犯人なのか。

 どちらにせよ、話を聞くだけの価値はあるはずだ。


「それじゃあ、甲板に向かう? 浮き輪の爆発には、絶対関わっているよ」

「そうですね。犯人が浮き輪を爆破した理由も探さないと」


 とにかくこの事件はまだ謎が多い。

 だけどハッキリした。これは間違いなく、殺ドワーフ事件だ。

 酸素ボンベの不備に見せかけるため、悪意ある誰かが仕組んだことなんだ。


「事件性を提示できるまで、あと一歩だな……」


 まずは事件性を示さなければ、事故で処理される。

 もう時間はない。甲板の捜査が終了したら、直ぐに調査隊の居場所へ向かおう。

 少なくとも、次が現場を捜査する最後のタイミングのはずだ。

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