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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第4話 国際裁判中編~船内の事件~

 私の主張に法廷中が、ざわついた。判事が木槌で落ち着くよう伝える。

 私は確信している。船は未知の存在が近づくよりずっと前に、細工されていたのだ。

 徐々にだけど一本の線が繋がってきたわね。


「被告側。ユミホ君。一体どういう事ですか?」

「証言では船内に戻ると、直ぐに船が揺れたとありました」

「ふむ。しかし貴方の言うとおり、遠くから見えた船が接触するのは不可能ですなぁ……」


 魔法が使われていないのなら、加速することは不可能だ。

 魔界の船に見せかけた何かが沈没の理由ではない。

 だとしたら、何が理由で船は沈没したのか?


「被告側は。船内で破壊工作がされたと主張します!」

「な、なんと!? と言う事は、人界側に犯人が居ると主張するのですか!?」

「いいえ。船内では、未知のドワーフが目撃されています。そのドワーフこそが、犯人だと考えられます」


 今まで集めた情報から、それは間違いない。

 私はドワーフが犯人の可能性を、提示できる。


「ふむ……。しかし、目撃証言だけで、ドワーフの仕業とは……」

「証拠があります。この切れ端を見てください」


 私は現場で発見した、ゴムボートの切れ端を見せた。

 ケーさんは言った。これはドワーフが作ったものだと。

 船の救助用などに装備されており、空気を抜けばカバンに仕舞えるらしい。


「内部で船を沈めた場合。当然犯人も、巻き込まれる形になります」

「うむ。何せ船内で破壊工作をしたわけですからな」

「そのために、犯人は。安全な逃走経路を用意する必要があります」


 船から自分だけが、目撃されずに逃げる必要がある。

 当然救助用のゴムボートを使う訳にはいかない。

 だから自前で、逃走経路を確保したはずなのだ。


「その逃走経路が、自分で用意したゴムボートです」

「ゴムボートはドワーフの独擅場。他の種族が購入せず授かるのは不可だぜ」


 ケーさんが口を挟んで、補足してくれた。

 要するにドワーフ以外で、自前に用意することは不可能なのだ。


「更に犯人はゴムボートにハリボテを立てて、逃走をしました」


 今まで共犯者が居て、魔界の仕業に見せかけると思っていた。

 でもこう考えると、船の沈没の意味が全く変わってくる。


「つまりヘイホウ君が見た、魔界の船は。近づいたのではなく、逃走する犯人のゴムボートだったんです!」


 犯人は魔界の船に見せかけるつもりもあったのだろう。

 だがそれはついでで良かったのだ。あくまで自分の存在さえ、悟られなければ。


「霧の中でガーゴイルの影が見つかれば。当然魔界に疑いが向きますからね」

「そうやって、容疑をドワーフから外したのか。奴さん、中々のやり手だな」

「ここで重要なことがあります。犯人は容疑を外せれば、それで良かった」


 多分人界と敵対するから、ただ選んだだけなのだろう。

 今回の事件の動機は、魔界の仕業に見せかけるためじゃない。

 最初から船を沈没させるために、引き起こされたのだ。

 

「しかし。何故犯人は、船を沈没させたのでしょうか?」

「船内で起きた、ある事件を考えれば。スムーズに分かります」


 ヘイホウ君は直ぐに、報告できなかったと証言した。

 その言葉の中に、謎を解くヒントがあるはずだ。


「船内では殺エルフ事件が起きていました。しかも政治家です」

「ああ。警備しておきながら、殺されちまった。俺らの意地にかけて、犯人を見つける必要があった」

「でも犯人は見つからなかった。何故か? それは船が沈没したからです!」


 そう考えれば、全てが繋がるのだ。

 やはり二つの事件は無関係ではなかった。

 

「犯人は殺エルフ事件を、隠蔽するために。船を沈没させたのです!」


 この事件。最初から私達は思い違いをしていた。

 魔界に罪を着せるため、誰かが悪意を持っていたと。

 勿論その意図も多少はあったのだろうけど。本当の狙いは、殺エルフを誤魔化す事だった。


 つまりこうして魔界と人界で裁判をしていること自体、真犯人の茶番なのだ。

 私はワンダさん達を信じて、発現を決意する。


「被告側は、現場で発見されたドワーフの召還を要求します!」

「し、しかし……。そんなドワーフが本当に居るかどうか……」

「判事。問題はありません。そのドワーフなら、既に確保しています」


 やはりワンダさん達は、目撃証言からドワーフにたどり着いてた。

 真犯人は間違いなく、そのドワーフだ。

 後は追い詰めるだけ。私達の作戦通りことが運んでいた。


「呼び出しの準備は整っています」

「むぅ……。こうなれば、仕方ありませんなぁ。証人を呼んでいただきましょう」


 ワンダさんに合図を出されて、とあるドワーフが連れてこられた。

 褐色肌に筋肉がどっしりとした、ガタイの良いドワーフだ。

 手にはハンマーが握られており、職人の様に鉢巻を巻いている。


「証人。名前と職業を」

「俺っち。グッチと言います。ドワーフで、商人さやっとるべ」


 随分と訛りの強い喋り方の、グッチ。

 そのおおらかな様子に、本当に犯人か疑わしくなる。

 でも騙されてはいけない。現状最も怪しいのは彼なのだから。


「何故に俺っち、ここに呼ばれただ?」

「話は聞いているはずですよ? 貴方はあちらの弁護士に、告発を受けています。弁明を」

「おっかないべ。俺っち、確かに勝手に船に乗り込んだが、それ以外は何もしていないべ」


 疑われているというに、グッチは妙に落ち着いている。

 この状況も、彼にとっては想定内と言う事なのか?

 非常に嫌な予感がするが、私は審理を続ける。


「弁明があるなら、証言でお願いします」

「仕方ないべ。反論させていただきやす」


 真犯人との直接対決が始まる。彼の弁明を打ち崩せなければ、意味がない。

 私は隣のユウガを見つめた。彼も黙って頷く。

 ここが正念場。気合を入れていきましょう!


「俺っち、別に怪しい目的の為に乗り込んだ訳じゃないべ」

「怪しくない目的なら、船に密航する必要はありませんよ?」

「そうだけど。それは内密な取引があったからだべ」


 内密な取引って……。十分怪しいじゃないの!


「船が沈んで、俺っちは一人で逃げ出したがや」

「やはり貴方はゴムボートを、持ち運んでいたのですね?」

「ああ。でも流石に俺っちに、船を沈めて目撃されるのは不可能だべ」

「どうして不可能と言い切れるのですか?」


 私は質問を重ねて、相手のボロが出るのを待つ。

 

「ゴムボートには、帆がついていないのさ。だから船に細工して、遠くまで行くのは無理だべ」

「うむ。ゴムボートはオールで漕ぐしか、動かせません。当時波も高かったでしょうから……」

「時間的に目撃されるのは、無理があるんだべ」


 確かに船に細工をしたのなら。直ぐに逃げないといけない。

 そこから影になるほど遠くに行くのは、オールで漕ぐには不可能だ。

 だったら他の方法で、移動すれば良い。


「グッチさん。もしかして、これに見覚えがあるのでは?」


 私は海岸で見つけた、ラッパ状の金属を見せた。


「なっ! そ、それはなんだべ? み、見覚えがないなぁ……」


 グッチは明らかに動揺している。ここが攻め処だ。


「全部で五本あるのですが。この金属こそが、犯人の移動手段です」

「うぎぃ! ど、どういう事だべ?」

「コイツには、空気の魔法と熱魔法が使われた形跡があります」


 残留魔力は使用された場所に残る。

 金属の口から手を入れて、手から魔法を使用すれば。

 残留魔力は金属の方に残るのだ。


「貴方は初めに、金属内部に空気を入れた」


 ラッパ状の口以外に、出口はない。

 ここから空気を入れれば、内部に閉じ込める事が可能だ。


「そして炎の魔法で、内部に火を作り。空気を暖めたのです!」

「っ!? だ、だからなんだべ! それで船が動くのか!?」

「暖められた空気は膨張します。この金属、口以外やや細いですよね?」


 楽器のラッパと同じような形をしているのだ。

 だから口が広がる様に、棒状になっている。


「四方に膨張された空気は、壁に跳ね返ります。そして全ての空気が、口元から一気に噴射されます」


 本来膨張した空気は、四方に広がっていくのだけど。

 内部が狭いと壁に当たって、跳ね返る。

 その結果壁のない方に、空気の逃げ道が限定される。


「急激に温められた空気の噴射を利用して、貴方はゴムボートで移動したのです!」

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