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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第3話 国際裁判前編~事件の概要~

真相パートは一気投稿の予定でしたが、今のペースだと半月くらいかかりそうなので。

一話ずつ投稿に戻します。

 エルフの国裁判所。今日ここで、私達は国際裁判を行う。

 と言っても、裁判は形式的なものだ。

 人界側も真実を有耶無耶にするよう、指示されている。


 全ては魔界と人界の和平のために。関係を拗れさせないため。

 でも真実は魔界側のせいじゃない。裏で何者かが手を引いている。

 今日、私達は種族を超えて、その黒幕を法廷に引っ張り出す。


「なんか、思ったより大事になったね……」


 ユウガが珍しく緊張している。公の場に出る事に、慣れているはずだが。

 無理もない。ここで私達が失敗したら。

 国際情勢的に、どうなるか分からない。


 私は弁護士の証を握りしめながら、深呼吸をした。

 大丈夫だ。自分にそう言い聞かせて。


「弁護人。開廷の時間だ。入りなさい」

「は、はい!」


 私は係官に言われて、法廷の中に入る。

 正直な話。まだ分かっていないことは多い。

 誰が船を沈めたのか? 沈没事件と魔界の偽装は同一犯によるものなのか?


 それを明らかにするためにも、まずは法廷で話を進める必要がある。

 絶対に真実を見つけ出して見せる。

 私は深呼吸しながら、魔界側の弁護席に立った。


 反対側の人界側弁護席にはワンダさんとルナティックさんが居る。

 今回の敵は彼らではない。真犯人だ。

 でもまずは、私達の共闘が悟られない様に。敵対を表さないと。


「それではこれより。人界船沈没事件の裁判を開廷します」


 判事が木槌を叩いた。今回の判事は、ドワーフの一族だ。

 公平性を出すため、事件に関与しない第三者が必要だった。

 そのためエルフでも人間でもない。ドワーフが選ばれたのだ。


「原告側、被告側。双方の主張の準備は整っているか?」

「原告側、立証の準備は万端です」

「被告側。同じく十分な材料が揃っています」


 お決まりの台詞を吐いた後。裁判が進行していく。

 訴えられた側の裁判は初めてではない。

 セオリーとしては、まずは原告側の主張を聞く。


「ご存じの通り。人界の商業船が何者かによって、沈められた」

「ふむ。海図を見る限り。事故が起きた可能性は引くそうですな」

「その通り。人界側は魔界側の妨害工作だと、主張する」


 和平は秘密裏に行われている。

 人界の民を納得させるには、そう主張せざる負えない。

 だからまずは。公の場で魔界の関与を否定する。


「しかし現場はエルフの国。どうして魔界側を疑うのでしょうか?」

「簡単な事です。船が沈む前。接近する魔界の船が目撃されたのです」


 たった一人だけの目撃者。この証言さえ崩せば、魔界の無実は証明される。

 問題はその先にある。誰が彼に目撃させたのか?


「人界守護隊としては、目撃者の証言を尊重。魔界側の仕業だと、主張致します」

「しかし、目撃証言だけでは……」

「船が沈没した以上、これ以上ない手がかりです」


 今回の問題となるのは、沈んだ船を調べる方法がないという事だ。

 

「よって人界側はまず、目撃者を証人として召還致します」

「ふむ。魔界側。異議はありませんか?」

「ありません。証人の召還をお願いします」


 私は異議を申し立てない。ここまでは、手筈通り。

 後は証人が納得する主張を、出来るかにかかっている。


「それでは証人。入廷をどうぞ」


 ワンダさんの掛け声と共に、証人が法廷に入る。

 鉢巻と青いエプロンを巻いた少年が出てきた。

 耳も尖がっており、青い瞳で私達に恐怖の表情を向けている。


「え? 子供……? それに……」

「エルフだね」


 私とユウガは呆気にとられた。てっきり人間の証人が出てくると思っていたが。

 何故かエルフの少年が、証言台に立つ。

 そしてその隣には。あのケーさんの姿が。


「証人。名前と職業を」

「僕はヘイホウ・コン。一応、コン家で統治について学んでいるよ」

「沈んだ船は、人界とエルフの商売船でした。当然、エルフ族も乗っていましたよ」


 ワンダさん。先に伝えておいて欲しかったのだけど……。

 でも相手がエルフ族なら、難易度はやや下がる。

 人間は魔物に対して、歴史的憎悪を持っているけど。エルフはそうではない。


「証人。ヘイホウさん。貴方は魔界側の船団を見た。間違いありませんね?」

「船団ってほどじゃないなぁ。だって一隻だったもん」

「ならば、その時の事を詳しく教えていただけるでしょうか?」


 敬語は使えていないが、少年はやや大人びている。

 どこか苦労を感じさせるような。そんな印象を受けた。


「僕はお父さんの手伝いのために、外の警備をしていたんだ」


 お父さん。コン家って事は。ケー・コンさんの息子ってことね。

 なるほど。ケーさんは、現場となった船の警護もしていたのか。


「みんなが船の中に戻った後、念のためもう一度周囲を見回していたんだ」

「その時に、魔界の船を目撃した。そうですね?」

「うん。霧が濃くて、良く見えなかったけど……。魔界の船だとは分かったよ」


 ここよ。私は目線で、ユウガに合図を出した。


「ヘイホウ君。少し良いかしら?」

「うん。なに?」

「霧が濃かったのに、どうして魔界の船だと分かったの?」

「影だよ。大きな翼を広げた、ガーゴイルの影があったんだ」


 思った通りだ。どうやら、彼は勘違いをさせられたようね。


「ヘイホウ君。実は現場近くの海岸に。こんなものが落ちていたの」


 ユウガが昨日完成させた、ハリボテを見せた。

 それは翼を広げてた、ガーゴイルの姿をしている。


「貴方が見たガーゴイルは。このハリボテと同じ姿じゃなかった?」

「え? う~ん……。言われてみれば。翼も動かさなかったなぁ……」

「つまり。君が見たのは。このハリボテを乗せた船だったんだよ」


 私はきつい口調にならない程度に、ヘイホウ君に伝えた。

 

「魔界側は。何者かが魔界の仕業に見せかけたと主張します!」

「ふむ……。確かに影だけでは……」


 判事はチラリと、ワンダさんを見つめた。

 ワンダさんはこの状況でも、クールな表情を崩さない。


「人界側の主張は変わりません。確かにハリボテの船の可能性はありますが……」


 ワンダさん。審理を続けるために、わざと魔界に疑いを向けてくれているのね。

 

「魔界側がそう思わせるため、偽装工作をした可能性もあります」

「ふ~む。確かにハリボテだからと言って、魔界の関与がない証拠にはなりませんね……」

「それより問題は、証言の続きです」


 証言の続き? ヘイホウ君は、まだ何かを目撃したのかしら?


「魔界の船を見たと思った後。貴方は何をしました?」

「勿論、大人に報告へ向かったよ。上手く出来なかったけど……」

「出来なかった? それは何故です?」

「僕が船の中に入った直後。船が揺れたんだ。そのまま浸水して、沈みだしたんだ」


 これは新しい証言ね。魔界の船が近づくのが見えた。

 その直後船が揺れて、沈没を始めたから。

 ヘイホウ君は、魔界の側の船が沈めたと思い込んだのね。


「それに船内では、殺エルフが起きて。誰も僕に構ってくれなかったし」


 エルフの政治家が殺されたんだったわね。

 まだ沈没事件との関連は、分からないけど……。

 どうにも無関係だとは思えないんだよなぁ。


 ん? 待って。ヘイホウ君が船内に戻った直後に、船が揺れた?

 これってもしかして……!


「ヘイホウ君。貴方は魔界の船が、体当たりしてきたのだと、思い込んだのよね?」

「うん。だって、人界と魔界は戦争中だから」

「でも、貴方は遠くで魔界の船を見たはずよ。そんな直ぐに、体当たりできるかしら?」

「あ! 言われてみれば……。あそこには残留魔力もなかったし……」


 現場となった海上では、残留魔力が存在しなかった。

 魔法を使って、加速させたなどもあり得ない。

 だったら、答えは一つだけだ。


「船は体当たりではなく、船内の細工で沈められた。魔界側はそう主張します」


 私は断言するように、宣言した。

 法廷がざわつき始める。判事が木槌で、静粛を訴えた。


「ヘイホウ君。船の揺れは何かが衝突した衝撃じゃなくて。船が沈む前の前兆だったのよ」

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