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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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第1話 邂逅

 エルフ族の衛兵、ケー・コンを連れて海岸へ向かった。

 船は遥か先の海の中。海岸を調べても、何もないけど。

 何か流れ着いているかもしれない。そう思って、兵士たちは調査しているようだ。

 

 私達の目的は別。人族側の調査員に合う事だ。

 彼らも魔界の者が船を沈めたとは、思っていないらしい。

 ならば人界側の意見を聞こうじゃないかと、ここにやってきた。


 エルフの中で人族を見つけるのは、簡単だった。

 二人の人族が、海を見つめながら難しい表情をしている。

 一人は若い男性で。もう一人は、金色の髪をした女性だ。


「すいません。魔界側の弁護士、ユミホです」


 私はまず、自分から名乗る挨拶をした。

 相手側は急に声をかけられて、少し驚いた表情をしていた。

 女性の方は直ぐに表情を戻したが、男性は未だに驚いている。


「ご丁寧にどうも。人界側の弁護士。ワンダと言います」

「……。人界守護隊。聖騎士団第一部隊隊長のルナティックだ」


 振り向かれた顔を見ると、二人共随分と若い。

 特に騎士さんの方は、まだ隊長になりたてっぽい雰囲気だ。


「ごめんなさいね。夫は魔界側の魔物に慣れていなくて」

「いえ。戦争中ですから。騎士が警戒するのは、もっともです」


 忘れてはならない。人界と魔界は戦争中だ。

 この事件が大きな襲撃の、大義名分にならない様にする。

 それが魔王様から私が受けた、命令である。


 気安く声をかけたが、相手がどう動くか分からない。

 私は思わず、緊張感を抱いた。


「ふふふ。大丈夫です。私達は和平の事を知っています」


 私の焦りに気づいたのか、ワンダさんが安心させるように言った。

 魔物を見ても、驚いていない。彼女は慣れているのだろうか?


「今回私達が受けた命令は、和平の妨害にならない様にすることです」

「はあ……。と言う事は、魔界側と言う主張を?」

「有耶無耶にする事。だったんですけどね……」


 そこでワンダさんが俯きながら、笑みを消した。


「この事件、良くない動きがありそうな気がして……」

「はあ……。良くない動きとは?」

「生き残りから、証言を得ました。乗員に登録されていない、ドワーフを見たと」


 ドワーフ族が人族の船に乗船していた?

 登録されていないという事は、密航だろう。

 でも何故、ドワーフがそんなことする必要が?


「この事件、複数の種族が絡んだ、怪しい気配を感じます」

「そうですね。人界の船で、エルフが殺され。ドワーフが目撃、容疑者は魔物」


 この大陸に存在する、全ての種族が事件に絡んでいる。

 何かこう、大きな力の様なものを感じる。


「ですが肝心の船は海の底。調査出来る状況ではありません」

「捜査は難航いる。俺達も今後の方針を語り合っていた所だ」


 ふむ。人界側は早くも、手詰まり状態か。確かに。

 船が調べられないんじゃ、証拠が手に入らない。

 この状況で弁護士としてやるべきことは、証言の真偽を疑う事だけど……。


「ユミホ。ここは逆に考えてみたらどうだろうかな?」

「え? 逆?」


 夫のユウガが初めて、この場で発言をした。

 ずっと海岸を見ながら、何かを考えていたようだ。


「魔界の船を見たっていう証言を、まずは信じてみようか」

「ん? でも魔界に出航記録はないけど?」

「うん。でも船はあった。そう考えてみると。魔界の船に見える何かが海上にあったってことだよね?」

「あ!」


 私は夫が言わんとしている事を、理解した。

 つまり証言した人族が、嘘をついているのではなく。

 本当に魔界の船を見た様に、思い込んでいる。


 ならばその思い込みとなる、原因があるはずだ。

 その原因は沈んでいないだろうから、どこかに痕跡がある。

 魔界の船に見えた何かになら、証拠が残っているかもしれない。


「船が沈んだ位置は、海岸から離れていない。見た限り、残留魔力はないよ」


 そうか。ユウガはずっと、海で残留魔力を探した居たのね。

 もしかしたら幻影魔法かもしれないと、疑って。

 でも残留魔力がないという事は、道具が使われたという事。


「もし船の様な何かがあれば。この海岸に寄っているはずだよ」

「確かに。この海岸、もう少し詳しく調べた方が良いかもしれないわね……」

「よく探してみようよ。もしかしたら、一見そうは見えないものが、船の様に見えたとかあり得るからさ」


 ユウガは場数を踏んでいるだけあって、この手の事に詳しい。

 彼にばかり頼っては、いけない。ここは弁護士として。

 魔界の無実を証明する証拠を探さなければ。


「ユミホ。もう一度、状況を思い出してみるんだ」


 ユウガはこんな状況でも、冷静に私にアドバイスをくれる。

 見た目は少々頼りないが、非常時は率先して前に出るのだ。

 

「目撃者は魔界の船が近づいたとだけ、証言していたんだ」

「うん。と言う事は。"魔界の船が接触した瞬間"は見ていない訳ね……」

「それに戦争中の敵国の船が近づいたら。普通の船員ならどうする?」

「そうか……。普通、報告に向かうため、その場を離れるわね」


 それが接触した瞬間を見ていない、理由ってことね。

 

「報告を受けたら、普通どうする?」

「確認のために、外に出るけど……」

「でも実際、確認は行われていない。何故か?」

「船が沈没を始めたからよね? 目撃者は魔界の船が追突したと、証言しているけど……」


 本当に魔界の船だとして。いくらなんでも、衝突まで早すぎるだろう。

 魔界の船に見えた何かが当たった。その線も薄い。

 何故なら、ハッキリするほど接近していたら。他の人間も気づいているだろう。


 だとすると、沈没の理由が分からなくなるわね。

 衝突された訳じゃないなら、何故沈んだのかしら?


「こう考えられない? 内部から破壊工作をされたと」

「そうなると、目撃されたドワーフが怪しいわね……」

「うん。しかもこの犯行、一人じゃ絶対に不可能だよ」


 そうか。船を動かす者と、船に細工する者。

 二つの存在が居ないと、この状況は成立しない。

 つまり犯人は単独犯ではなく、何らかの組織の可能性があるわね。


「それと。犯人の動機から考えるのもありかもしれない」

「動機かぁ。シンプルに考えたら、魔物のせいにしたい奴だけど……」

「なら和平交渉が行われると、良くないと思う連中じゃないかな。例えば武器商人とか」


 なるほど。武器商人か。確かにその線はありそうね。

 武器を売るとなると、ドワーフからと言う事になる。

 船に居たドワーフが、繋がってくるわけね。


「とにかく、この海岸を調べてみようよ。手先が器用なドワーフなら、組み立ても解体も、直ぐに出来るだろうから」


 ユウガは早速海岸に近づいた。

 船が海の底な以上、私達に出来ることはそれくらいか。

 

「う、う~ん。なんというか……。俺が想像していた魔物とは、随分違うな……」


 ルナティックさんが、ユウガの様子に戸惑っているようだ。


「前線に出る魔物は、気性が荒いですからね。勘違いされるのも、無理はありません」

「そういうものか……。その……。なんだ。俺らも協力させてもらっても良いか?」

「勿論ですが、良いんですか? これは人界側に不利の証拠集めですよ?」


 確かに和平交渉は大事だが、船内に裏切者が居たとしたら。

 人界側にも責任が追及されるだろう。

 その人物を野放しにしていたのだから。


「心配ご無用です。私達には、真実の方が大事ですから」

「ああ。政治の駆け引きより、真実を探す方が楽しそうだ」


 どうやら私の方も、人間と言う種族を誤解していたようだ。

 彼らにも真実を追求するという、意志がある。

 

「だったら二手に別れましょう。僕達は船に見えた何かを探します」

「了解だ。俺らは怪しいドワーフでも、探しておくよ」


 捜査方針が決まってきた。船を調べられなくても、真実は明かせるはずだ。

 何が魔物の船に見えたのか。本格的に調査してみよう。


「裁判で真実を明らかにしよう。そうしたら、犯人も逃げられないはずだ」

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