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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第2章 過去と現代の交わるところ
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プロローグ 両親

「今! 奇跡の瞬間が起きようとしています!」


 魔界と人界から離れて場所。エルフとドワーフの国境。

 大陸の外界である、海と呼ばれる場所に、一隻の船が動き出す。

 船上には人族、魔物、エルフ、ドワーフ。


 この大陸に存在する全ての種族が、乗っていた。

 それを周囲は奇跡の瞬間として、出航を見物している。

 船内の窓からルナティックは、フッと笑いながら見物人を見つめていた。


「奇跡か……。間違っちゃいねえよ」


 古い手帳を閉じて、ルナティックは思い出す。

 馬車の中でユウキ達に話した過去の事を。


「待たしちまったな。十二年も……」


 出航された船から、海を見つめるルナティック。

 真実への鍵は、海底に存在していた。


「ユウガ、ユミホ、ワンダ、ケー。やっと終わるぞ……」


―――――――――――――――――――

~十二年前~


「魔王様の言い伝えで来た。ユウガと言う者です」

「魔界側の弁護士、ユミホと言う者です」


 私、『ユミホ』は夫である『ユウガ』と共に。

 エルフとドワーフの国境にたどり着いた。

 とある事件の捜査をするため。魔界から足を運んできたのだ。


「通行許可まで、時間がかかるから。今のうちに事件を振り返っておこうか」

「そうね。まだ状況はあやふやだけど……」


 事件は国境付近にある、海上で引き起った。

 エルフの国へ向かう途中の人界の商船が、突如沈没したのだ。

 救助されたものによると。商船に魔界の船が近づいていたという。


 人界側は魔界の魔物達に襲撃されたと主張した。

 だが魔界の航海記録に、エルフの国へ向かう船など存在しない。

 そのため魔界側は無実を主張。両者の言い分は平行線となった。


 戦時中と言う事もあり、緊迫感が迫る中。

 ドワーフとエルフの提案で、私達は国際裁判で争う事となった。

 それぞれの弁護士が裁判で争い、主張を届けるのだと。


「ふぅ。国際裁判は初めてだから、ちょっと緊張するわ」

「よりによって、この一大事だからね。気持ちは分かるよ」


 ユウガは苦笑しながら、私を励ましてくれた。

 彼は悪魔族として、迫力はないが魔王の側近だけの力を秘めている。

 魔法の才能はからっきしだが、腕っぷしは強い。


 その上悪魔特有の目の良さもあり、鋭さもある。

 赤い眼で常に、周囲を観察しているのだ。


「人界と魔界は和平交渉中だから。敗訴は許されないわね……」

「ここで人界側の主張が通れば。和平など夢のまた夢だろうね」


 現代の魔王様が就任して、二年。穏健派の彼は、人界との争いを終結させるため。

 人界の皇帝と和平の交渉を、水面下で重ねてきた。

 勿論双方の国民には、明かせていない。


 歴史的禍根が多い種族なため、納得には時間がかかるだろう。

 和平には時間が必要なのだ。お互いの事を理解する時間が。

 だからこそ、ここで人界側の怒りを爆発させるわけにはいかない。


「大丈夫。僕も出来るだけ協力するよ」

「あら? 貴方の力があれば、裁判前に真相を明かせるはずよ」

「どうかな? 今までも偶々解けただけだし……」


 う~ん、偶々で一カ月に二十五件も事件を解決しないと思うけど。

 この頼りなさが、息子にも遺伝しちゃったので。

 もう少し父親としてしっかりして欲しいものだ。


「ユウガ、ユミホ。許可が下りた」


 エルフの騎士が道を開けてくれた。

 この先が現場近くの、海岸に繋がっている。

 現場は海のど真ん中なうえ、沈没しているのだ。


 この状況でどんな捜査をして、魔界側の潔白を証明すれば良いのやら……。

 証拠は全て、海の底だろうし。


「取り合えず、証言を崩す所から始めようか」


 私の表情から察したのか、ユウガが声をかける。


「今の所"魔界側の船が、近づいた"と言う証言が、争点になっているよ」

「そうね……。でも魔界側に出航記録はないわけだし……」

「可能性は二つ。"証人が嘘をついている"か、"船に偽装が行われている"かだよ」


 頼りない先ほどとは裏腹に、ユウガは冷静に物事を捉えていた。

 なるほど。嘘をついているなら、言葉に矛盾があるはずだし。

 偽装されていたなら、その証拠がどこかに残っているわね。


 どっちにしろ。まずは付近を調べてみないと分からないわ。

 私達は国境沿いにある、海岸へと向かった。


「まあ、当たり前だけど……」


 人界最高位の騎士、聖騎士達とエルフの騎士がそこら中にいる。

 魔界側からは私達しか派遣されていないので。

 なんだか場違い間があって、居心地が悪い。


「まずはこの場を指揮している、エルフ族から話を聞き出そうか」

「そ、そうね……」


 ユウガは私と違って、冷静だ。

 この場で人界人が協力してくれるとは思えないので。

 エルフの騎士に聞くのが最適解だろう。


 私は捜査しているエルフ族を、片っ端から見て回った。

 その中でひときわ目立つ、帽子を被ったエルフ族が居た。

 青いスカーフをマントの様に付けて入りる、赤い短髪のエルフだ。


「あの~。すいません。お話宜しでしょうか?」

「血なまぐさい……。死者の香りがするぜ……」


 男性エルフは、帽子に手を添えながら、意味不明な一言を呟いた。

 やっぱり別のエルフに声をかけようと思った矢先。

 

「待ちな。死者の記憶を辿るには。俺に話を聞くのが、手っ取り早いぜ」

「……。意味が分かりません……」

「俺はケー・コン。この場を仕切る、ボス猿と言ったところか」


 つまりこの事件の担当をしている、騎士ってことね。

 なんでこう、言い回しが回りくどいのだろうか?


「王の勅命で、集いし者。これぞデスティニーってことか」

「人界側の弁護士も、来ているんですね?」


 なんでユウガには分かるの!?


「ああ。罪あるものを示す、エンブレムを探しにな」


 私、このエルフと上手く話せる気が、全くないや。


「ええっと……。捜査状況はどんな感じですか?」

「さしずめ、スタートライン。悲劇の立会人の声のみが頼りだ」

「進展がなくて、証言のみの状態らしいね」


 ユウガが居てくれて、本当に良かったわ。

 私だけだと、解読で一日使う所だった。


「だが悲運の記録者は、一名のみ。他の者は、誰一人として魔界の船を見ていない」

「目撃者は一人?」

「それ以外の皆は、造られ士クジラの胃袋。目撃しようがないさ」


 だったらやっぱり、目撃証言が嘘なのだろうか?

 でもだったら、何故嘘をつく必要がるのかしら?


「騎士団の見解を教えてもらっても良いですか?」

「クジラは内臓が破裂して、闇に消えた。それが現時点での見解だ」

「……。あの……。意味が分かりません……」


 先ほどの発言も加味すると、クジラは船の事よね?

 内臓が破裂したってことは……。


「船内に居たものが、船を破損して、沈没させたってことですか?」

「この場の誰もが、魔物の襲撃なんか、信じちゃいないさ」


 先ほどケーさんは、捜査は始まったばかりと口にしていた。

 なのにどうして、魔界側の関与はなと分かるのだろうか?


「見つかったのは、水死体だけじゃない。血の匂いのする、エルフも死体で発見されたのさ」

「それは初めて聞きました」

「まだ発表していないからな」


 先ほど死体はエルフと、ケーさんは口にしたわね。

 でも沈没したのは、人界側の船だったはずよ。


「遺体の身元は判明しているんですか? 船に乗船した居たかも」

「血の持ち主は、エルフの政治家さ。商売のために、船に乗り込んでいたのは間違いない」

「だったら、犯人は船の中に居たので、決まりでは?」


 船の中に居ないと、被害者を殺すことは出来ない。

 魔物が船に乗り込んだというなら、争いがあったはず。

 騒動があれば、エルフの警備隊が目撃するはずだけど。


「まだ殺エルフと、船の沈没の関係性が不明なんだよ」

「うっ! そう主張されれば、言い返す言葉もありませんが……」

「しっかりしろよ。アンタ、魔界側の代表弁護士なんだろ?」


 確かにその通りなんだけど、自信を無くしてきた。

 それにしても、そこまで分かっているなら。

 何故人界側は、魔物の仕業だと主張しているのだろうか?


「あちらの真意を探りたきゃ、直接問いただしな」

「私達は戦時中ですし。素直に話を聞いてくれるとは思いませんが……」

「言ったろ? "この場の誰もが襲撃なんて、信じちゃいない"ってな」


 それはエルフだけじゃなく。人界の騎士団も含めてのことだったのね。

 どうやら人界側の意図を知る必要がありそうだ。

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