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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第11話 推理議論クライマックス~事件の全貌~

「それじゃあ、事件をおさらいしておくよ」


 僕は事件の流れを振り返り、全貌を説明する。


「事の発端はマホさんに、殺害予告が来た事なんだ」


 死神の仕掛けは、ずっと前から始まっていた。

 日付を指定して、殺害の予告を出した。

 殺し屋として、余りにも不自然な行為だ。


「マホさんはこの時。死神の暗殺を利用して、返り討ちにする方法を思いついた」


 動機は『コン家没落事件』なのだろう。

 その事件に死神が関わっているか分からないが。

 マホさんはそこの主に、恩義があった。


「あらかじめ隠し通路に、ロープを隠しておき、振り子で移動する準備を施した」


 五階に見張りが居たら、アウトなトリックだからね。

 マホさんは三階に通路を用意する必要があった。

 塔の間には風あるから、エルフの羽根では飛べないのも理由だろう。


「ルナティックさんの部屋に落とすために、死神が屋上に来るのを待った」


 ルナティックさんが不在なのは、魔界側の塔に居たら分かる。

 何せ彼は奇怪な歌を奏でながら、魔王様を探していたからね。


「予定通り、死神のツカサが現れて、自分を襲ってきた」


 この時二人は、人界側の屋上に居たはずだ。

 隠し通路を通っただけなら、五階の騎士に目撃されない。


「マホさんはツカサを煙突に、突き飛ばし。凶器を煙突から投げ捨てた」


 この時、マホさんはツカサが暖炉で気絶していると考えていたはずだ。

 実際は違ったのだけど、この説明は後回しだ。


「その後、風魔法を使ってロープを三階まで垂らした」


 この時、魔王様が不在なのをマホさんは確認しているはずだ。

 たぶん彼女の事だから、魔王様を呼び出す事を考えていたんだろうけど。

 今回はその必要がなかった。


「ロープを自分に括り付け、現場へと向かった」


 犯人は人界側の塔で、事件が起きたと強調したかったはず。

 だから魔王様の部屋で、何もしていない。


「マホさんは驚いたはずだよ。死んでいるはずのツカサの姿はなく。ホソさんが血を流していたのだから」


 この時既に、魔王様には血が付着していたはずだ。

 マホさんは、魔王様に罪を着せる動機がないからね。


「マホさんは現場を別に見せる、事後工作をして。再び振り子で塔を渡った」


 魔王様をベッドに寝かしつけたのも。彼が疑われないようにするためだろう。

 被害者と距離が離れている。反撃を受けたのは、不自然だと主張するために。


「魔王様の部屋に戻った、マホさんは。熱魔法でロープを燃やした」


 この時ロープが完全に燃え切れず。

 隠し通路の窓に残ったんだ。でもマホさんはそれに気づけなかった。

 何故なら彼女はその後、三階でアリバイを作る必要があったからだ。


「犯人が仕掛けたトリックはこれで終わりだけど。この事件はもう一つの悪意があった」


 それが事件を複雑にしていたのだろう。


「少し時間が遡り。魔王様は自分の意思で、現場に訪れたんだ」


 現場が十年前の事件と、同じだったという事。

 魔王様が父を信用してくれたこと。父さんが残した物からいて。

 彼の行動動機は、推測できる……。


「でも現場には、魔王様の行動を先読みして。潜む者が居た」


 殺し屋と言うくらいだ。身体能力は高いだろう。

 どっちのしろ、聖騎士団の隊長なのだけど。


「魔王様は第三者。ツカサに襲われて、気絶した」


 睡眠薬を飲まされたのだろう。魔界には粒上のものしかないが。

 人界には粉ものもあると、聞いたことがある。


「意識を失った魔王様を、暖炉に持っていき。ツカサはマホさんの下へ向かった」


 ツカサはマホさんの行動すらも、先読みしていたはずだ。

 彼女を操るために、わざと殺害予告を出したのだから。


「さっき説明した通り、ツカサは煙突から落とされた。でもそれは演技だ」


 ツカサは自らの意思で、煙突に落ちたはずだ。

 突き落とされたなら、煙突の埃は綺麗になっているはずだからね。


「自分から飛び降りたツカサは、暖炉で着地して部屋から去った」


 この時殺害を確認しなかった理由は。凶器が落ちる音を警戒してだろう。

 部屋に留まっていると、疑われかねないからね。


「ツカサは致命的な証拠を隠すため。魔王様をマホさんに殺させるよう仕組んだ」


 この時マホさんが、凶器を落とすまで時間があったはずだ。

 魔法を唱えたり、凶器を取り出したり。僅かな時間が必要だからね。


「でもツカサの計画は失敗に終わった。その部屋に潜んでいた、ホソさんによってね」


 ホソさんが自分から煙突を、下りたなら。

 マホさん屋上に来るより、前のはずだ。

 その真意は分からないけど、彼は魔王様が殺されると悟ったんだろう。


「ホソさんは魔王様を移動させて。自らの頭に凶器をぶつけたんだ」


 彼は事件を作り出したかったのかもしれない。

 死体が発見されれば、警戒が高まり。ツカサは身動きがとれない。

 魔王様を守るために……。彼は命を懸けたのかもしれない。僕の都合の良い解釈だけど。


「ホソさんの行動で。ツカサは十年前の証拠を消しそびれたんだ……」


 僕は最後に、力強くツカサの事を指した。


「そうだよね? この事件の首謀者。双子塔事件の犯人。ツカサ・オレット!」


 僕に指を突きつけられたツカサは。周囲を見渡している。

 落ち着きをなくし、顔に汗を流す。

 彼はまるで、『何かを探している』様に、首を振る。


「どこだ……? 居るのは分かっているぞ……? まだだ……。まだ終わりじゃない!」


 ツカサは剣を引き抜いて、馬車へ駆け出した。


「殺してでも……。殺してでも証拠を消してやる!」


 剣を構えたツカサの前に。同じく抜刀したアリス様が立ち塞がる。

 ツカサの剣を防御して、彼を弾き返す。


「愚か者が。騎士なら潔く、負けを認めなさい!」


 アリス様はその場で素振りをした。はずなんだけど。

 まるで斬られたかのように、ツカサは宙に投げ出された。


「ぎゃああああ!」


 ツカサは地面に倒れる。すかさずアリス様が、腕を踏み。

 彼の事を拘束した。剣も奪われ、もう抵抗する術はないだろう。


「アハハ……! 全部……。全部終わりだぁ!」


 ツカサは狂ったように笑いながら、満月を見上げた。

 

「絶対にバレる訳にはいかなかった……。あの証拠だけは……!」

「ツカサ。一つ聞きたい事がある」


 狂乱状態のツカサに、ルナティックさんが近寄った。


「死神は元々。自分の手で、殺すことを美学としていたはずだ」

「え?」


 僕の考えてと、違う言葉が出た。

 死神は自分の痕跡を残さないために、他者を利用していたはずだ。


「それが変わったのは。十二年くらい前だったよな?」

「じゅ、十二年前だって……!?」


 コン家没落事件と、同じ年だ……!


「バレたんだよ。僕が死神だって。アイツに……」

「アイツ? アイツって誰だ?」

「コン家没落事件の首謀者だよ……。あの時から、"僕ら"はアイツに逆らえないんだ!」


 ツカサは声が変わっていた。これは震え。

 恐怖心から出る言葉だ。


「名前も顔も知らない。でもアイツは、僕の名前も正体も知っている……」

「バレたってことは……。まさか! 証拠を見つけられたのか!?」

「そうだ。でもアイツは……。僕を突き出さなかった。代わりに僕を操り人形にしたんだよ」


 な、なんだよこれ……? ツカサを倒して、十年前の事件を解決したはずなのに……。

 僕の父を殺した奴を追い詰めたはずなのに……。

 これだけ狡猾な死神も、首謀者にとって駒に過ぎなかったのか!?


「お前のずる賢さなら。アイツとやらを見つけて、逆転することも可能じゃないのか?」

「探したさ! あらゆる権力者を! 聖騎士団を! 捜査権があるのは、騎士だけだからな!」


 ツカサが必死に探して、十二年間正体を掴めていないのか。

 その首謀者って、一体何者なんだ?


「殺し屋は弱みを見せられねぇ……。見せたら一生利用される……」

「自分は沢山殺しておいて、良いご身分なセリフだな」


 僕はツカサに一言、突き飛ばした。

 この男は僕の父を奪った。でも恨みがあると言えば、そうじゃない。

 父の事を知らない僕が、恨みようがないから。


「アスハさんは。自分の父は、チイさんの依頼で殺されたって言っていたけど?」

「知らないよ。なんで彼女がそう思ったのかまでは」

「え? でも彼女を動かしたのは、死神なんだ……」


 僕はそこまで言いかけて、気が付いた。

 彼女がツカサの言葉を信じる訳がない。

 彼の事を憎んでいたアスハさんが、師匠への思いを潰してまで。


「僕に届いたのは。アスハがチイを殺すという事と。そいつも死神を名乗っているという事だけだ」

「死神は二人居る……」

「僕に死神の名前で、送ってきたんだ。だから僕の正体は知っているんだろうね」


 それが首謀者なのか? でもおかしくないか?

 コン家没落で不幸になった、アスハさんが。

 その事件を操った首謀者の言う事を聞くなんて。


「もう僕は終わりだ……。煮るなり焼くなり好きにしな」

「綺麗に終わらせようとするな!」


 僕はらしくない啖呵を、ツカサに切った。

 父を殺した恨みはないけど。コイツが居なければホソさんが死ぬこともなかった。

 それだけじゃない! マホさんだって、罪を犯さずに済んだんだ!


「お前は一生……。牢獄の中で犯した罪と向き合え!」

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