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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第8話 推理議論中盤~犯人指摘~

「どういう事なの! 説明しなさい! ユウキ!」

「アリス様。もっとシンプルに考えましょう。魔王様と被害者は、塔の出入りを目撃されていなかった」


 隠し通路も通常の出入り口も使えなかった。

 何故ならどちらにも、見張りの騎士がいたから。

 目撃されずに現場に向かう事は、容易ではない。


「ならどうやって、二人は現場に入ったのか? その答えは一つしかありません」

「煙突……! ですが! 煙突は埃が溜まっていました!」

「争わず、丁寧に煙突に入れば。埃は吹き飛びませんね」

「そんなこと出来るかぁ! エルフには被害者達を持ち上げられないでしょうが!」


 アリス様、相当動揺しているな。随分と口調が荒くなっている。

 彼女の気持ちも分かる。僕も想像していなかった事だ。

 でも全ての矛盾を解決する方法は、もう一つしかない。


 その方法が、ホソさんが死んだ理由を明らかにするんだ。

 この事件で起きた本当の事を、明らかにしていこう!


「被害者は……。ホソさんは自分の意思で、煙突から現場に入ったんです!」

「バカも休み休みに言いなさい! 何故被害者がこそこそする必要があるのですか!」

「魔王様を守るため。だと思うよ」


 思い出せ。これまでの証言を。僕達は大きな勘違いをしている。

 ルシェ様もルナティックさんも。僕自身も。

 一度も魔界側の塔で、魔王様を目撃していないんだ。


 問題は『いつ』魔王様が、人界の塔に向かったか?

 どうやって、目撃されずに向かえるのかなんだ。


「この事件の首謀者が本当に殺したかったのは。魔王様だからね」

「え? ああああああ!?」

「恐らく魔王様も、目的があって現場に"自分の意思"で向かったはずなんだ」


 その目的は多分。十年前の事件が関係しているのだろう。

 十年前の事件と今回の事件。全く同じ現場なのだから。


「魔王様は隠し通路に気が付いていた。多分十年前の捜査中に、見つけたんでしょう」

「ですが隠し通路を通っても! ヒラ騎士の目は誤魔化せませんよ!」

「まあ、魔王が人界側の塔を歩いていたら。警戒されますし。煙突から入ったんでしょうね」


 魔王様の腕力なら、煙突を登ることくらい容易だろう。

 煙突から出入りすれば、人界の騎士に気づかれることなく。

 塔の中を調べる事が出来る。


「現場に入った魔王様ですが。そこに何者かが存在した」

「その人物に……。気絶させれれたとでも言うのですか?」

「はい。その人物は頭部を煙突に繋がる暖炉に置いたはずです」


 この事実は、事件を根本から覆すことになる。

 でも現場にあった残留魔力の意味を考えると。

 たった一つの真実が見えて来るんだ!


「重力魔法。重力を強化する魔法が、人異界側の屋上で使われていましたね?」

「そうか! 持ち運べるものでも、物体にかかる重力を上げてしまえば……!」

「はい。犯人は煙突から物を落として、被害者を殺害したんです」


 これが被害者の頭部が、潰されていた理由。

 犯人は確実に殺害を行いたかった。

 だから重力を限界までかけて、物を落としたのだろう。


「重力の勢いが収まれば。現場から回収も可能ですしね」

「なるほど。ではお前には既に分かっているのですね? 犯人の正体が」

「……。はい」


 僕はアリス様の問いかけに、頷いた。

 振り子で移動出来て。重力操作魔法を扱えて。

 これらのトリックを行う必要性がある存在は、一人しかいない。


「では答えてみなさい! 魔王を殺そうした不届きものの正体を!」

「分かりました。この事件の犯人は……」


 僕は真犯人に向けて、人差し指を向けた。


「貴方しか居ない。エルフ族の政治家。マホさん」

「正気ですか? 私には狂った推理にしか思えません」

「アリス様。良く考えてください。振り子での移動は、エルフ族でなければ行えません」


 魔物は勿論、人族でロープが千切れるだろう。

 でも軽いエルフ族なら、振り子で移動することは可能なんだ。


「それにこのトリックを使うには。隠し通路の窓に、ロープを事前に仕込まなければなりません」


 今日双子塔に着いたばかりの、僕らには不可能な事だ。

 つまり犯人は事前に、双子塔に出入りできる存在。

 エルフの国にある塔を自由に動けるのは。エルフ族だけだ。


「炎の残留魔力は、魔王様の部屋付近にありました。ロープを焼いたのは、魔界側の塔です」


 恐らく現場で凶器を回収した後に、魔界側の塔に戻ったんだろう。

 死体発見現場付近に居たら、怪しまれるからね。


「魔界側の塔で、やたら目撃されて。三階に居たのは誰でしょうか?」

「マホさんです……。私も何度か目撃していますから……」


 ルシェ様は塔をうろうろしていたらしい。

 その際マホさんもルシェ様を、目撃している。


「多分、アリバイ工作のために、三階でわざと目撃されたんだ」

「ですが。魔王の部屋を本当の現場に偽装しました。それは矛盾していますよ?」


 そうなんだ。そこだけが致命的に矛盾しているんだ。

 この部分だけ、魔界側の魔物を疑えと言わんばかりの偽装だ。


「それにマホさんには、動機がありません! それに捜査に協力してくれたでしょう!」

「違うんだ、アリス様。動機ならあるんだ……。そしてそれが捜査協力に繋がるという証明が!」


 僕は気づいてしまった……! マホさんの語った言葉の意味が。

 彼女は犯人が『死神』であると強調していた。

 更にマホさんは死神に命を狙われていた。二つの点が、とんでもない真実に繋がるんだ。


 その真実が、魔王様とホソさんが現場に自ら行った理由。

 ホソさんが死んでいた訳。アイツが現場で見せた動揺の原因に説明がつくんだ!


「マホさん。死神に殺害予告をされましたよね……?」

「あ~。これの事だね? それが何かな~?」


 マホさんは告発されいるのに、おっとりとして表情だ。

 罪から逃れようなんて、考えていないのだろう。

 なのに彼女が自白しない訳。答えはここにある。


「貴方はこう考えたんじゃないですか? 自分を殺しに来る死神を、返り討ちにしようと……」

「あ~。そうかもね。そう考える事も出来るヨ」

「でもその手紙自体が、罠だとしたら?」


 今考えてみれば、殺し屋が殺害予告なんておかしい。

 何の証拠も残さない死神が、手紙と言う証拠を残しているのだから。

 暗殺の難易度を上げれば、証拠を残す可能性も高くなる。


「死神は……。貴方が自分を殺そうとすると読んで。その行動を利用したんです」

「……。アハハ……。なるほど……」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! 死神は、人界の殺し屋なのですよ!」


 人界で主に活動していることを考えると。

 死神の正体は人族じゃなきゃおかしい。

 でも実際狙われたのは魔王様で、殺されたのはホソさん。


「被害者が死神って訳ではないでしょ?」

「はい。だから死神は……。犯人を操って、魔王様を殺させよとしたんです!」


 これがこの事件をややこしくさせていた、理由なんだ。

 犯人とは別の悪意が、この事件の裏で動いていた。


「マホさん……。全てを認めて、証言をお願いします……。真実を明らかにするために」

「それは、出来ない相談ね。私は認めたくないヨ」


 マホさんは鋭い眼光で、ツカサを見つめた。


「こんな悪魔のために、捕まりたくないから」

「やっぱり。そうなんだ……」


 今回の事件も、ツカサが裏で操っていたんだ。

 証拠を提示すれば、マホさんの罪は立証できるけど……。

 それじゃあ、昼間の事件と同じだ。今度こそ、逃がしはしない。


「マホさん。僕が死神の正体と、十年前の真相を暴きます」

「うん。君なら出来るだろうね~。ここまで真実を暴いた君なら……」

「もし、僕が彼の罪を立証出来たら……。認めてくれますか?」


 僕の問いかけに、マホさんは同意しなかった。

 代わりに今までと変わらない、優しい笑顔を見せた。


「おいおい。脱線だよ。今は彼女の罪を追及しようじゃないか!」

「黙りなさい、ツカサ。この剣でミンチにされたくなければ」


 アリス様が剣に手を掛けて、ツカサを黙らせる。

 そうだ。もうお前の都合よく動かせやしない。


「十年前。この双子塔で、二人の人物が殺害されました」

「人界の殺し屋、死神の手によってですね?」

「はい。そして死神は、この中にいます」


 ここまで来たら、死神の正体はみんな分かっている。

 もうお前しかいないんだ。


「そうだよね? 死神、ツカサ・オレット」

「ふぅん。そう来るんだ? 目の前の殺人犯より、復讐を優先するんだね。君も」


 ツカサは眼鏡に手を掛けて、ニヤリと笑った。


「だったら知恵比べと行こうか? ユウガの息子さん」

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