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魔界探偵2~四種族と死神の復讐~  作者: クレキュリオ
第1章 双子塔事件
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第7話 推理議論序章~解かれる真実~

 推理対決は続く。僕は人界側に、殺害は不可能だと主張した。

 容疑者は魔界側の塔に居た者になる。僕を含めて。

 自分が不利になるのは承知だ。でもこれが真実なんだ。


「アリス様は事件前後。ルナティックさんへの報告でしか、塔を出入りしていません」

「五階でも目撃されていない以上。私に犯行は不可能です。ですが……」


 アリス様、疑いが晴れたけど、浮かない顔をしている。

 気持ちは分かる。何せ犯行直前まで、ヒラさんが五階を見張っていたのだ。

 その間誰も見ていないと証言されている。これってつまり……。


「犯行に隠し通路は使用されていない。そうなりますね」

「ならこれって。"不可能犯罪"になるんじゃないかな?」


 魔界側から人界側の塔に行くにしても。絶対に五階は通る。

 そこを誰も通っていないなら、隠し通路は使われていない。

 しかも。それぞれの塔を行き来した人物は一人だけ。


 ルナティックさんになるけど、彼にはアリバイがあるうえ。

 人界側から魔界側に来ている。犯人とは逆方向だ。


「確かに隠し通路は使われていないみたいだけど。まだアリスの疑いは晴れて居ないよ?」

「お前はどれだけ、私に罪を着せたいのですか?」

「だって、これが真実なんだから。それに。塔から出る分には、出入口を通らなくても良いだろう?」


 ツカサ、まだ続けるつもりなのか? だったら付き合ってやるさ。

 今度こそ、お前の罠を突破してやる。


「塔を出るだけだったら。窓からロープをぶら下げれば、出られるよね?」

「下りる分には可能ですが。それでは登れませんよ?」

「だから使ったんでしょ? 気球をさ」


 気球か。そう言えば塔の周辺で見つかったんだっけ?


「魔界側の塔には、炎の魔法が使われた形跡があった」

「ああ。そうみてだな。俺達に残留魔力とやらは見えないけど」


 ルナティックさんが知っているなら。

 エルフの騎士が、証言したんだろう。

 

「アリスは人界でも術の腕までは結構ある。だから気球を使って……」

「残念だけど、それはありえない」


 僕はツカサの意見に反論を重ねた。


「残留魔力は、使用された場所に残る。でも熱魔法の残留魔力は。魔王様の部屋の窓付近に残っていたよ?」


 気球を飛ばすには、塔の下で魔法を使わないといけない。

 でも実際魔力が残っているのは三階。


「気球を使って、塔を上るのは不可能ってことだよ!」

「ふぅん。それは知らなかった。じゃ、アリスに犯行は不可能だね!」

「なに、ニヤニヤしながら言っているのですか!? 切り裂きますよ!」


 アリス様が剣を鞘から引き抜こうとした。

 それをルナティックさんが、慌てて止める。

 ツカサの方は愉快そうに、その茶番を眺めていた。


「アハハ! やっちゃったね! ユウキ君!」

「どういう事ですか?」

「アリスに犯行は不可能。君は同時に、人界側には殺害は不可能って、証明しちゃったんだよ!」


 なるほど。これが今回の罠か。

 でも僕は最初から主張していた。魔界側の塔に、犯人が居たと。


「従って僕の無実も証明され。魔王への疑いが再発することになるよ!」

「まあ、そうでしょうね……。で?」

「はあ? "で?"って……。この状況で、良く涼しい顔をしていられるね?」


 前回の事件で、随分と引っ掻き回してくれたからね。

 今回はそのお返しと行こうか。彼の証言を利用してやるさ。


「気球が使われていないなら。なんで塔の周りに気球があったんでしょうね?」

「それは犯人の偽装工作だろうね」

「僕もそう思いますよ。でもだったら……」


 気球は偽装工作なのは、間違いない。

 でも問題は、誰がその工作を行ったかだ。


「なんで塔の下に炎魔法が使われなかったのでしょうか?」

「確かに妙ですね。気球を使われた様にするなら、炎の魔法をその場で空撃ちするはずです」

「残留魔力の定義は。エルフや魔物なら、誰でも知っている基本知識です」


 だから気球だけ用意して、魔法を使わないなんてありえない。

 この事実が意味することは、二つ。


「考えるべきは、偽装工作の意味です」

「意味……? あ!」


 アリス様は今の一言で、気づいたようだ。


「人界側に犯行は不可能。そう印象付けるため。そうだよね? ツカサ!」


 ツカサは気球を使った事をわざと、否定させることで。

 人界側に犯行が不可能な事を、強調しようとした。

 そのためにアリス様に疑いをかけて。僕達に反論させたんだ。


 以前の事件と同じやり方だ。全く芸がなくて、笑えて来るよ。

 でも今回は逃がさない。これで終わりのはずがないんだ。


「アハハ! またまた大正解! でも僕が人界側に疑いを……」

「貴方の目的はどうでも良いです。問題はそこじゃない」


 ツカサはあっさり流し、誤魔化そうとしたが。

 気球の偽装工作の意味を考えれば……。


「では、犯人は何故魔王様の部屋。しかも窓付近で炎の魔法を使ったんでしょうか?」

「確かに。気球を使ったと思わせるには、不自然な位置ですね……」

「し、シンプルに考えれば……。何かを燃やしたんじゃないかな……?」


 自信なさげなユキを元気づける様に、僕は頷いた。


「僕もそう思うよ。じゃあ何を燃やしたんだろうね?」

「証拠品でしょう。残しちゃまずいものですね」

「面白い事に。隠し通路の真ん中の窓に。焦げ跡のあるロープが絡んでいたんですよね」


 そう。これが犯人が目撃されずに、二つの塔を行き来した経路。

 隠し通路でも出入口でもない。第三のルートなんだ!


「炎魔法は、このロープを燃やすために使われたんでしょうね」

「ん? じゃ、じゃあ……。ロープは隠し通路から、三階の窓に垂れるほどの長さがあったんだね……」

「そうだよ、ユキ。隠し通路には魔法がかかっていて。外から見えないようになっている」


 使用前にロープを隠し通路の中に入れておけば。

 ロープを完全に見寝なくする事が可能だ。


「ですが。そんな長いロープを用意して、燃やして。何をしたかったのでしょうか?」

「振り子ですよ。アリス様」

「振り子って。行ったり来たりする、あれですよね?」


 随分と大雑把な説明だが、左右に揺れる物の事だ。

 重力の力を利用して、反対側にぶら下げた重りを持ち上げる。

 

「犯人は振り子自分に括り付けて、反対側の塔に移動したんですよ」

「現場と魔王の部屋は、丁度向かい合わせにあるわ。不可能ではないでしょう」


 振り子は同じ高さまで、上昇する。

 三階から動かせば、当然三階の窓まで上昇するだろう。


「ですが、ロープで移動するなら。重量制限があるはずですよ」


 僕はざっくりとしか見ていないけど。あのロープ、とても頑丈そうには見えない。

 重たいものは吊るせないはずだ。ロープが千切れるだろうからね。


「必然的に、振り子で移動したのは軽いエルフ族ってことになりますね」

「そうでしょうか? 貴方の推理には穴がありますよ」

「え?」


 アリス様が僕に反論をしてきた。

 

「確かに振り子を使えば、エルフ族は移動可能です。ですが、被害者は魔物です」


 ホソさんの体型から考えて、ロープで吊るすのは不可能だろうな。

 魔王様だって結構思い。現場に連れて行くのは不可能だ。


「犯人の移動が可能でも、被害者を運べないなら。状況に無理がありますよ?」

「でも実際、ロープは焼かれていたんだ。無理に見えるかもしれないけど、見落としがあるだけだよ」

「ならば、その見落としとやらを教えてくださいよ」


 見落としか。考えてみれば、死体発見現場の状況は不自然だった。

 血痕が飛び散っていたし。何かを引きずった跡もなかった。

 被害者を振り子で渡すのが不可能なら。魔王様の部屋の引きずった跡の正体は……。


「アリス様。僕らはとんでもない思い違いをしていたんだよ」

「思い違いですか?」

「うん。現場はやっぱり現場だったんだ」

「は?」


 僕の言葉に、アリス様は呆れた目線を向けた。

 最初からどこか不自然だと思っていた。

 屋上。事実上の六階から三階に落とされた程度で。人の頭が潰れるほど、衝撃があるのかと。


「犯行は死体があった部屋で行われたんだ。つまり偽装工作があったのは、魔王様の部屋の方だ!」

「な、な、な……。何ですってぇ!?」

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