第6話 推理議論開始~騎士団への反論~
「さてと。役者も揃ったし。昼間と同じく、推理対決と行こうか」
「待ちなさい、ツカサ。何故お前が仕切っているのです?」
アリス様、凄い冷たい目線でツカサを睨んでいる。
一方のツカサは愉快そうな笑みを浮かべて。
こめかみに手を当てて、彼女に返す。
「酷いなぁ。アリス。僕だって、少しは捜査していたんだよ?」
「お前は信用できません。人界人であることを、考慮しても。まだユウキの方が信用できます」
僕の信頼ってどのくらなんだ? いや、聞くのは止めておこう。
とにかくツカサが仕切り出したからには。
今回も何か仕掛けている可能性がある。
「アリス様。エルフの騎士団の言い分を聞きませんか?」
僕はアリス様に発言した。まずは魔王様が犯人と言う根拠を聞かないと。
彼らの証言を切り崩すことで、反撃の糸口を掴む。
今必要なのは情報だ。何を根拠にしているか。それを崩していこう。
「そうね~。私が違う違う言っても、彼を疑う理由は何かなぁ?」
「なら、僕が彼らの代わりに、証言しても?」
ツカサが挙手をして、口を挟んだ。
どういう事だ? 彼にも捜査権はないはず。
なんでエルフの騎士団の主張を知っているんだ。
「一応聞いておくけど、アリス。喋っても良いかな?」
「……。ユウキが良いというなら、構いません」
「同僚の僕より、そっちを信用するんだ?」
名前で呼び合て居るという事は、二人は同格か。
ツカサは隊長クラスだったから……。アリス様も隊長なんだ。
……。色んな意味でそう見えないけど。
「それじゃあ、まず。犯人はどうやって、被害者を殺したのか? 説明しておこうか」
ツカサが意味深な笑みと共に、話し始める。
ホソさんの殺害した方法か。それが騎士団の根拠なわけだな。
「被害者は殴られた訳じゃない。突き落とされたんだ。屋上の煙突からね」
落下しが死因だと、主張しているのか。
でもそれなら、魔王様が犯人と言いきれないのでは?
「被害者は筋肉質で大柄だ。突き飛ばすにしても、持ち上げるにしても。相当な力が必要だね」
「現場には魔法が使われた痕跡がありましたが? 現場には重力を操作する魔法がありました」
「あ、アリスさん……。重力魔法は、生物に通用しないんです……」
ユキがアリス様に反論する。僕の時とは違い、彼女は反論を冷静に受け止めた。
「あの巨体を持ち上げる腕力。魔王くらいにしか出せないだろうね」
「ですが魔王は現場で倒れて居たうえに。自分の部屋が血だらけでした」
「それは僕らを騙す、偽装工作だよ」
魔王様はわざと現場で気絶していた。
それがエルフの騎士団の主張か……。
「魔王は嵌められた振りをして。わざと自室を現場に選んだんだ」
「随分とリスクの高い、偽装ですね? 本当にそうなのですか?」
「何せ魔王様には、ユウキ君が居るからね。彼が庇ってくれる事を、想定していたんだろう」
魔王様を僕が庇うだって? そんなことはしないさ。
本当に彼が犯人なら、僕は魔王族だって告発する。
「魔王は見ての通り、力が強い。被害者を"持ち上げる"ほどの力を出せるのは、彼だけだからね」
「それは違うよ」
僕はツカサの発言の矛盾を、指摘した。
彼の事だから罠の可能性もあるけど。今は突き進むしかない。
「犯人は本当に、被害者を持ち運べる力があったのでしょうか?」
「じゃなきゃ、突き落とせないけど?」
「ならばおかしいですね。現場には、何かが引きずられた痕跡がありました」
横幅からして、死体であることは間違いないだろうね。
「あの血痕。所々途切れていました。これって、犯人が道具を使って、被害者を引きずったってことですよね?」
犯人は被害者を運ぶのに、道具を必要としたんだ。
魔王様の腕力は確かにあるので。そんな事する必要はない。
それどころか、引きずる必要擦らないはずだ。
「それも偽装工作なんだよ。犯人に腕力がないと見せかけるため……」
「違うと思いますよ」
「なに? 何故アリスから反論されなきゃいけない?」
ツカサとのやり取りで、アリス様の普段の扱いが分かるなぁ……。
でも彼女の言う通りだ。これが偽装工作なのはあり得ない。
「道具を使ったという事は、この塔にある道具を使った可能性が高いですね」
「アリス。僕は知っているんだよ。魔王一族は、異空間に道具を仕舞えることを」
「魔法を使った可能性もないですね。分かりますよね? ユウキ」
その通りだ。今回の事件で、異空間から道具を取り出せたはずがない。
「現場には残留魔力がありませんでした。物を取り出すには、魔法を使う必要があります」
「アリス。魔物の言う事を信じるのか? 疑われているのは、こいつらの王だぞ?」
「お前よりは信用できますね」
アリス様、凄いどや顔でハッキリと言い切ったな。
でも僕達が偽証していると言われたら、お終いだ。
もっとも。残留魔力を見られるのは僕達魔物だけじゃないけど。
「マホさん。エルフ族にも残留魔力は見えますよね?」
「ん~。魔物ほどハッキリ見えないけど。使用の痕跡くらい分かるよ」
マホさんは両手を合わせて、目を瞑った。
何を祈っているんだろうか?
「勿論そんな魔法が使用された、形跡はなかったね~」
「……! まさかアリス如きに、言い負かされるとはね……」
「策士策に溺れるってやつですね」
アリス様、全然意味が違います!
やっぱりおっちょこちょいなんだなぁ。
「魔王様に運ぶ道具を持ち出せない以上。犯人と断定はできないはずだよ!」
「それとも偶然塔で見つけたとでも、主張しますか?」
「……」
魔王様の部屋には、当然見張りが居た。
彼が道具を持って出入りしていたなら、気づかれるはずだ。
屋上への出入りだけは、煙突を使ったと言いきれそうだけど。
物を持って煙突から飛び降りることは出来ない。
被害者を運べる道具からして、かなりの大きさだからね。
「ツカサ。何か反論はありますか?」
「何もないね。もっとも今のは、僕の主張じゃなく、エルフの騎士団の主張だけど」
余裕そうに笑顔を向けるツカサ。やっぱり裏があるな。
彼はこんな主張が通るとは、初めから思っていない。
「まあ、アリスにすら分かる事に気づけないなんて。この国の騎士は教育が悪いね」
「なんですか。その人を馬鹿みたいに言い切る、口調は」
「アリス様はおっちょこちょいでドジなだけです」
「ユウキ。それ、微妙にフォローになってないです」
初めからフォローする気なんてないんだけどね。
「なら、これで誰が犯人か議論を続けられるね」
「その余裕そうな表情が、ムカつきますね」
「僕が思う犯人は、違うからね」
アリス様は内心のイライラを抑えながら、ツカサを睨んだ。
今にも切りかかりそうな勢いだが、抑えている。
「それで。誰なんですか? お前の考える真犯人とは?」
「お前だよ」
「はあ?」
ツカサは見下すような目線で、アリス様を指した。
「と言う訳で、今回の犯人はアリスちゃんでした~! ちゃんちゃん!」
「ちょっと待ちなさい! 何故私が、犯人なのですか!?」
「だって、アリス。あの部屋にルナティック様が居ない事を知っていたよね?」
死体が発見された場所は、ルナティックさんの部屋だ。
そうか。犯人があの部屋を偽装工作に使うには……。
「あの部屋に騎士長が居ないと、事前に知らないと。偽装工作なんて不可能なんだよ!」
「私は事件前に、人界側の塔を出ていません!」
「入口の証人は、意味をなさない。アリスもそれを知っているはずだよ」
ツカサ、やっぱり隠し通路の事を知っていのか。
彼は以前の事件で、言い逃れをするため。
真っ先に犯人の名前を口にした。でも今回は違う。
一緒に居た時間は見近いけど、アリス様が犯人なのはあり得ない。
感情論だけじゃない。それを示す証拠もある!
「みんなは知らないだろうけど。塔の屋上には、仕掛けがあったんだよ」
「双子塔に伝わる伝承ね~。でもエルフ族ですら、その謎は解けていないはずだけど?」
「アリスは偶々知ったんだよ。隠し通路の存在をね」
いや、そんなわけがない。彼女が隠し通路を通ったなら。
僕が屋上に行くのを阻止したはずだ。
「アリスはまず"人界側から隠し通路を通った"んだろうね! 後は被害者を屋上で突き落として……」
「それも違うよ」
僕はツカサの意見に、真っ向から反論した。
「アリス様が人界側の塔から、隠し通路を使ったとは考えにくいよ」
「あれ? もしかして。一緒に過ごして、惚れちゃた?」
「ヒラさんが証人です。彼は五階の警備をしていましたが……」
彼の証言。何も見ていないという事が、重要だったんだ。
「彼は五階に誰も来なかった言っています。ここを通らないと、屋上に行けませんよね?」
「な、なに!?」
なんだ? ツカサが妙に動揺しているが……。
ここは気にせず畳みかけよう。
「誰も来ていない以上。アリス様に。いや、人界側で隠し通路を行き来するのは不可能なのです!」
「五階で警備していただと!? 僕はそんなこと、聞いていないぞ!」
まあ正直、報告を怠りそうな人だったからな。
そこまで気が回るようんも見えなかったし。
「で、でもユウ! 犯人が人界側から出入りできなかったなら……」
「犯人は魔界側に居た。そう考えるのが自然でしょうね」




